A New Musical「ゆびさきと恋々」感想レポ

Woooooooooo,Mambo!!!!

まあちょっと聞いてくださいよ。

池岡さんに会えなくなってから1年と数か月。
その間、中止・延期されてしまった舞台、現場で見られなかった舞台、併せて5本。

「ごめんなぁ推し 今は一緒にはいられないんだよ
 でもいつでも私は推しのことを思っているから…
 忘れることなんてない どんな時も心はそばにいる
 だからどうか許してくれ」

って気持ちでいたわけですよ(※花江夏樹さんボイスでお願いします)

本当なら、東京の劇場は連日盛況で。
本当なら、その座席の黒い頭の一つは私で。
本当なら、推しが板の上で輝く姿をまぶしく見つめていて。
公演中止なんて、観劇自粛なんて、想像することもなかった。
本当なら………本当なら!!

そんな矢先に池岡さんの出演が発表されたミュージカル「ゆびさきと恋々」。
沸きました。
発売日の3月には奇跡を信じてチケットを申し込みました。
1年ぶりに発券したチケットはじんわりと重かった。

でも………でも、もうMamboが発令された!!
戻ることはできない!!!


(※Mambo=まん延防止措置が本県にも適用されて県外との往来が制限された)


…はい、というわけで、今回もライブ配信で参戦することにいたしました。
配信してくださることが本当にありがたいです。しかも1週間アーカイブが見られるという大サービス。
振り返らず走る炭治郎にはなれない私も少しは慰められるというものです。
この悔しさをバネにその後ワクチン即接種しましたので、このままの勢いでコロナをぶちのめそうと思います。
お前なんかこうだ!!!こうなって当然だ!!!!もう立ち上がるな!!!
(突然のエレン)

 

●公演概要
日程:2021年6月4日(金)~13日(日)
   ☆6月12日(土)18:00 ライブ配信あり
会場:本多劇場
キャスト:豊原江理佳、前山剛久林愛夏青野紗穂池岡亮介、中山義紘、上山竜治


●公式ホームページ
https://yubisakimusical.westage.jp/

 

●あらすじ(ホームページより)
雪(豊原江理佳)は生まれつき聴覚障がいがあり、ある日電車で外国人に道を聞かれて困っていたところを、同じ大学の先輩、逸臣(前山剛久)に助けてもらう。雪は逸臣と同じ国際サークルに所属する親友、りん(林愛夏)から逸臣のことを聞き、逸臣がバイトするカフェ・バー“ロッキン・ロビン”に行くことに。りんもその店の店長で逸臣のいとこ、京弥(上山竜治)に想いを寄せていた。
勇気を振り絞って、二人はそれぞれ念願の連絡先交換をする。自分を特別扱いせず接してくれる逸臣に雪はどんどん惹かれ恋心を自覚。
しかし幼馴染の桜志(池岡亮介)は、恋に向かって頑張る雪の姿を調子に乗っていると切り捨て、逸臣とも対立する。さらに、逸臣の高校の同級生で逸臣のことが好きなエマ(青野紗穂)と、エマを想い続ける心(中山義紘)もそれぞれの思いを胸に逸臣たちと過ごしていた。
そんなある日、雪たちはロッキン・ロビンに集まり、海外旅行中の逸臣の話で盛り上がるが……。


<全体の感想>

人気少女漫画原作のミュージカル。
聴覚障害を持つ主人公を軸にしたラブストーリーなんだけど、障害のあるなしが過度にフィーチャーされたりはせず、等身大の若者たちの恋が繊細に動く模様を軽やかに描いた作品でした。

画面(舞台)がカラフル!
登場人物の笑顔がまぶしい!
楽曲も明るくてたのしい!
初夏に吹く風のような爽やかな後味の舞台です。
どこを切っても優しくやわらかな世界と、1年間に摂取して良い量をはるかに超えた胸キュン要素、ポップで明るい正統派ミュージカルな音楽ナンバー。
エンタメの楽しみ方を忘れそうになっていた心にスッと入ってきました。沁みました。

正直胸キュンとかセーラームーンで勉強した世代のためちょっとアップデートが……その………って感じになっていたので、新たに胸キュンと邂逅するつもりで原作も既刊全巻買い求めまして。
「これが…令和の胸キュン……!」と、水の概念を獲得したヘレン・ケラー女史のように「WATER!!!!!!」ってなるなどしました。
女子組の恋に恋して「好き?」「好きかも!」「どうしたらいい!?」って飛び跳ねる瑞々しさがまぶしい。

ラストシーンは既刊にはなかったけど、ミュージカルオリジナルなのかな?
コロナ禍にも通じるような「大切な人への思いは今、伝えなければ」「当たり前だった世界はあっという間に変わってしまうかもしれない」というストレートなメッセージも伝わりました。
このコロナ禍で幕を開けてくださったことに心から感謝したいです。

公演開始前からプロモーションにも相当力が入っていて、公式SNSで稽古場風景やミニ手話動画を公開してくれていたので、ワクワクしながら当日を待つことができました。
そう、たとえそのとき傍らにはいられなくとも………(鬼滅はもういい)
池岡さんの「ご覧ください」動画かわいかった。いいね100万回。


<手話×ミュージカル>

実際に見るまでは「手話×ミュージカル」ってどんな感じ???と不思議に思っていたんだけど、むしろミュージカルであることが必然というか自然な演出で、「A "New" Musical」と銘打っているのも納得でした。

主人公の雪は聴覚障害があるので、発声や聞き取りによるコミュニケーションはできず、手話またはスマホのメッセージ機能を使って意思疎通を図ってる(これがまたスルスルと円滑)。
ストレートプレイのときはその設定に沿った演技で、スマホ画面で会話しているときはバックスクリーンにテンポよくLINEの画面が表示されていくし、手話だけで会話しているときはその手話の意味がテキスト表示される。
新感覚だけどわかりやすいし、原作の空気もしっかり持ち込めてる。

で、これがミュージカルシーンになると一変。
雪は誰よりも高らかに感情を歌い上げる。
この高鳴る気持ちが憧れか恋なのか?今、気持ちを伝えなきゃ。そんな飾らない言葉が力強い発声で歌われる。
違和感は全くなかった。原作でも雪はものすごく「おしゃべり」だし、どんどん溢れてくる気持ちを歌に乗せてくるのがとっても自然で、効果的な演出でした。


<ハンディキャップの扱われ方について>

ちょっと認識ずれてるかもしれないけれど感動したというか驚いたのは、雪が聴覚障害を持っていることが、人間関係において過度なハンディとして描かれていなかったこと。
雪の友人も、恋人になる逸臣も、初手から雪にフラットに接している。
(うろ覚えだけど、「聴覚障害」という単語すら使われていないのでは)

凡な頭で考えてしまうのは、障害や偏見を乗り越えて成就する過程とか、ディスコミュニケーションからくるすれ違いとか…、描こうと思えばいくらでもできるかもしれないけど、それって実はもうちょっと古い発想なのかも。
あくまで自然に、雪という人間と、逸臣という人間とが出会い、惹かれあい、恋愛が成立するまでの過程がそれはもうストレートに描かれる。

(もちろん、雪自身が今までの人生で、口話読唇術を想像しがたい努力で身に着けているからこそ、というのは前提にあるけれど、)スマホを介してほぼノーストレスの意思疎通が可能になっているという点に、技術の発展の素晴らしさを感じたりする。スマホすごい。令和すごい。
雪の豊かな感情が、ボディランゲージで、表情で、またはスマートフォンを使って、純度の高いまま相手と観客に伝わることが新鮮でした。
もちろんそれは周りの人間も「雪とコミュニケーションを取りたい」と願って歩み寄るから成立することなので、この作品の豊かさ、温かさをさらに感じさせます。

まあそんなわけで大学生活を存分に謳歌している雪なので、桜志の渾身の「♪ここは雪を傷つける世界!」が、「ううむ現状一番雪を傷つけてるのは君に見えてしまうのだが……」というバグを生んでしまったりする。
「♪お前とは縁のない世界、いくら望んでも入れてはもらえない……という気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!(増田こうすけ作画)」ってなってないか。大丈夫か。
桜志どんまい。君は正しいし言いたいことはよくわかる。ここが格別やさしいせかいだっただけだよ。元気出して。

 

<楽曲について>

ミュージカルナンバーがとにかく明るくて楽しい!
オープニングの時点で「俺は今猛烈にミュージカルを聴いているぞ!!!」な気分になれる。
歌唱力の高い方が多いこともあり、ミュージカルの美味しいところ詰め合わせって感じ。贅沢。アンサンブルの方含め、ダンスもみんなしなやかで素敵。

「Newミュージカル」ではあるけど、ナンバーはむしろトラディショナルで普遍的な印象もあるくらいの人生讃歌、恋愛讃歌が多かったです。
「M5:ロッキン・ロビン」のアメリカンで陽気なわちゃわちゃ感もいいし、「M12:夢の国コストコ」はもはやコストコのCMソングでいいのではないか。
どの曲もすぐ覚えて脳内ループ必須。

