リーディングドラマ『5 years after』感想レポ

配信してくれてありがとう!!!
ありがとう運営!!!!!!!!

 

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▼公演概要
作・演出:堤泰之
​プロデューサー:難波利幸
キャスト:納谷健​(11/1-15)、​杉江大志​(11/1-15)、​池岡亮介(11/1-8)、​長江崚行(11/10-15)
公演期間:令和2年11月1日(日)~15日(日)
会  場:赤坂RED/THEATER

▼公式サイト
https://no4stage.wixsite.com/5yearsafter

▼作品概要(公式HPより引用)
3名の役者による朗読劇『5years after』本編60分 + 3名の役者によるアフタートーク『3actors talk』30分の計90分!

■本編『5 years after』(ファイブ・イヤーズ・アフター)
三章に分かれていて、第一章では20歳、第二章では25歳、第三章では30歳の水川啓人(みずかわけいと)が登場します。
3名の男優がA役、B役、C役を演じ、A役は20歳の、B役は25歳の、C役は30歳の水川啓人を演じます。水川啓人を演じない時の2名の男優は老若男女さまざまな役柄20役を演じ分けます。つまり、全部で60役!それぞれの章で水川啓人が浮かび上がり抱腹絶倒の中で涙を誘います。

ABCの3役は公演ごとで演じる役が変わってきますので、各キャストが同じ役を演じる違いもお楽しみください!

■アフタートーク『3actors talk』(スリー・アクターズ・トーク
本編が毎回役替わりで演じるため、その日に演じた役柄の印象や役作りの裏話、そしてこれまで役者としてどうスタートを切り、どう生きてきたか、本編のテーマであるこれからの『夢』とは?
お客様の質問もいただきそれにもお答えしつつ、3名の役者がそれぞれの本音や思いを語ります。
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あけましておめでとうございます。柚子です。

なんか思ってたのと大幅に違った2020年だったけど、越しましたね。
みんな、日々を健気に過ごしてきて本当にえらいぞ。
生きて元気に新年を迎えられたからそれだけで勝ち。
皆さんに心から幸あれ。

さて、リーディングドラマ『5 years after』。
舞台「黑世界」公演中に池岡さんの出演が発表され、当時配信で絶賛雷山(※)フィーバーだった私は沸きました。

(※)雷山=黑世界でとにかくフィーバーだった池岡さんの役。

とはいえ。
舞台の有料オンライン配信が定着してきた昨今とはいえ、どの舞台も必ず配信をしてくれるわけではありません。
この舞台に関しては、小規模な劇場での朗読劇であり、上演が始まっても特にアナウンスがなかったため、半ばあきらめていました。
だからこそ、上演終了後、「配信決定!」の報が出た時は本当にうれしかった。

1年前の今頃までは頻繁に出かけていた東京。
池岡さんの舞台があるとなれば、仕事を調整して自分なりの最大の回数で出かけていた劇場の数々。
電車に飛び乗れば物理的にはいつでも行けるのに、スケジュールだって合うのに、こんなにも舞台の内容に思いを馳せているのに、こんなにも遠い。

劇場の座席を埋める黒い頭の一つになれない、直接拍手を響かせられないというのは本当につらいです。
大切な推しとその周辺の方が感染することのないようにと祈りながら、劇場への未練を断ち切れないでいます。
悔しくても泣くんじゃねえ!失っても失っても生きていくしかない!と私の中の伊之助と炭治郎が励ましてくれるけどなかなか諦めきれない。長女だけど我慢できない。

だから、画面越しであっても舞台風景が見られるというのは僥倖です。
運営さんありがとう!そしてありがとう!!
運営さんたちがこれから卵割るたびに黄身が2個入ってますように!!電車に乗ったときに必ず1席空きがありますように!

 

<全体の感想>

▼1人60役…?

舞台上はいたってシンプル。
3つの椅子がソーシャルディスタンスよろしくちょこんちょこんちょこんと並ぶ。
演出もミニマムで、BGMはさりげなく、照明の明暗も最小限。
ただただ、そこに役者が座る。
台本を両手に持ち、視線を落とす。

直前に観た「朗読劇」が、歌って踊れるモーションリーディング(※前述「黑世界」。そのうちレポ上げます)だったので、そんなお芝居のありように、

「お…お!…これこそが……朗読劇……」

ってベルばら顔で謎の感慨を抱く。

その代わりとでもいうのか、この舞台は「1人60役」。

作品概要にもあるとおり、3人の役者にはそれぞれA役、B役、C役が割り当てられ、A役は20歳の、B役は25歳の、C役は30歳の主人公を演じる。
主人公を演じない時の2名は、それぞれ20役を演じ分ける。
そしてABCの組み合わせは公演ごとに代わる!

