キャラメルボックス2014サマーツアー・プレミアム「涙を数える」感想レポ(1)

【公演日程】 平成26年7月30日〜8月16日
【会場】 池袋サンシャイン劇場
【公式HP】 http://www.caramelbox.com/stage/namida/
【キャスト】  多田直人、辻本祐樹、池岡亮介、西川浩幸、岡田達也、坂口理恵、原田樹里
【観覧した公演】
 7月30日 19:00〜 6列目下手側
 7月31日 14:00〜 2列目下手側

キャラメルボックスさんの舞台「TRUTH」の登場人物「長谷川鏡吾」の過去に焦点を当てた、スピンオフ的な物語のようです。
舞台全体の見どころは、ウレぴあ総研特集記事が詳しいです。

※以下、ネタバレ全開&「池岡さん可愛い」フィルター全開ですご注意。

  • 全体の感想

たった7人の登場人物で織りなす重厚な物語でした。
どちらかというとシリアスなシーンが多く、役者さんの鬼気迫る演技の熱量が伝わってくるようです。
殺陣も華麗で美しく、対戦カードを変えながら何度も見られるのでお得感満載です。
同一人物を描いているはずなのに、「涙を数える」における鏡吾の実直さと、裏にあるじめじめした暗さが「TRUTH」とは全く違っていて、だからこそ後になって「TRUTH」の鏡吾に薄ら寒さを感じました。
「TRUTH」の悲壮感の余韻を引きずりながら見たせいか、冒頭の鏡吾と明一郎の友情の清々しさが既に苦しかったです。
行方を眩ましていた明一郎の居場所が露見した後は、クライマックスに向けて一気呵成。
お互いを思いやる鏡吾と明一郎の絆の強さ、生き急ぐ若者達の儚さに息を呑みます。
ラストシーンでは、鏡吾を見守るように明一郎の姿が現れ、一見、鏡吾は救済されたように見えるけれど、この後に「TRUTH」のさらなる孤独と闇が控えていると思うと…何とも言えない余韻が後を引きます。
鏡吾はこの呪縛から解脱できるのか?と、悶々としながら劇場を後にしました。
初演と言うこともあり、最初から最後までみずみずしい緊張感のあるお芝居でした。

  • 「TRUTH」の内容について少し。

「涙を数える」に先立ち、7/30 14:00〜の回を観劇しました。
「TRUTH」だけ見ていると、率直に言って、長谷川鏡吾とは浅はかで倫理に悖る人間に写ります。「行動理念は理解できるけれど、それよりも尊重すべき物があったのでは」「『身分』『出世』といったものは、あの行動の誘因装置として弱いのでは?」そんなことを考えもしてしまうのです。
でも、「涙を数える」を見た後では、思いはやはり違います。
「俺には仲間などいない」そう吐き捨てた鏡吾の胸は、空っぽではなく、明一郎がいたのだと思うと切ないです。
機会があれば、「TRUTH」の感想も書きたいです。

  • 個別のキャストさんについてあれこれ。
    • 長谷川鏡吾(演:多田直人)

・「俺はお前の望みを叶えてやりたかった。」
・激しい憎しみと渇望を抱え、それを理性と冷静さで押し殺す重苦しさが伝わってきました。
・「鏡吾」という名前は、明一郎や弦次郎と対照的な運命を表しているんですかね。
・殺陣が美しいです。VS明一郎、VS南条、VS大佛、いずれも荒々しく、観客の視線ごとたたき割りそうな勢いでした。
・カーテンコールの頃には汗びっしょりになって、本当に身を削って芝居してるんだなとため息が出ました。
・観劇後のツイートでお見かけしてなるほどなあと思ったのが、「『TRUTH』の弦次郎は亡き英之助の声が聞こえ姿が見える、しかし『涙を数える』の鏡吾は亡き明一郎の姿が見えない」というもの。ラストシーンの、希望が差し込んだように見える光景が、さらなる悲劇へのプロローグでもあったとしたら怖い演出です。

    • 舟橋明一郎(演:辻本祐樹)

・「お前の望みは俺の望みだ。」
・「明一郎」の名前のとおり、光溢れる場所だけを歩いて生きてきたような、まぶしい存在です。キラキラの笑顔。
・殺陣は流麗で、品があります。
・後から気づいたのですが、「ちりとてちん」の木曽山くんじゃないですか!
・舞台上で見るお顔がとても整っていました。肌が綺麗。息も絶え絶えなシーンは女形のようで非常に色っぽかったです。
・とある事実を知る前後での印象の違い、爽やかさと苦悩のギャップがよかった。