終盤にかかって全員で歌い上げる「わたしの手・あなたの手」がやっぱり一番印象的。公式サイトでも稽古版のフルを聞けます。

↓稽古版動画にリンクします↓
https://yubisakimusical.westage.jp/pages/4928818/movie
(心役が抜けた時点のある意味貴重なバージョン)

 

<キャストの皆さんについてあれこれ>

皆さん素晴らしいけれど、とにかく女子組が可愛いんですこれが。
純粋で内面がどこまでも雄弁な雪、鈴を振るような笑顔と歌声のりん、健気で不憫で応援したくなるエマ。
デュエットもトリオもハモリが綺麗で聞き惚れました。


●雪(演:豊原江理佳)

生まれつき聴覚障害のある大学生。
純粋で好奇心旺盛な性格で、大学生活を楽しんでいる。

まず冒頭のコンテンポラリーダンスで度肝を抜かれる。
私は最初は原作を読まない状態で視聴したけど、原作のイメージを持った人が見るとより「そう来たか!」という意外性があるんじゃないかと思う。
シーンと静かなところから、足を踏み鳴らしてビートを出したり、這いつくばったりする全身表現。
「私の世界」とコーラスが入り、ああこれは主人公の内面の世界なのだな、私たちとは少し違う世界を持っているのだなと察することができる。現実世界ではほわほわとした女の子である雪がしそうにない動きだからこその衝撃。

聴覚にハンディのある役ということで難しい役どころ(視界に入っていない物事には表情でも反応できない…など制約が多い)にもかかわらず、表情豊かに、むしろそれだけでなく全身を使って表現する様に圧倒されました。
自在に歌えるミュージカルシーン以外のストレートプレイでも、表情やボディランゲージがとても雄弁。豊原さん、表情筋が人の2倍あったりします?
序盤の逸臣と2人で帰るシーンで、全身で「いいですよ!!」を表現してるとこなんて本当に可愛い。クルクルしている。とてもクルクルしている。

逸臣が言う通り、人間の悪い部分を耳から入れていない純粋さが魅力的ではあるけれど、それはこの時代には危うさでもあって、いつか悪意のある輩に引っかからないかおばちゃんは心配です……やっぱり心配性の桜志ひとつポシェットに入れといた方がいいって。お守り代わりに(桜志を何だと)。

 

●逸臣(演:前山剛久

前ちゃん本当に売れっ子になったよね…………(どこから目線か)
最近、話題になる舞台に結構な割合でサラッと名を連ねていてすごい。歌って踊れてラップもできちゃう美の化身。
池岡さんとの舞台共演はDステ夕陽伝以来かな?(アフタートークゲストだったら「お気に召すまま」とか「駆け抜ける風のように」とかでちょいちょいあるけど)

本作で演じるのは雪の恋の相手となる大学の先輩・逸臣さん。
雪が主人公のように見えるけれど、逸臣がダブル主演という扱いのようです。

トリリンガルでコミュニケーション能力抜群、頻繁に海外に出かけて見分を広げている。「バックパッカー気取って、自分は世界を知ってるぞってアピールしているアイツ(桜志評)」。
おそらく一般的な家庭で育っている桜志が敬遠するのもわかるというか、やや浮世離れして、ちょっと目を離したらすぐ違う世界に行ってしまうなと思わせるのが逸臣さん。志も夢も高く、風船のように軽やかで、括り付けておくことなんてできない「憧れの存在」。
まばゆき御方すぎて、何ていうか、桜志がカンタだとしたら逸臣さんはトトロ寄り(精霊に近い存在)だなと個人的には思ったりする。日本のどこかにいるのか…このいきものが………?

「俺を雪の世界に入れて」「俺なら大丈夫って…それって、どこまで?」「ハハ、わかった、わかった」「付き合おっか」などなど、胸キュンセリフの声の含みが毎回すごい。声がすごい(2回言った)

あとダンスのキレが冴えてる。止めの動きが良い。ただでさえ全員楽しそうなコストコの歌でキャッキャはしゃいでるの可愛い。「♪トイレットペーパー!」って歌いながら音ハメ完璧でポーズキメられるのこの人くらいでは?

ところであの量のピザとティラミスとサラダ全部食べたんですか……?2人で……?

 

●りん(演:林 愛夏)

個人的に今回一番印象に残ったのがこの方!!!

「りん」という名前のとおり「鈴を転がしたような」と表現したくなる、常にニコニコした優しさと透明感が心に響く子。
大学では雪のパソコンテイカ―(講義の内容をパソコンで打ち、通訳のように文字で伝えるサポートのことだそう:知らなかった)を務め、ごくごく自然に対等に友人づきあいをして、LINEを通じて恋バナに花が咲く様子は見てい本当にほほえましい。

気になる人の連絡先を「絶対絶対、ゲットしよ!」と雪とデュエットする様のいとうつくしき……好きな人と2人きりでドライブできるチャンスにはしゃぐ様はさらなり……連絡を待ってスマホ画面をただ眺める様ははたいふべきにあらず。
大学生の恋愛ってこんなに軽やかでパステルカラーで怖いもの知らずなのか_(:3」∠)_よき

キャストの林さん、ミュージカル経験者なのだろうとすぐ察しがつくほど歌唱力が高くて、澄んだ歌声と明るい表情が人を惹きつける。
「わたし、あなた、愛してる」と歌い上げた「わたしの手・あなたの手」のソロパートはそこだけ繰り返し聞きたくなるほど、残響までもが鈴のように綺麗でした。


●エマ(演:青野紗穂

不憫で健気で一途な、綺麗なお姉さん。
片思い中の逸臣に真正面からアタックを続けるけど、返ってくるのは悲しいほどの塩対応。そりゃないよ逸くん!!!!(感情移入)
こっちまでメゲてしまいそうになるけど、ぶつぶつ言いながらも諦めずに前向きに恋に向かって進むパワフルさが気持ちいい。

演出のしようによっては、エマを都合のよい舞台装置にして、つまりもっと厭な女に描くことだってできたんだろうけど、何しろこの世界、自分の利益のために人を貶める人が1人も出てこないので…。
叶わぬ恋に打ちひしがれたり、「振りむいてくれたら」と甘い夢を見たり、1人で酒をあおったりはするけど、雪に対して敵愾心をあらわにするでもなく、卑怯な策を弄するでもなく、ただただ切ない恋心を歌い上げるエマが素敵でした。
彼女こそディーヴァ…。

演じてらっしゃる青野さん、声の芯もビブラートもすごいな!と思ってたら本業が歌手の方でとても納得。
池岡さんとインスタライブコラボしてくれたときは、それこそアーティスト肌のクールビューティって印象だったんだけど、劇中では等身大のイマドキオシャレ大学生感が出ててさすがと平伏しました。
エマに幸あれ。


●心(演:中山義紘)
当初のキャストの体調不良により、急遽代役で参加してくれた義くん。黑世界のときも同じPatchの三好君が代役を務めていたけれど、代役だと忘れるほどクオリティを追いつかせて来るのが2人とも素晴らしいな。

エマと息ぴったりのノリノリな酔っ払い、気が大きくなって周りに絡みだす酔っ払い感が本物の酔っ払いだった。
酔っぱらってなければso coolらしいけど酔っぱらってない場面の登場が体感10秒くらいしかないのでよくわからなかったです(マジで)。
エマの恋を応援しつつ、エマ自身を友達以上に思っている描写は散りばめられていたけど、もう少し掘り下げが見てみたかった。
心に幸あれ。

エマ心コンビに無理やり誘われてイヤそーな顔をしつつも結局一緒にキレキレで踊ってくれる逸臣とのトリオ可愛かった。


●京弥(演:上山竜治

逸臣のいとこにして、登場人物が集うカフェバー「ロッキン・ロビン」の店長。

役者さんのプロフィールを拝見したところ、わーいレミゼのアンジョルラスだ!納得!!というさすがの歌唱力と表現力。
ロッキン・ロビンのロカビリーなテーマに合わせてみんなでズンチャカするのが楽しかったし、いきなりバク転キメちゃうし、さすがミュージカルの世界線から来た人だな??って感じでした(ミュージカルを何だと)
何気にコストコの歌のラインダンスの時、いちばん脚上がってたのもこの方。つま先の到達点が高すぎる(頭の上)。

逸臣の雪へのグイグイ感とは対極的に、最年長なのにりんちゃんとの奥手なモジモジタイムがかわいかったです。末永く爆発しろ(もはや死語)
勢いに任せてハグしてもよさそうなところを行き場のない両手たち…。
この2人の周りだけ作画が高橋留美子先生でした。らんま1/2の25巻以降のらんまとあかねみたいな距離感(伝われ/いや伝わらんだろ)。

あとこれは1点だけゲンドウポーズでクレームなんですが、「サラサラの黒髪」ってわざわざりんちゃんに歌わせといて、実際にお出しされた店長が濡れたようなウェーブヘアーだったの納得がいかないんですが???
これはさぞやSNS上でもツッコミの嵐だろうねェ!!とニンマリしながら「京弥さん サラサラ」で検索したら、フォロワさんの同趣旨のツイートが1件出てきただけで笑いました。みんな普通に受け入れすぎである。
いや京弥さんカッコよかったのでこれはこれでいいです。一連の流れが楽しかったので全然OKです。いやしかしなぜりんちゃんに歌わせたし。