…え?なんて?もう一回説明してもらえます?
と最初は思いましたさすがに。

例えば、第2章で池岡さんが演じる役だけでこう。

2.オタクっぽい男
3.夢見るバーテンダー
4.IT社長
5.クールな社員
6.舌っ足らずな社員
7.アプリの声
8.武田(大学の友達)
9.みう
10.正隆(父)
11.謎の爺さん


………多い。

つまり、場面が大きく3つに分かれていて、1つの場面では主人公を。
ほか2つの場面では、主人公以外の役割を20種類ずつ演じると。
で、その組み合わせは、公演ごとにシャッフルになると。

実際に見てみると、出番がほんの5秒くらいのキャラもいて、でも(濃淡はあるにせよ)キャラづくりをしなければただのセリフとして埋もれてしまうわけで、これはすごく大変な作業。
セリフを覚える必要はない「朗読劇スタイル」を逆手に取った、むしろ朗読劇スタイルでなくてはできない、なんともチャレンジングな手法。
会話のテンポがジェットコースターのように速く、くるくると変わる場面展開。演じる3人には、餅つき職人みたいな間合いの合わせ方が求められる。

例えば、5人の人物が侃々諤々の丁丁発止で会議してる様を3人だけで表現する、なんてシーンが存在する。
(主人公/熱血社員のMさん/感情を全く表に出さないクールなDくん/パンツスーツの似合う姉御肌のAさん/舌っ足らずで子供っぽいSちゃん)

いやこれ完全に高速餅つきじゃん…誰かが手を止めたら大事故じゃん…すご…
と思ったら、配信版の一つではなんと池岡さんが思いっきりやらかしてた!
な、なんと1役ずれてセリフを読んでしまった!
杉江君の手の甲に振り下ろされる光速の杵!!!
さてどうする!!!

でも、どんなときでもショウはマストゴーオン。
とっさに1つ前の役に戻って軌道修正してました。杉江君が。
ハプニングもドライヴ感でねじ伏せてしまう、これこそライブ、これこそ芸。すごいぞ杉江君。
こういったことも舞台の魅力でもあると思うのです。
なお、この件についてアフタートークで謝り倒している池岡さんがとても可愛かったです。最高にオイシイけど、ミスはミスだからね(笑

主人公のお母さんが包み込むようなやさしさで一貫しているのだけど、この表現の仕方もそれぞれの個性が出ていてよかった。
おずおずと遠慮がちだけどまなざしは揺らがない納谷さん、肝っ玉かあさん風の杉江さん、ただただ優しく癒してくれる池岡さん、という感じ。

あと、人気のコーナー(コーナー?)らしい、25歳の啓人が並行して交際する(要は二股)2人の女性が出てくるシーン。
年上でクール系の「真希」と、年下でかわいい系の「みう」。
池岡さんは真希さんが大好きで、真希さんを演じる回はひそかにテンションが上がるとインスタライブでも言っていたとおり、あーーーーーこういう女性好きですよね!!!って全開で言いたくなる感じでした。「だって私、あなたの藪から棒が好きなんだもの」「あなたとせっかちしたいの!」次々飛び出すギリギリのワードセンス。
もう一人のみうちゃんはね、いくら年下の可愛い系でもね、「ねー啓人ー!みうのことちゅきー?わーいわーい!」はやりすぎじゃないか?どう役作りしろと…(でもみんなしている、えらい)(杉江君のみうはもはや宇宙人かと思ったよ)


▼主人公:水川啓人という男

主人公は、実に平平凡凡な男。
人より優れた才能があるわけでもなく、とびぬけて優しいわけでも、正義感が強いわけでも、夢に対するこだわりもない。
ただ、ただ、大学の学食でみんなが安くて豪華なAランチを食べているときに、自分が食べたいラーメンを食べるタイプの男だったというだけ。
それだけで運命を引き寄せて、そして手放した男。