・池 岡 さ ん 可 愛 い <●><●>カッ
・重苦しかったり、シリアスだったりするシーンが多い本作において、唯一のコメディリリーフ。なんたって名前が「もんた」だし。「もんた」ですよ。みのか。
・登場の瞬間は空気感があまりにも軽くて、少し違和感を持ったほどです。時代劇に突如現代人が意気揚々と現れた感じ。わざとかもしれないけど。
・おとぼけで、緩くて、可愛らしくて、ちょっとうざったい。登場する度に観客席から笑いが起きる、何かやらかしそうでワクワクさせる、良い役どころだと思います。
・シリアスな展開の箸休め的な役割もこなす。
・とにかく動きがコミカル。顔芸も健在。
・ただし、浮ついているだけではなくて、実は洞察力が鋭くて名探偵ぶりを発揮したり、剣の腕前は主人公以上だったり、ギャップがまた魅力。
・殺陣は颯爽として軽やか。
・主人公に対して行う助言が、後々重要な位置を占めます。穿った見方をすると、対戦相手を分析して主人公に助言するシーンは「TRUTH」に通ずるし、ここで与えた助言が「TRUTH」において繰り出される必殺技にも繋がっているのかな、という気がします。
・ご一緒したフォロワさんも仰ってたけど、「TRUTH」における鏡吾の飄々としたナルい雰囲気は、大佛を参考にしたものだったのかもしれません。
・鏡吾は大佛の「ビーケアフル、ミスターハセガワ!」という声は聞いていたのに、「グッドラック、マイフレンド!」という声は聞いていないんですね。大佛もまた、鏡吾の友にはなれなかったんでしょうか。
・局中法度の時も思ったけど、前髪って大事だな…。
・いや、ちょんまげだって可愛いよ!

    • 南城朔之助(演:岡田達也)

・秋霜烈日。そんな言葉が浮かぶ苛烈な役柄で、全体を引き締めていました。
・まさに絶対的なヒール。冷酷非道な顔をさせたら天下一品です。誰も勝てる気がしない。
・殺陣は狡猾で、容赦ない。一瞬でも気を抜いたら真っ二つにされそうです。
・長いセリフを延々と言っても全くくどく聞こえないのはさすが。
・大佛と関わるシーンだけは、ややギャグタッチな突っ込みも入れていたのがお茶目でした。

    • 他の皆さま

好々爺から転じて最終的には小悪党のように描かれる舟橋貞蔵(演:西川浩幸)ですが、彼なりの大義名分もあったのだろうと感じさせる奥行きのあるお芝居でしたし、
長谷川淑江(演:坂口理恵)の、清貧を地でいく所作の美しさと、「母たる者」の象徴のような懐深さには泣かされましたし、
元気印・舟橋樹雨(演:原田樹里)の幼くつたない真っ直ぐさは、却って凛として感じられました。
1人1人の存在感がくっきりしています。

◎ファーストインパクトは、ゆるゆる現代っ子藩士
・「江戸生まれの江戸育ち、私に知らないことはない。何でも聞いてください!」とか言ってるのに大事なこと知らなくて全然役に立たない。可愛い。
・サンマに目がないそうです。
・江戸の神社仏閣名所旧跡なら任せなさいだそうです。
・\バッサアアアアアア!/

◎真面目なキャラクターとのシーンもギャグに変えちゃう。
・唯一、南条と軽いテンポでやり取りができる存在。
・南条「暇だから剣の相手でもしてやろう」大佛「やめときます!結構です!無事で済まない予感がするので!(全力の拒否)」
・大佛「おなごは大切にと母から言われてたもので。」南条「俺のことももう少し大切にして欲しいんだが」大佛「遠慮しときます(いい笑顔)」
・大佛「江戸ではヤワな心じゃやっていけないんです(小石を川に投げる素振り)。あっすいません、ついカッコイイことを言ってしまいました」鏡吾「すいません聴いてませんでした」大佛「ひどい!」