全体的に明るいストーリーの中でも、さらに一息ついてリラックスさせてくれる、まさにロッキンロビンみたいな方でした。好き。


<池岡さん定点カメラ>

●桜志(演:池岡亮介

雪の幼馴染にして、現在は同じ大学に通う青年。
本人は雪の保護者的立ち位置のつもり?のようだけれど、雪にとっては意地悪なことばかり言ってくるためやや苦手な存在のよう。
実際は不器用なまでに雪を想っており、雪の力になりたいために手話をマスターしている一途な子。しかし不器用さゆえに上手く関われず、雪に近づく逸臣にも敵対心を抱いて…という役どころ。

いやもうね。
桜志がんばれ超がんばれ。
この一言に尽きる。

何度でも言うけど、トトロのカンタ並みに不器用が過ぎる。そこが愛しい。でももどかしい。
私が雪母だったら「桜志くんちょっと口下手でアレだけどいい子だから!!桜志くんにしときな!!」って爆推ししていると思う。近所住みだから逸臣みたいに外国に半永久的に連れてかれる心配とかもないし(急なリアル目線)。

今時貴重なほどのツンデレ成分…あんなに一途なのに(だからこそか)「俺のこと、頼れよ(池ボ)」の一言が本人に言えない歯がゆさ…。
手話もあのレベルまで身に着けるまでには陰で相当努力しているはずで、りんちゃんの言う通り手話で悪口が言えるって単純にすごい手話力である。

いやわかるよ、ずっと淡く想ってきた幼馴染みが目の前で精霊級イケメンに頭ぽんぽんされたら誰だって「なんだあれ……」って言う。
「雪は俺だったら良いんだって♪」って精霊にドヤ顔されたらバリトンで「あ”????」って言う。「あいつはやめとけ、遊ばれてるだけだ」って言いたくもなる。わかる。
もっと言ってもいい。もっと正直になっていいし、何ならもっとずるくなってもいいのに。

恋の予感に浮足立つ雪に、手話で「あんま調子乗んなよ」と捨て台詞のように言ったり、指文字で「ア、ホ!」って投げつけたりするときの表情がよかった…小学生みたいで…(褒めてる)。年頃の男の子が心の隅に抱える、自分でも気づいていないくらいのジトッとしたサムシングの表現がいつも絶妙ですごいなと思ってる(褒めてる)。
そうかと思うと、電車で隣りに座り、手話でキツい語彙を投げつけながらも、沈黙の中でそっと雪の肩に頭を寄せるとことかまるで「わかってくれこれが僕らの精一杯なのさぁーーーー!!」って昔の青学ソングが脳内に響くような精一杯のデレぶり(テニミュはもう4thですが)(どんなに未来が茨の道の彼方でも)。
ううむ、KO☆JI☆RA☆SE。


きっと一足先に雪への恋心をうっすら自覚していたであろう桜志が、すべて飲み込んで見守る側につくのが切なくて妙に感情移入してしまう。
終盤のシーン、安否不明だった逸臣氏の無事が分かって、雪とともに本気で安堵している表情とかね。とっくに覚悟は決まっていたんだね。
とはいえ、桜志はどう逆立ちしても逸臣氏にはなれないけど、逸臣氏だってまた雪にとっての桜志にはなれないはずなので、自分なりにしっくり来る立ち位置が見つかるまで頑張ってほしいと思いました(だから何目線か)。

そうかと思うと、唐突に始まるメタコーナー「この俺、桜志が皆さんにとっておきの手話を教えます」タイム(そうとしか呼べない)で完全に自分色に持ってってたのもよい。あれ冒頭「皆さん!」の声かけ、完全に桜志じゃなくて池岡亮介(27)だった。会場で初笑いを取ったのがあのシーンかもしれないと思うと心がなごむね!
配信の時は「手話」「楽しい」「イライラする」「面白い」の手話を教えてくれました。どうやら日替わりだったらしい。本多劇場(現地)で一緒にやりたかったな。

例のコの字のせいで、舞台にもコンサートにも全然行けていないからこそ、幕が開いて音楽が鳴って歌声が聞こえることがこんなにも尊くて、嬉しい。
その中から池岡さんの歌声が聞こえると、ああ一生懸命伝えようとしてくれているんだなと感じて心がいっぱいになります。
指文字も早い段階で50音覚えてインスタライブで披露してくれたり、手話の勉強もとても頑張ってたことを知っているから、1つ1つの手話の動きを固唾をのんで見守っていたのですが、各方面から褒められていると聞いて本当に嬉しい。
ファンとして誇らしいことがまた1つ増えました!

(インスタライブも常にお待ちしてます!!)

 

<おわりに:コロナ駆逐の誓い>

まもなく、昨年延期になった池岡さん出演舞台「4」が開幕します。
奇跡を信じて今回もチケットを押さえ、ワクチン接種も終えていますが、過去最大ともいわれる感染状況の中、また、居住地域に再びのまん延防止重点措置が適用されているタイミングでもあり、今回も観劇は自粛します。

舞台公演期間において現場に応援にいけない、露骨に言えば、応援している方やその関連コンテンツにお金を払えないということは、正直、ファンとしての自意識すら危うくする日々です。
東京が遠い。推しが遠い。
チケットを買っては、手放す。きっとあと何回も繰り返すのでしょう。

しかしながら、「どうせ次回もダメだろう」よりは「今度こそ行けるはず」と思いながら日々を過ごしたいと、小市民なりに思っています。
その「今度」はいつだかわからないけど、絶対に来るはず。
もう何年もの間「推しに会えるまでこの日々を頑張ろう」って呪文のように唱えながら色々こなしてきたのだから、そのスパンが伸びただけです。推してきた年月に比べたら、このくらい何でもない。いや何でもなくはない。つらすぎて虚無になっているだけかもしれないけど。でも。

行けない方、もう少し一緒に辛抱しましょう。
僕の我慢がいつか実を結ぶっていう名曲があるではありませんか。

行ける方、どうぞ万雷の拍手を各自の推しに注いでください。
会場で応援している方がいるという事実に私は救われます。

「今度」が来るその時まで、一生懸命手を洗います。うがいもします。
手指消毒だって何度だってしてやりますよ。

 

その手が、ゆびさきが、希望を作り出し、明日を掴み取るのだから。

 

 


(巧いこと言った顔で締め!!!!!)

Shared TRUMPシリーズ 音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』感想レポ(雨下の章)

こんにちはこんばんは、こんばんはこんにちは。

黑世界ですよ、黑世界。
あの「TRUMP」シリーズの最新作に、8年の時を経て池岡さんが再出演しましたよ。
ご出演が発表されたときは快哉を叫びました。残業中に。
憎きあのウイルスのせいで現地には行けなかったものの、質の良い配信をしてくれたおかげで黒き世界を堪能することができました。


※ATTENTION※
書いた人は「TRUMP」シリーズ初心者です。
これまでは池岡さんご出演の「DステTRUMP」しか観たことがなく、黑世界観劇のために慌てて「LILIUM」「SPECTER」「MARIGOLD」のDVDを購入、何年も遅れて打ちのめされたクチです。

その深淵な世界観や複雑な伏線設定、「純度の高い地獄」とでもいうべき衝撃的な展開で名高いシリーズであることは十分承知していますが、理解は非常に浅いです。
(「我は守護者なり」と「君は僕で僕は君だ」と「ライネス」がアカンことは覚えた)
したがって、今回はほぼ黑世界単独の作品として見ていますのでご承知おきください。
シリーズファンなら膝を打つ演出とかセリフとかたくさんありそうだけど、あまり読み解けてない。

シリーズ全体の素晴らしい考察ブログはすでにネットの海に数多くありますので、私はいつもどおり池岡さん可愛いだけの感想をつづりますかね。
なおネタバレはガッツリしてますのでお気を付けください。

<視聴公演>
ライブ配信のみ
9月22日(雨下・日和)、27日(雨下)、10月3日(雨下・日和)、4日(雨下)

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▼公演概要
●日程・会場
2020年9月20日(日)~10月4日(日)サンシャイン劇場
2020年10月14日(水)~10月20日(火)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
ライブ配信:9月22日(火祝)、26日(土)、27日(日)、10月3日(土)、4日(日)

●演出・監修:末満健一
●音楽:和田俊輔
●脚本・キャスト
<雨下の章>
脚本:中屋敷法仁、降田天、宮沢龍生/末満健一
出演:鞘師里保 樹里咲穂 池岡亮介 大久保祥太郎 新良エツ子 宮川浩 中尾ミエ 松岡充
<日和の章>
脚本:岩井勇気、葛木英、来楽零/末満健一
出演:鞘師里保 上原理生 MIO YAE 三好大貴 中山義紘 新良エツ子 朴?美

▼公式サイト
https://trump2020.westage.jp/


▼作品概要(公式HPより引用)
音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』上演決定!
<shared TRUMPシリーズ>とは、一つの世界観を複数の作家が共有して創作する“シェアードワールド”の手法を用いたTRUMPシリーズの新たな試みで、末満健一自らが「この方に」と執筆を熱望した方々の参加が実現。
様々なジャンルから集結した豪華作家陣と末満健一による短編アンソロジーの形式で、これまで語られることのなかったTRUMPシリーズ2作目『LILIUM』の主人公・リリーが、不老不死のあてなき旅の中で出会う、「雨下の章」と「日和の章」の二つの物語を同時上演いたします。
さらに、配信ならではの演出も加わった全10回のライブ配信の実施も決定。
TRUMPシリーズの新たな瞬間を、是非ともにお楽しみください!