何なら身の丈に合わない生活をして調子に乗るし、他人のことを見下すし、調子づいて田舎の両親に暴言吐いたりもする。そこに直れ、と言いたくなるシーンもあるけれど、でも自分に思い当たるところもある。
毒にも薬にもならない、共感できるところばかりではない、それが至って普通の人間ということなんですかね。

若くまぶしい夢を見て挫折した20歳。
成功しつかの間の享楽に溺れた25歳。
全てを失って故郷の愛に気づく30歳。

人生にはいい時も悪い時もあって、でもトータルだと結構満足かもね、と。
運命に翻弄されてどうにもならないことも、自業自得のこともあるけれど、心持次第で全部引き受けて楽しむことはできるんじゃないか。

そうしてふっと気が付けば、故郷は変わらずに見守ってくれている。
この情勢下、等身大でなんだかホッとするところのある筋書でした。


▼アフタートークも本編。

本編1時間が終わったらアフタートーク30分。二つ合わせて一つの作品。
製作の難波さんが進行役で、俳優3人が自然体で稽古のエピソードや役作りについて語ってくれる。

言葉の引き出しが多くて的確に笑いの定石を踏んでくる納谷さん、
リアクションの駆け引きが絶妙で場の空気を支配する杉江さん、
静かと見せかけて変態的なこだわりを隠し持ち、必殺の一撃を放つ池岡さん。

三者三様の俳優陣の丸裸トーク
これは永遠に見てられますね。
大阪出身の納谷さん、滋賀出身の杉江さんに挟まれて、池岡さんがところどころ関西弁移ってるのがほほえましすぎる。あなた生粋の愛知県人でしょうが。


▼ちょっとだけ引っかかったところ。

私自身が年々そういうものに抵抗感が強くなってきたせいか、必要以上に容姿を強調して揶揄する(顔面神経痛の方の仕草を基に爆笑アプリ作っちゃうとことか、「ドデブでドブス」とか)場面は全く笑えなかったな…。
読み解けなかった意味があるのかもしれないけど、ただの「笑えるシーン」として作っていたとしたら少し嫌だな、合わないなと思ったことは書いておくよ…。

 

<それぞれの役者さんについて>

【納谷健さん​】
舞台「刀剣乱舞」の小夜左文字役として界隈ではお名前をよく聞いていて、演技力のすごい人だ!程度の認識はもともとあったのだけど、演技そのものに触れるのは今回が初。「もっと早く知っておけばよかった」と思うほど、他の役の演技にも興味をそそられる役者さん。
関西版D-BOYSと呼ばれる劇団Patchのメンバーでもある。

とにかく声が深くていい。腹の底から声が出る、舞台のお芝居の人、という印象を初見から持つ。
といっても、がなり立てるとかではなく、空気の振動を心地よいい波形にするツボを心得ているという感じ。画面越しでも伝わる太い音の形。
全身を使って豪胆なお芝居をしたかと思えば、包み込むような繊細な空気に一瞬で切り替えたりもしていて、コントロールの緻密さにとにかく唸る。

そういえば、コロナのせいでほとんどの公演が中止になった「十二夜」ではオリヴィアを演じてらしたんだよね…女性の演技の柔らかさを見るにそちらも是非見てみたかった。池岡さんと新旧オリヴィアで共演と思うとまたエモーショナル。

演技もいいけど、何せフリートークがうますぎる。トークも本編との触れ込みは伊達じゃない。何を言ってもすべらない、ここぞというときにきちんとオチをつけてくる。何なんだ関西出身。


【​杉江大志さん】
テニミュ四天宝寺戦はずいぶん通ったものだなあ…杉江君の一氏ユウジ可愛くて天使だったわあ…あれももう7年も前か……なんて感慨に浸ったのもつかの間、演技の瞬発力と疾走感に度肝を抜かれる。
ラフで自然体なんだけど、ふいに刺してくるような殺気もあり、そうかと思うと貫禄もあり。

おでん屋さんと串カツ屋さんドスの聞いた声のターンは必聴。(ここだけ聞くとわけわかんないと思いますが)
観てもいないのに、杉江君が王(ワン)社長を演じるパターン、なんか一番エセ中国人の演技うまそうだな!?と思ったんだけど、それも当然、だって中国そのものの役やってたもんね…(※ヘタリア)。あっちの名前もワンだし。観てみたかった、間接クロスオーバー。
あととにかくお顔が小さい。声大きいのに顔は小さい。