◎とっても弱そうなのに、まさかの強さ!
・無骨に荒々しく踏み込む鏡吾の木刀を、ひょいっ、と躱す導線が綺麗。
・躱した瞬間のドヤ顔が可愛すぎる。
・素振りしながら「おっ、強そう!」とヘラヘラ言っちゃう姿からは想像できない、しなやかな強さのギャップが良いです。
・長谷川が「簡単に勝てる相手だと見くびっていた」と詫びても、「そこまで言われるといっそ清々しいナー」と流す。

◎鏡吾に剣術指南を施すシーンのかっこよさ。
・「そう、その調子!よくなってきたじゃないですか、もう一度!」のかけ声が、私の大好きな低音池ボでとても満足。
・「あなたの剣は荒々しい。まるで夏の嵐のようだ。」「剣先だけではなく、もっとよく相手を見て。」「だから剣先じゃなく、私を見るんだってば!」
・という台詞を踏まえて大佛の殺陣を見ると、確かに相手をこれでもかってほどに凝視してるんですよね。こだわってるなあ。

◎おなごや鏡吾がピンチのときは身を挺してかばうよ!
・「そこまでです!あなたに勝てる相手じゃない!」
・「南条さん、私はおなごをいじめる奴が大嫌いなんです!!」

◎実は全て見抜いている?
・単独行動する南条の怪しい動きに、訳知り顔で独自の鋭い推理をぶつける。
・鏡吾「あの人には何もかも見抜かれている気がする。」 
・登場前後の描写からして、樹雨の動きも最初から把握していたんじゃないかな。

◎そして、夢はでっかく。
・「私の望みは、メリケンに行くことです。江戸生まれの江戸育ちだから、外の世界を知らないんです。どうせなら異国に渡りたい!」お前はエレンか。
 
◎池岡さん可愛い。

  • 前説について

上演前、キャラメルボックス社長と、今年劇団に入った新人さんが前説をやってくれるのですが、池岡さん写真集がちゃっかり宣伝されていたのに笑いました。
社長「男から言うのも何ですが、実に可愛いです」知っています笑
この社長さん、終演後も普通にロビーにいて、客対応してくれているのですが、30日の観劇の時、社長さんと知らずに普通のスタッフさんだと思って気軽に質問してしまいました。失礼しました…。

  • カーテンコール挨拶について

カーテンコール挨拶では、ハードなお芝居と殺陣を演じきった多田さんの汗と、役とは真逆の岡田さんの柔らかいオーラが印象的でした。

    • 【7/30夜】

辻本:キャラメルボックスさんと一緒に舞台やってることに感極まっちゃって、鼻水が止まらなくなる事件が起きました。もう喉カラカラです。
池岡:(「お酒飲みたい」みたいな顔)
辻本:裏ではスタッフさんがたくさん着替えさせてくれて、自分じゃ着替えられないからすごくありがたくて。
岡田:えっ、君は今までどうやって生きて来たの?
辻本:甘やかされてました!
池岡:うーーーわーーー緊張するー。人前で喋るの得意じゃないんですよ…。
岡田:えっ、君はなぜ役者をやっているの?
池岡:そうですね(笑)さあ、暑い夏が始まります。皆さん、僕らと一緒に熱い夏を過ごしませんか?
岡田:この時期、毎年そうなんですが、隣でやっているウルトラマンフェアがライバルでしてね。
池岡:(申し訳なさそうなお辞儀) ※ウルトラマンギンガの中の人繋がりですね。

    • 【7/31昼】

岡田:今回は、フレッシュなゲスト2人をお迎えして…。
多田:ありがとうございます!
岡田:どう見てもお前じゃないだろ!
辻本:二度目ですが楽しく演じています、お客様から受け取るパワーを吸収して、何倍にもして発信していきたいです。
池岡:(辻本さんの発言に超小刻みな拍手)えー…夏は暑いですね。水分補給をちゃんとして、あと、寝る時に空調の切り忘れに注意して、また元気に劇場でお会いしましょう。

カーテンコールになると一気にフワフワする池岡さんが通常営業すぎました。

とりあえず今回のレポートはここまで。

  • 関連記事

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  • 余談その1

チケットぴあインタビュー記事の池岡さんのトレーナーのセンスがすごすぎて二度見します。
あと、辻本さんとトカッチは似ているそうです笑

  • 余談その2

池岡さんが公演前に訪れたというサンシャイン水族館の猛毒展もばっちり押さえてきました。海ど…じゃなくてマムシがいなかったのが唯一の心残りです。