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▼各話タイトル
イデアの闖入者[作・末満健一]
②ついでいくもの、こえていくこと[作・宮沢龍生]
③求めろ捧げろ待っていろ[作・中屋敷法仁]
④少女を映す鏡[作・末満健一]
⑤馬車の日[作・降田天]
⑥枯れゆくウル[作・末満健一]


▼作品全体の感想
「TRUMP」シリーズ中「LILIUM」の主人公である「リリー」を中心に紡がれる12の物語。

「音楽朗読劇」ってどんな感じかな?と思いつつ、朗読劇っていったらふつう座って台本を持ちながら読み上げるおとなしい形式じゃないですか…。
だから、TRUMPシリーズの美しい音楽をバックに、静かに登場人物の内面などが語られる舞台なんだろうと漠然とイメージしていました。


全然違う。


全然違う。


ほんとに全然違う。


確かに台本は持ってる。
確かに美しい音楽は流れてる。

ただし全然静かにしていない!
歌う!踊る!走る!跳ぶ!はねる!
しかしながら完璧なソーシャルディスタンス!

当初上演予定だったTRUMPシリーズ最新作が、コロナの間は上演が難しいため、急遽立ち上がったプロジェクトがこの「黑世界」だそうですが…。

「やむを得ず」方針転換した舞台がこれ?
ずっと前から構想されていた作品なんじゃないの?
(「黑世界」初演は9月。つまりコロナ拡大開始からものの半年)
コロナ対策をしながらできる演劇表現を、芸術性を損なわず、むしろ発展的に、必然だったかのように昇華してしまうなんて。
クリエイターの想像力って本当にタフで、勇気づけられる。
コロナ絶対許すまじ必ず滅すマンだけど、コロナがなかったら黑世界もなかったと思うと……………いやコロナ絶対許すまじ必ず滅すですけど。

「雨下の章」「日和の章」に分かれて綴られる12編の物語は、永遠の命を与えられてしまった「リリー」が、死を求めて旅を続ける中で出会った人々の、時に温かく、時に愚かで、とても美しい人間の営み。

今回の新しい試みは他にもあって、シリーズライターの末満さんのほか、末満さんがオファーした数名のライターがそれぞれ脚本を担当していること。
短編集ならではの挑戦だし、これがまたいい味を出していて、ある意味で(いい意味で)末満さんには絶対に書けないだろうな、という脚本を、それでもTRUMPの世界の1ピースとして不思議にはまる物語を紡いでいました。
それぞれのお話は単品で見ても成立するし、「本当にこれTRUMPシリーズなのかな?」と思うような明るいお話(え)もあったりするんだけど、12編通してみた時に間違いなく「TRUMP」の色に、音になる。
それだけシリーズの力が強いということと、各脚本の魅力、そしてそれをまとめあげる末満さんの力量に改めて敬服する。
短編集でありながら、リリーの苦悩もきちんと描いて、リリーのこれからを暗示する、そしてシリーズそのものも一つの結末に向けて一歩足を進めていくような、シリーズにとってなくてはならないピースになったのでは。

そしてとにかく主演の鞘師里保さんが素晴らしすぎた。
錚々たる歌ウマメンバーに囲まれても遜色ない歌声や、キレのあるダンスが素晴らしいのはもちろん、美しくも寂しげな、儚いけど凛とした佇まいがもう満点。
「LILIUM」から6年という現実の時間経過を感じさせない、不老不死の少女を貫くビジュアルの維持も素晴らしい。
「リリー」という虚構の存在が、今でもこの世界のどこかでひっそりと生きているのではないか。
そんな風に余韻を感じさせる素晴らしいお芝居でした。

 

▼各話感想


イデアの闖入者[作・末満健一]

12編のオムニバスを通して、主人公は「LILIUM」で不死者になった吸血種の少女・リリー。
演じる鞘師さんはしばらく海外留学されていて、日本での芸能活動を休止していたそうなのだけど、「LILIUM」から現実世界では6年経っているというのに、容姿も雰囲気もあの時のリリーそのままで、「純潔の少女のまま永遠を生きる」リリーが本当にそこに立っているかのようです。このことにまず度肝を抜かれる。

静かに物語が始まるのだけど、弦楽器が生演奏なのにさらに驚く。クールすぎるし、弦のチューニングから入るのがとてもオシャレ。

冒頭、リリーは里帰りして両親に会う夢を見ます。
(本当の両親は何百年も前に死んでいるはずなので当然、繭期が見せる妄想。)
あの不思議なサナトリウム・クランでの楽しかった生活を両親に歌って聞かせるシーン。一緒に過ごした仲間について、全員の名前とエピソードをニコニコしながら語るリリー。
鞘師ちゃんの歌声が純粋な少女そのもので愛らしくてずっと見ていられるんだけど、その子たち全員、その………つまり……リリーが殺してしまったわけなので………。
つ、つら……と思うのもつかの間、悲劇のシーンの再現がやってくる。
「LILIUM」クライマックスの虐殺シーンと、リリーのあのすさまじい咆哮が見事に再現されます。「LILIUM」ファン、開幕から死屍累々やろこんなん。

その悪夢から助けてくれたのは、この「雨下の章」のキーパーソンにして傍観者、シュカ(演:松岡充)。
初登場時は「全く面倒な女だな」ってヤレヤレ感出しながら助けてくるのに、最後まで見るとリリーへの憧憬と執着が濃すぎるリリー強火担だとわかる。恋とも愛とも違う、純度の高い感情をリリーに抱き、リリーを理解すること、見守ること、そして見届けることを生きる意味にしている。

ある程度TRUMPシリーズに親しんでいると、「我は守護者なり」と聞こえただけで「やめろーーーー!!それ以上言うなーーーー!!!!」となってしまうんだけど、「…と言いたいところだがそんな大層なものではない。ただの傍観者さ」と続くため生存フラグだと認識してしまう(そして見事にへし折られる)。
演じているのがSOPHIA松岡充さんだけあって、シュカ様(圧倒的に様)が歌いはじめるとたちどころにコンサート会場になってしまう。圧倒的ビジュアル系ヴォイスにひれ伏してしまう。天井から降り注ぐ羽根と薔薇の演出が見える(幻視)。

バッドトリップの夢の中、リリーが出会ったのは黒ずくめの不思議な女性(演:新良エツ子)。
TRUMPシリーズの透き通るようなテーマソングを歌っていらっしゃるあのエッちゃんですね。意外にも役として出演するのは初だとか。透け感のある衣装デザインめっちゃ素敵。
リリーの別人格?イマジナリーフレンド?のようなその存在に、リリーはかつての友人「チェリー」の名前をつける。気が強いけど面倒見のいいその女性は確かに「チェリー」に重なる面もあって。
どこまで行っても開けることのない夜のような「黑世界」を、両の手が死に届くまで旅をするリリー。
永遠の命を終わらせる方法を探しに、リリーとチェリーの2人旅が始まる。


●オープニングテーマ
ここで登場人物が全員登場して主題歌を歌唱。
このへんでやっと「あっ……音楽朗読劇って、音楽流しながら朗読する感じじゃないんですね?今から始まるの、ミュージカルなんですね???」ってことに気が付く(遅い)

照明が本当にきれいで、一気にTRUMPの、黑世界の空間に引き込まれる。
重厚で荘厳で敬虔さも感じるオープニング。
鞘師さんの透明感が果てしない。
新良さんの歌声の神聖さがすごい。
感染対策のために稽古はほとんどオンラインで、立ち稽古はたった3回って聞いたけれどにわかには信じられないです。

 

②ついでいくもの、こえていくこと[作・宮沢龍生]

<あらすじ>
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石造り職人の親方(演:宮川浩)とその弟子シーメン(演:大久保祥太郎)に出会ったリリー。
職人たちは歴史的な橋の建設に取り組んでいたが、ある日の大雨で橋は流され、親方は命を落としてしまう。
未熟で叱られてばかりいたシーメンは、親方が残した愛ある激励の手紙と技術書を基に、遺志をついでとうとう橋を完成させるのだった。
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旅の途中で大雨に降られたリリーとチェリーは、宿を探してさ迷い歩く。
2人のデュエットいいなあ。新良さんの声と鞘師さんの声、地声は全然違うはずなのに歌声になると区別がつかないくらい親和性があって心地よい。
この時の軽やかな歌に登場するのが、ハイ!そうです。我らが池岡さんと大久保祥太郎。このD2コンビが画面に出てくるだけで尊い
何役で出てきたかって?