そしてこちらもトークうますぎか。何なの関西出身(2回目)。


池岡亮介さん】
我らが池岡亮介さん。何度も言うけど、ただでさえ独特な世界観の「黑世界」でも屈指のぶっ飛びキャラを直前まで演じていたのに、この作品では平凡な感覚の一般人を演じている、その切り替えの速さに驚嘆する。稽古らしい稽古は何回もなかったらしいけど。

池岡さんの好みど真ん中らしい年上のエロクール女性「真希」の演技の時はノリノリでほっこりするし、どうしてもケツの穴から手を突っ込んでガタガタ言わせたい下品なヤクザ役もコミカルで可愛かった。
それから30歳の啓人がお母さんと泣きながら話すところ、押さえきれない慕わしさと幼い甘えが出ていてよかったなあ。ゆったりマグマがたまっていくような、ふつふつとした感情を表現させるとうまいんですよね…。「父さん、母さん、元気でいてね。俺は大丈夫だから」。やさしさと切なさと力強さと。対面では厳しく当たっている息子を地元では自慢の息子って言ってるオヤジ、昭和のオヤジとして100点なので泣いてしまう。

逆に、啓人と最後に電話するお母さん役のターンも、癒すような優しさがにじんでいて良い。本当に杉江君のお母さんなのでは?産んだのでは?さっきまでケツの穴から手を突っ込んでガタガタ言わせたがってた人とは思えない。
毎晩あの声で「おやすみ」って言われてお布団かけてほしい。(そういえばいけおかあさんってありましたね。)

アフタートークでは、インスタライブで鍛えたギリギリのワードセンスが光る発言も楽しかった。どうやらここでも性へk……、フェt……、ええと、スク水ネタぶっこんでたらしいですね?(噂)
関西出身2人の怒涛の笑いの勢いにやや押され気味ながら、同じステージでは勝負せず、淡々と独自目線で笑いを取りに来ていたのがよかった。
同じステージで勝負したらそこはかとなくエガちゃんになっちゃうんだもの。

そして画面越しでも顔がよかった。
推しの顔を高画質で見られて本当によかった。
池岡さん、年齢を重ねて(と言ってもまだ27歳だけど)、ますます美しくなっているの気のせいじゃないと思う。10代の頃の尖ったセクシーさも素敵だったけれど、今の包容力と少しの憂いから匂い立つ色気も素晴らしい。
「黑世界」の雷山役はその色気が花火になってド派手に打ちあがったけど、この朗読劇では小さな花のようにひっそりと咲いていて、目が離せませんでした。


<まとめ>

冒頭でプロデューサーの難波氏が前説をやってくれるんだけど、この状況下でも来ていただいて…って何度も言っていて演劇業界のご労苦が忍ばれるし、「心の掛け金を外して、マスク越しでも大きな声で笑っていただいて」っていう投げかけすごくいいよね。
板の上に役者が乗り、始まりを告げるBGM、あっという間の本編、暗転して拍手。
以前は当たり前だったその光景が、画面の向こうにはちゃんとある。
エンタメは大丈夫。ずっとここにいるよ。いつでも待ってるよ。
そんなメッセージも感じて胸が温かくなりました。

実は池岡さんは今回前半だけの出演で、後半は長江崚行さんにバトンタッチ。
その後、キャスト入れ替えで別バージョンの公演が決定したりして、このやり方なら無限に続けることができる作品ですね。
(それぞれのキャストの頭文字を取って、「~N-S-I~」「~J-T-N~」とかって名前が後からついたらしい)
いろんな形でロングラン公演してほしいし、いろんなキャストの組み合わせで見てみたいな。
そしてまた池岡さんにも含めて再演してほしい。
それまでに東京に行けるようになって、いればいいな。

改めて、いろいろと大変な中、映像配信を決めてくださった運営さん、心からありがとうございました。
このご時世、無事に幕が上がって無事に下りるというただそれだけのことが、どれだけの砕心の上に成り立っていることなのか、察するに余りあります。
払えるお金はすべて払います(それでしか感謝が示せない)(納めてください小銭ですが)
あ、あと、キャストブロマイド20種類は最高でした。
惜しむらくはあと80枚あってもよかった。


いい年になるといいね、2021。
池岡さん、今年もよろしくお願いします。
昨年始めたインスタライブで見せてくれるいろんな顔が大好きです。
そして今月14日から開幕の舞台「熱海殺人事件」のご成功、心よりお祈りします。