太った蜘蛛役です!!

「太った蜘蛛がダンスをしてる~♪」の歌詞に合わせて、蜘蛛のかぶりものをかぶってステップを踏む池岡さんと大久保祥太郎。かわいすぎか。

そうこうしているうちに出会ったのは石造り職人の親方・鬼灯と、その弟子のシーメン。実は元ヴァンパイアハンターだった親方はリリーの正体にすぐに気が付くけれど、これまであまりにも多くの吸血種の命を奪ってきた罪の意識もあり、優しい態度で接してくれる。

親方と橋職人たちの仕事のシーンの曲、楽しくて明るくて大好きです。
「いいか、よく聞け野郎ども!」という親方の指示のもと、「合点でさ親方!」と、スコップやツルハシを持った職人たちが軽やかに踊る。
この職人の中に池岡さんがいるのですよ!
襟元がはだけたラフな格好にニッコニコな笑顔でステップを踏む池岡亮介、そうだ私はこういう池岡亮介が観たかった!!!池岡さんの笑顔プライスレス!!!
と明るいシーンなのに涙ぐむ。だって舞台で演じている彼を見るのは8か月ぶり。そりゃ泣きますって。
スコップを振る動作が360度どっからどうみても池岡亮介。はけるときに大久保祥太郎と顔見合わせるとこもまた可愛い。
そして「わからないことは何もかも俺に聞け!」って言ってくれる親方が頼もしすぎる。そんな上司欲しかったよね!!!

鬼灯親方は不慮の事故がもとで命を落とすんだけど、哀しみにくれる弟子のシーメンには、親方の手紙と技術書が残されいた。
「頼んだぜ、俺の一番弟子」と結ばれた手紙でシーメンは発奮。5年かけて橋を完成させ、ずっと見守っていたリリーはその橋を渡って旅を再開する。

このときのシーメン・祥太郎の歌がすさまじく良い。
祥太郎君はD-BOYSの中でも芸達者で何でもこなすから、歌のうまさは想定内なんだけど、視線の上げ方、曇りなきまなこ、高らかな歌い上げ方など見入られてしまいました。
8年前のDステ版TRUMPではで唯一のトリプルキャスト、「悔しい」と絞り出していた姿を知っているから、いつの間にか「TRUMP」シリーズ最多出演記録を打ち立て、初めてのソロ曲でまっすぐ歌い上げる姿に感情を揺さぶられないはずもなく。

1人1人の人間の命は不死者のリリーからしたら一瞬で過ぎていくもの、だけれども営みや思いは受け継がれていくのだという、人間世界側の美しさを描いた爽やかなお話でした。
人の思いこそが永遠であり不滅なんだよって産屋敷輝哉さんも言っていたし。
(関係ないけど鬼舞辻無惨様ってほとんどTrueOfVampだよね)

 

③求めろ捧げろ待っていろ[作・中屋敷法仁]

<あらすじ>
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リリーとチェリーが出会った情熱的な老未亡人、マルグリット(演:中尾ミエ)。
彼女は過去、吸血種に襲われたところを麗しきヴァンパイアハンター・雷山(演:池岡亮介)に助けられたことを唯一無二の思い出としている。
彼に再会するため、その状況を再現すべく、自らの体を切り刻んで生き血の匂いを振りまき、恍惚と悶えるのだった………。
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問題作「求捧待」。
池岡さん大暴れ。
人間繭期ラプソディ。
黑世界の最大瞬間風速。
誰が呼んだかライネスキャンセラー。
雷山・ジ・エ――――クセレ――――ント!!!!

なんでこれTRUMPシリーズでやろうと思ったの中屋敷さん????
いや貴方様には絶対の信頼を置いてますけども。池岡さんのことを大好きで夢見すぎなところも含めて本当によかったなと思ってますけども。
なんでこれTRUMPシリーズでやろうと思った???????(2回目)
ありがとうございます本当にありがとうございます。
中屋敷さんのTwitterいわく「池岡亮介への願望と妄想をバキバキに詰め込んでしまった」を見た瞬間五体投地しました。本当に……ありがとう………(100万回のありがとう)

美しきヴァンパイアハンター・雷山を演じるのは我らが池岡亮介
痩躯を麗しい漆黒の装いに包んだ伊達男。喉仏と鎖骨からほとばしる色気がすごい。胸元のはだけ具合がプロの犯行。形の整ったマットな唇とナルシシズム全開な流し目が全くもって似合っている。1970年代の沢田研二みたい(果たして伝わるのかそれは)。
これまでシリーズに登場したヴァンパイアハンターたちが割と硬派な人ばかりだったので度肝を抜かれたというか、彼らから初対面でグーで行かれそうだなっていうのが第一印象です。
(いや宿舎に女を待たせていた奴が1人いたな?演:池岡亮介ですけれども)

まず幕開けからしておかしい。
繭期の具合がよろしくないリリー、七五調の都々逸で見栄を切りながら登場。
そこに「お嬢さん、この道は引き返した方が身のためだ(ヴァンプが出るから)」と告げに現れる美青年・雷山。
完全に池岡さんのアドリブなんだと思うけど、雷山、現れた時から様子がおかしい。さらに公演を重ねるごとに様子のおかしさが加速する。推し、遊びまくってる。異様に振動してみたり。乳首出してみたり。投げキッスしてみたり。
リリー視点で見たら一歩間違えれば、否、完全に不審者。

そして一行は一人の身なりの良い老未亡人・マルグリット(演:中尾ミエ)に出会う。
このマルグリット、一言でいうと「ただの私たち」もとい「雷山強火担」。

雷山に助けられた甘美な思い出を胸に、再会を夢見るあまりに自らを危険にさらして彼を探し歩く。
ヴァンプあるところにヴァンパイアハンターが現れると考えたマルグリットは、自らの体を剣で切り刻み、生き血の匂いでヴァンプたちをおびき寄せる。
見事、雷山と再会を果たしたマルグリットはその悦びに嬌声を上げ、生き血を流しながら悶え、雷山の美しさを讃えながら、恍惚の中に息絶えるのだった…

うん、どう見てもただの私たち。
いや私たちは命を大事にしますけども。
どっちかっていると切っているのはカードで(やめなさい)

自らの体を傷つけながら「いいわ雷山!素敵よ雷山!」「エクスタシィイイイイ!」とうっとり叫ぶ強火担・マルグリットに、「ヴァンプめ!俺のマルグリットから離れろー!」とかやっちゃうガチ恋製造機・雷山。
出会ってはいけない二人だったよねたぶん。

真面目に言うと中尾ミエさんが素敵すぎます。
雷山と再会してからのデュエット、カルメンみたいな情熱的な慕情を、バラのような赤い照明を浴びながら、スカートをひらひら靡かせて踊る往年の大スタア。スパニッシュカスタネットの軽やかな音が似合いすぎる。
伸びやかな太い声で歌い上げるミエさんの、その相手役が我らが池岡亮介という事実が本当に誇らしくて。
だってあの「可愛いベイビー」の人ですよ。音楽史に輝くような曲を生み出した、60年のキャリアのある女優さんの相手役がわが推し。
嬉しくて泣くかと思いました(…と、思ったのは落ち着いてからで、初見はポカンと見てましたが)

「ライザン・ジ・エ―クセレーント」とバックコーラスするリリーとチェリー。
「もっと殺してヴァンプ!もっと守って私たち!」と良い声で歌うマルグリット。
「俺の名前はライザー――ン」と自己陶酔全開で踊り歌う雷山。
マルグリットパートでも「アォ!」「フッ!」「カモォン…」とか合いの手入れてる雷山。(カモォンって何…?)

リリーとチェリーが「我々は一体、何を見せられているのかァ!」って言ってたけどそれ本当に思う。私たちも思う。何見せられてんのこれ。最高か。

騎士道精神(なのか?)にあふれた雷山は「もう剣を捨てたい、引退したい!」と言いながら、「マルグリット、俺は君が求めさえすれば、君だけのヴァンパイアハンター!」と切なげに呼びかける。
マルグリットの強すぎる妄執を持て余していたかのような雷山、彼女が息絶え解放されたはずなのに、「まだ終わっていない」とつぶやく。
「一体何が」と戸惑うリリーの耳に届くは、遠くから聞こえる女たちの黄色い悲鳴。

そう、マルグリットだけではなかったのだ。
雷山との甘美な時間のために彼を追い続ける、第二、第三のマルグリットが、あそこにも、あそこにも、あそこにも!!
「もっと殺して吸血種!もっと守って私たち!!」とせがむ女たちがいっぱい!!
なんて罪な男なんだ、雷山!!!

「いいさ!お前たちがそれを望むなら!さあ来い!来い!ここに来ーーーい!!」

ハイここ!!!!
ギュイイイイイインとかき鳴らされるエレキギター!!!
響き渡るブラスセクション!!!!
えっちょっと待ってTRUMPシリーズでそんな音鳴りますっけ!?

突如始まったアップテンポでダンサブルなイントロに合わせて、うぉい!うぉい!と客席に向かって拳を突き上げ始める雷山!
カモン拍手!とばかりに頭上でクラップハンズする雷山!
「drrrrrrrrrrrrr」と巻き舌で煽る雷山!
拳を挙げろ!タオルを振れ!サイリウムをぶん回せ!!!


えええええええええええええええ(困惑)

 

*****歌詞耳コピ(全部はNGと思うので一部)*****

「街中の国中の世界中の女 女 女たちが
 心から 俺を求めている
 雷山が見たい 雷山に会いたい
 雷山をもっともっともっと感じたい

 俺に守ってほしいから
 吸血種に襲ってほしいから
 女たちは悦んで柔き素肌に傷を刻む
 溢れる真っ紅な血しぶきは この俺への捧げもの

 待っていろ見せてやる 待っていろ
 雷山を見せてやる 雷山に会わせてやる
 この俺を感じるがいいさ Ah Ahhhhhhh!!!!!」

*****歌詞終わり*****


ねえなにこれ。

初見でポカ――――ンとして、最後まで割とポカ――――ンとしていました。
昔のニコニコ動画なら「※ご覧の舞台は『黑世界』です」って字幕ついてた。
黒執事でP4がアイドルやり始めた時を超す衝撃(伝わらんて)。
手塚国光がテニスで恐竜を滅ぼした時以来の驚愕(伝わらんて)。
ビッグマシンに海東大樹が乗込んだ時に似た困惑(伝わらんて)。

観客を煽りながら縦横無尽にステージを駆け回る雷山。
バックダンサーとしてキレッキレのダンスを踊るリリーとチェリー。
えっちょ全部見たいんですけど!!1カメ2カメ3カメ全部映してください!!!!ワイプで抜いてください!!!

「これぞまさしくエクスタシィイイイイ!!」リリーが叫ぶ通り。
「全身血だらけ濡れ鼠、それでも彼は美しかった!」チェリーが評する通り。
女たちの命を吸うほどに目映く美しく輝く雷山。
狂気と正気が交錯して生まれる影の深さが、一層彼を蠱惑的に笑わせる。
その笑顔が自分に向けられるならば死んでもいいわと女たちに思わせるほどの。

「もっと殺して吸血種!もっと守って私たち!!」と叫びながら雷山に群がる女たち。絶対、サイリウムと蛍光色の文字書かれたウチワ持ってる。
「このヴァンパイアハンター雷山に、お前たちの血を捧げよ!!」と遠吠えしながら去っていく雷山。

そんな彼を見送って背を向ける、リリーとチェリー。

「その美貌と才能であまたの女を虜にし、生き血を流させる。それは彼女たちにとっては、救いなのよ!」
「あんたも彼に救ってもらう?」
「残念だけど、誰にもあたしは救えないわ」
「死だけがあんたの救いだものねえ」

などと、唐突に本筋のヤツぶっこんで来たりする。

「ここであったこと全部、繭期の幻だと、いいんだけど。」

そんなリリーの呟きとともに、突如暗転。
さっきまでの狂騒などなかったかのように、世界は再び黒く染まる。


………

……いやー、文字起こししても意味わかりませんね(褒めてる)


振り切れたギャグ回ともとれる今作だけど、ちょっと真面目に怖いのはこれ、「(TRUMPシリーズ名物の)繭期のヴァンプが引き起こした悲劇」ではないことなんですよね。
雷山は人間。マルグリットも人間。生き血を流して狂喜乱舞するあまたの女たちも人間。
繭期のヴァンプは確かに襲い掛かってくるけど、それもマルグリットが金で籠絡した人間の仕業であり、つまりこの夜の狂乱はすべて人間が引き起こしたこと。かなりギルティ。TRUMP世界が歪んでいるのはヴァンプの、TRUMPのせいだけではない。もしかしたら黑世界オムニバスの中で一番えぐい話かも。

だって、あまりにも命が軽くないか?人間もヴァンプも。
「もっと殺して吸血種!」って言葉に、マルグリットも女たちも躊躇がないし。
「吸血種なんか殺したくはない!」とか言いつつ、雷山全然ノリノリで殺すし。
シリーズ他作品でよく見る「ヴァンプ狩りだぁああ!」って息巻く人間たちももう少しヴァンプの基本的人権(人権?)に関して想いを馳せることができるんでないの。
一見普通の人間からもたらされる歪な狂気は、時に物理的な恐怖も凌ぐ。
そりゃあリリーもちょっと引き気味に距離取りたくなりますわ…。
しかも雨下・日和通して、関わった人間とはそれなりに年単位で付き合う(場合によっては寿命まで一緒にいる)話が多いのに、たった一夜の出来事っていうところも異色感があっていい。最大瞬間風速が強すぎる。

あと、第3話と言えばアドリブ(日替わりネタ含む)。

前述のとおり池岡さんの遊びはとどまるところを知らず、tkb出してみたり、出さなかったり、両tkb出してみたり(文字にすると酷い)するわけですけど、このほかにもいろいろ。

日替わりネタとして、マルグリットが息絶えた後の「いや。まだなんだ」というセリフを色んなパターンで言って、それを鞘師リリーに復唱させる、というのがありまして。
鞘師ちゃんとは事前打ち合わせをしてない(たぶん)中、回を重ねるごとにムチャぶりになっていく。

・9月22日公演「まんだ…まんだ…まんだなんだ………(何の訛り)」
・10月3日公演「え~~、まだなんです~~、…雷山でした~~(古畑)」
・10月4日公演「まだ…まだでェす!ハハッ!ジャパァン!雷山でェす!!(ひろみGO)」

いや元モー娘。に何やらしてんねん。
鞘師ちゃんよく食らいついた!えらい!うちの推しがすみません!!
下手したら元ネタ知らないのもあっただろうに、恥ずかしそうに復唱する鞘師ちゃんホント推せる。かわいい。

もう一つ、中尾さんが勢いあまって暗い中に台本を落とし、「今、何ページ!?」と問い、雷山が「え、えぇっ!?…な、77ページだマルグリットぉおお!!」って叫ぶシーンが最高に良かったです。仕込みだったらしいけど。
あまりに自然な発声だったので最初仕込みだとわからなくて、「ピンチ切り抜けすぎwww」と抱腹絶倒だったのですが、のちに、稽古場から行われていた中尾さん発のアドリブだと知る。初回は池岡さんに予告もなかったらしい。
中尾さんの遊び心、池岡さんすら軽々超えててめちゃくちゃかっこいいな??さすがは大女優。もっと翻弄されたいです。

ちなみにリアルタイム視聴のときは付属のチャット機能で実況を見ながらだったんだけど、他の話では真面目な考察や鞘師ちゃんを称える声、展開のしんどさエモさに言及しているコメントが多い中、この第3話だけは
「3話来るぞ……」「カオスwwwwwwwww」「わけわからんwwwwwwwww」「昨日より格段にひどいwwww」「ペンラ振りたいwwww」
というコメントが殺到し、驚きの速さで実況欄を駆け抜けていたことは記録しておきたい。
実況コメント、ずっと治安が良くてとても楽しかった。

そろそろまとめよう。

求めろ・捧げろ・待っていろ。
とにかく回を重ねるごとに池岡さんが美しくそして様子がおかしくなっていくので、一瞬たりとも目が離せませんでした。ある意味この人が一番繭期。
完全に異常な人なのに圧倒的な美でぶん殴って黙らせてくるところもよかった。
推しが美しいのは昔から当然ですが、ここまで「美しさ!!!!!」を前面に押し出してきた役は今までなかったかも。(雷蔵ちゃんはカワイイ枠なのでちょっと別)

中屋敷さんありがとう。池岡亮介に夢を見てくれて本当にありがとう。
雷山ソロライブツアー開催待ってます。

 

④少女を映す鏡[作・末満健一]

<あらすじ>
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人の5倍の速度で年を取る吸血種の「少女」アイダ。
老女の姿となり余命いくばくもないアイダはリリーを鏡の中に閉じ込め、「本当のあたし」として話し相手にする。
やがてアイダの内面に恋をした少年の吸血種が現れるが、アイダはその想いに応えることなく寿命を迎える。
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また一編の詩のような美しい物語が来ましたよ…。
第3話から中尾ミエさんが続投し、見た目は老女、中身は少女の「アイダ」を演じるんだけど、第3話との温度差すごすぎて死ぬ。グッピーが死ぬ。

アイダは、不死のリリーとは真逆の存在。1年で5歳分年を取ってしまう。
今の年齢は15歳の繭期なのだけれど、見た目は75歳の老女なので、クランには行かず家に閉じこもっている。
本当ならリリーのような愛らしい容姿で恋をしていたかも、という願望が高じてリリーを鏡に幽閉し(サラッと閉じ込めてたけどどんな能力なんだ…)3年の間、「ねえ、あたし」と話し相手にする。

そんなアイダに「僕、君のことが好きなんだ…街で見かけた時から」という少年(演:大久保祥太郎)が現れる。少年は繭期の症状?で人の内面が見えるということなのかな。
少年は天真爛漫な好意を表しながらアイダのもとに通い詰めるが、恋を知りたかったはずのアイダは少年を拒み続ける。アイダは18歳(外見は90歳)になっていた。
ついさっきまで妖艶かつ狂気の老婦人を演じていた中尾ミエさんが、今作では本当に恋に怯える18歳の無垢な少女に見えてくるから不思議。
恋を恐れ、傷つくことを恐れたアイダは、とうとう少年の気持ちを受け入れることなく、眠るように寿命を迎える。

アイダの死の直前に鏡から解放されたリリーは「これが本当のアイダよ」と、少年にアイダの亡骸を引き合わせる。
少年はアイダの真の外見を見てもなお「やっぱり綺麗な人だったんだね。ボクは君のことが、好きだったんだ…」と嘆きにくれる。

静謐な雰囲気の中でアイダを悼むリリーの歌声が、本当に優しくて透明で哀しくて。

「恋を知りたいと願いながら恋を知らないまま
 恋を知りたいと願いながら恋を恐れたまま
 鏡はすべてを見ていた 少女の孤独を」

そしてナズェミテルンデス的に現れるシュカ様が言う。「狂ってしまえば楽だろうに!」
リリーは答える。「この胸の奥にあるのが悲しいという感情なら、わたしはそれを捨てたりはしないわ」

そう、リリーは悠久の孤独の中で、狂気に身を落としていなかった。
愛を、喜びを、悲しみを、忘れてはいなかった。

ここが切ないところなんですよね……クラウスの被害者的立場だった聡明なソフィが、長すぎる時を経てクラウスと同様の悲劇を再生産していることを考えると、リリーの在り方は気高くも感じるし、とはいえリリーの孤独は始まったばかり。単純にソフィと比べることはできないし、ソフィだって気高い生き方を選びたかったかもしれない。でも3000年の孤独がソフィをいざなった。連れて行ってしまった。
え、しんどすぎて無理……と思ったら案の定、脚本担当は末満さんでした。
そしてシュカが50年経っても年を取っていないということが6話の伏線になっている。


少年とともにアイダを埋葬し、リリーとチェリーは再び旅に出る。
神様が駆け足を命じた命と、神に祈っても終えることができない命。
リリーはアイダを羨んだのか、憐れんだのか。
少しの胸の痛みとともに、あくまでも優しく4話は幕を閉じます。

やっぱりこうしてみると、何だったんだ第3話…。

 


⑤馬車の日[作・降田天]
<あらすじ>
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ある雨の日にリリーが出会った「馬車の2人」貴婦人メイプル(演:樹里咲穂)とその従者シダ―(演:宮川浩)。
メイプルは繭期の息子ヘーゼルを溺愛しているが、実は無関係の少年をヘーゼルと思い込んでいるだけ。
実は従者シダーこそがヘーゼルであり、何年もの間、母が夢から醒めぬよう、少年たちをさらっては母に与えていたのだった。
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ミステリ作家の方が脚本を担当したと聞き大納得の第5話。
母と子の歪んだ愛情の物語でもあり、幸せな帰結の物語でもある。
導入は完全にホラーですけど……。

メイプルは、息子ヘーゼル(本当は無関係の少年)を溺愛し、束縛する。
やがてヘーゼルをクランに送り出す雨の日がやってくると、馬車に乗り、そこで記憶を取り戻す。
シダ―が少年を殺すとメイプルの記憶はリセット。また新しい「ヘーゼル」をあてがって、メイプルはずっと醒めない夢を繰り返す。

ある年の「ヘーゼル」として登場するのはまたも大久保祥太郎と池岡亮介ペア。
終始、メイプルに怯えた様子のヘーゼル。数年前に見た大久保ヘーゼルとは見た目も雰囲気も違う池岡ヘーゼル。何人目かわからない「ヘーゼル」を従者シダ―が撃ち殺し、目撃したリリーが捕らえられ、屋敷に連れ帰られてからがループの始まり。よく捕まるなあ、リリー。
森の奥の荒れ果てた屋敷でヘーゼルとして育てられ、馬車の日に殺され、またリセットして新しいヘーゼルになる。リリーもメイプルの狂気に取り込まれたのか、自分をヘーゼルだと思い込んでいるような描写もあり。
リリーが不死者だからこそ成立するループが見事。何回繰り返したんだろう。


捕らわれてからの生活を描いた歌パートが怪奇幻想の雰囲気あってすごくいい。
リリー、チェリー、メイプルの女声3人が綺麗。
メイプル役、宝塚出身の樹里咲穂さんがとても素敵です。歌、めっちゃ巧い。
「♪そして季節は廻った~」のビブラートで本当に季節がいくつも過ぎていったような風情と説得力がある。
この歌、リリーのビジュアル面がいちいちキマッてて見飽きない!手の動きが印象的な歌なんだけど、袖からこぼれる白い手の細さとか、関節どこ?な滑らかな所作とか、それから銃で撃たれて倒れてその姿勢のまま起き上がる流れるような美しさ(腹筋どうなってんの)、配信で何度も食い入るように見ちゃいました。

そして第2話では鬼灯親方を演じていた宮川さんがここでは息子役。
幼いころからヘーゼルを溺愛し、一方では自分の思う通りに厳しくしつける結構な毒親だったらしい(その感情は全然併存してしまうよね)メイプルのイニシアチブを繭期の頃に取って以来、ずっとメイプルの夢を覚ませずにおいている。
いったい何人の「ヘーゼル」を、どんな気持ちで撃ち殺してきたんだろう。
「夢の中に閉じ込めておくなんて残酷よ」とリリーに指摘されたとき、どんな思いだったんだろう。

毎年、馬車の日にヘーゼルが本物ではないことに気づいてきたメイプルは、ある年、予定より前に気づいてしまう。
リリーを撃ち殺そうとしたシダ―からリリーをかばい、銃弾に倒れるメイプル。シダ―が過ちに気づき悔い改めるのと、メイプルの息があるような描写があるので、この親子の余生が穏やかであるようにと願う。シダ―(本当のヘーゼル)がやったことは許されることではないけど、夢を見ている母が幸せそうで、それを守りたかったという動機は純粋だったんだろうな。

ガーベラとマリーゴールドの時も思ったけど、花言葉の使い方が上手い。
メイプル(楓)は「大切な思い出」、シダ―(シダ植物)は「夢」「誠実」、そしてヘーゼル(ハシバミ)は「真実」「和解」「調和」。
大切な思い出を捨てる必要はないけれど、夢から醒め、真実を受け入れ、和解できているといいね。

 

⑥枯れゆくウル[作・末満健一]
<あらすじ>
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シュカはかつてヴラド機関に所属していた。不死者リリーを拘束し、廃人になったリリーに非人道的な実験を繰り返すヴラド機関であったが、シュカはある時、リリーにまだ感情があることに気づく。
組織を裏切りリリーを逃がした後、シュカは不死薬「ウル」を自らに投与。その命を危険にさらしながら、残りの人生でリリーを見守り続けることを決めたのだった。
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雨下の章・最終章。
ここまでリリーを見守ってきた傍観者・シュカの過去と想いが明かされます。
そして「LILIUM」から「黑世界」に至るまでのリリーの空白も明らかになる。

これが壮絶で、「LILIUM」で不死者となったリリーはヴラド機関に捕らえられ、不死者であるがゆえに「実験」と称した非人道的な拷問が行われる。
毎日のように切り刻まれ、打ち砕かれ、すりつぶされ、引き裂かれ溶かされ、燃やされた。
どんなことをされても死ぬことがない代わりに、一切の反応を示さず廃人のようだったリリーに、ある日スノウフレークの花(!)を見せると、彼女は静かに涙を流す。

感情を持ったまま凄惨な仕打ちに数十年間も耐えてきたことを知ったシュカは彼女を逃がし、自らも不死薬「ウル」(「LILIUM」で出てきたまさにアレ)を服用。体がちぎれるような苦しみを味わい、不死者にはなれないものの長命を得たシュカは、リリーの長い旅にそっと寄り添い、傍観し、見届ける道を選ぶ。そしてとうとう「ウル」が尽き、今わの際にリリーと静かに向き合う…そんなお話。

まぎれもなく「LILIUM」の続編であり、これだけで1本舞台が作れてしまいそうな切ない物語でした。
まず不死者になった直後のリリーの顛末が壮絶すぎる。すりつぶされって。
リリーが受けた仕打ちを考えると、リリーの中に別人格のチェリーが誕生したことも納得がいってしまう。そうでもしなければ壊れてしまった。物語中でもリリーが割と常識的なふるまい担当、チェリーが毒舌担当っていうのも、チェリーがリリーの押し込めた本音を代弁する存在だからなのかな。逆にリリーが繭期こじらせてるときはチェリーが正気だったりするし。

マルグリットとはまた趣の違うリリー強火担(言い方)として、彼女の人生に責任を持ち、見守り、寿命尽きるまで見届けたシュカ。
「まるでリリウムの花のようにそれは美しい孤独だ」と切々と歌うシュカの声が祈りのようで。
確実に死の足音が近づいている中、シュカとリリーの2人きり、穏やかで静謐な時間。なぜかチェリーは現れない。デュエットの美しさに浸ってしまいました。
「君にとっては瞬きのような時間だっただろうが、僕にとってこの100年は永遠だった」と言い、100年分の老いを一気に引き受けたシュカは、まさに枯れるように息を引き取る。

リリーが「私はソフィじゃない」と言い、シュカが「僕はウルだった」と言うのも切ない。ソフィとウル。望まない永遠を生きる者と、永遠に焦がれても手に入れられない者。見送る者と、先に逝く者。
リリーがずっと純潔で、ソフィのようにならないと抗いながら、でもソフィにとってのウルのように、シュカが心に残り続けるのかな。願わくばそれは失った哀しみではなく、愛された記憶であってほしい。
純潔と言えば、「リリー(百合)」も「スノウ(スノウフレーク=鈴蘭水仙)」も「チェリー(桜)」も花言葉が「純潔」なのすごく…エモいよね…(語彙)。やはり君は僕で僕は君なのか…そうか…。

シリーズの核である「ウル」の名を冠した薬が、シュカの命とともに尽きたという事実は、一つの物語が終焉したことも示します。
雨ばかり降っていたあのクランの物語はこの「雨下の章」で一旦終わり、一筋の光が差し込むような「日和の章」に続いていく。
「日和の章」の感想もちゃんとまとまって書きたかったけど、とりあえずここでこのレポも一区切りします。長かったですね。


●エンディング
ラスト、エンディング曲のワルツ(かな?12/8拍子かも)を全員で歌い上げるところは鳥肌。
他キャストの太い歌声にリリーの繊細な高音が乗るところは何度でも聞きたい。
黑世界の曲は歌詞付もインストゥルメンタルももれなく全部良いのですが、このエンディング曲は特に世界観ぴったり。
ラストの全員のハモリにかぶせて、レクイエムみたいに鳴る重い鐘のような音が好きすぎる。

 

▼まとめ(られない)

本当に、今の時代にこの舞台を見ることができてよかった。
コロナで何もかもできなくなってしまった、楽しみがなくなってしまった、と嘆いているのは私たちばかりで、クリエイターの皆さんは何もあきらめていなかった。
舞台は、エンタメは、負けないよ。先に行って待ってるよ。と力強く言ってもらえた気がして、こちらの背筋も伸びました。
想像を絶する制約の中、懐かしくて新しい、美しくて孤独なTRUMPの世界を届けてくれて本当に感謝です。ありがとうございました。

池岡さんを8年越しで起用してくださったのはどなたにお礼を言えばいいですか?
改めては書かないけど、8年たっても未だにD2メンバーの心に刺さった棘(いい意味)であり続けるTRUMPシリーズ。すべての始まりとも言ってよいTRUTH、REVERSEに出演したD2メンバーを大事にしてくれているのは本当にありがたいです。
しかも今回はあんな濃ゆいキャラクター。初めて彼を見た方にも強烈なインパクトを残したことでしょう。いつかまた出演させてもらえるといいな。

あと、日和の章。
どうしても推しが出演している関係でレポが雨下に偏ってしまったけど、個人的には日和も同じくらい、いやお話の好みとしては上かもしれない。特に「青い薔薇の教会」が好き。
日和はリリーの内面をより深掘りしているのも良いし、とにかく朴路美さんの演技が素晴らしいの一言なので、シリーズを知らない人にも見てほしいくらいです。5歳から130歳まで演じる朴さんと、ずっと変わらないリリーとの心の交流。リリーを支えてくれる温かい思い出が確かにあるという事実が、黒い世界にほんの少しの希望を差す。

雨下と日和、通して見ると、リリーの行く先に幸せあれと願わずにはいられないです。
シュカが言うように、狂ってしまえば楽なのにそうしていないリリー。
家族のような存在に出会い、愛され、愛を与えたリリー。
ソフィのようにはならないと決意したリリーだけれど、そうならない保証はどこにもなくて。
「この両の手が死に届くまで」と両手を天に上げるノルマ(クラウスもソフィもやっていたね)こなしてしまったので大変に不安。

いつかは完結する(いつかはするよね?)TRUMPシリーズで、ソフィとリリーと、そしてクラウスがどんな結末を迎えるのか、見届けたい気持ちはありますが、その前に地獄の煮凝りみたいなもの(困ったことにこれが極上に旨い)を延々とお出しされるのはわかりきっているので怖すぎますね………。


リリーのあてどもない旅。
いつか終わりが訪れますように。
いつの日か愛しき最期が訪れますように。

リーディングドラマ『5 years after』感想レポ

配信してくれてありがとう!!!
ありがとう運営!!!!!!!!

 

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▼公演概要
作・演出:堤泰之
​プロデューサー:難波利幸
キャスト:納谷健​(11/1-15)、​杉江大志​(11/1-15)、​池岡亮介(11/1-8)、​長江崚行(11/10-15)
公演期間:令和2年11月1日(日)~15日(日)
会  場:赤坂RED/THEATER

▼公式サイト
https://no4stage.wixsite.com/5yearsafter

▼作品概要(公式HPより引用)
3名の役者による朗読劇『5years after』本編60分 + 3名の役者によるアフタートーク『3actors talk』30分の計90分!

■本編『5 years after』(ファイブ・イヤーズ・アフター)
三章に分かれていて、第一章では20歳、第二章では25歳、第三章では30歳の水川啓人(みずかわけいと)が登場します。
3名の男優がA役、B役、C役を演じ、A役は20歳の、B役は25歳の、C役は30歳の水川啓人を演じます。水川啓人を演じない時の2名の男優は老若男女さまざまな役柄20役を演じ分けます。つまり、全部で60役!それぞれの章で水川啓人が浮かび上がり抱腹絶倒の中で涙を誘います。

ABCの3役は公演ごとで演じる役が変わってきますので、各キャストが同じ役を演じる違いもお楽しみください!

■アフタートーク『3actors talk』(スリー・アクターズ・トーク
本編が毎回役替わりで演じるため、その日に演じた役柄の印象や役作りの裏話、そしてこれまで役者としてどうスタートを切り、どう生きてきたか、本編のテーマであるこれからの『夢』とは?
お客様の質問もいただきそれにもお答えしつつ、3名の役者がそれぞれの本音や思いを語ります。
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あけましておめでとうございます。柚子です。

なんか思ってたのと大幅に違った2020年だったけど、越しましたね。
みんな、日々を健気に過ごしてきて本当にえらいぞ。
生きて元気に新年を迎えられたからそれだけで勝ち。
皆さんに心から幸あれ。

さて、リーディングドラマ『5 years after』。
舞台「黑世界」公演中に池岡さんの出演が発表され、当時配信で絶賛雷山(※)フィーバーだった私は沸きました。

(※)雷山=黑世界でとにかくフィーバーだった池岡さんの役。

とはいえ。
舞台の有料オンライン配信が定着してきた昨今とはいえ、どの舞台も必ず配信をしてくれるわけではありません。
この舞台に関しては、小規模な劇場での朗読劇であり、上演が始まっても特にアナウンスがなかったため、半ばあきらめていました。
だからこそ、上演終了後、「配信決定!」の報が出た時は本当にうれしかった。

1年前の今頃までは頻繁に出かけていた東京。
池岡さんの舞台があるとなれば、仕事を調整して自分なりの最大の回数で出かけていた劇場の数々。
電車に飛び乗れば物理的にはいつでも行けるのに、スケジュールだって合うのに、こんなにも舞台の内容に思いを馳せているのに、こんなにも遠い。

劇場の座席を埋める黒い頭の一つになれない、直接拍手を響かせられないというのは本当につらいです。
大切な推しとその周辺の方が感染することのないようにと祈りながら、劇場への未練を断ち切れないでいます。
悔しくても泣くんじゃねえ!失っても失っても生きていくしかない!と私の中の伊之助と炭治郎が励ましてくれるけどなかなか諦めきれない。長女だけど我慢できない。

だから、画面越しであっても舞台風景が見られるというのは僥倖です。
運営さんありがとう!そしてありがとう!!
運営さんたちがこれから卵割るたびに黄身が2個入ってますように!!電車に乗ったときに必ず1席空きがありますように!

 

<全体の感想>

▼1人60役…?

舞台上はいたってシンプル。
3つの椅子がソーシャルディスタンスよろしくちょこんちょこんちょこんと並ぶ。
演出もミニマムで、BGMはさりげなく、照明の明暗も最小限。
ただただ、そこに役者が座る。
台本を両手に持ち、視線を落とす。

直前に観た「朗読劇」が、歌って踊れるモーションリーディング(※前述「黑世界」。そのうちレポ上げます)だったので、そんなお芝居のありように、

「お…お!…これこそが……朗読劇……」

ってベルばら顔で謎の感慨を抱く。

その代わりとでもいうのか、この舞台は「1人60役」。

作品概要にもあるとおり、3人の役者にはそれぞれA役、B役、C役が割り当てられ、A役は20歳の、B役は25歳の、C役は30歳の主人公を演じる。
主人公を演じない時の2名は、それぞれ20役を演じ分ける。
そしてABCの組み合わせは公演ごとに代わる!

…え?なんて?もう一回説明してもらえます?
と最初は思いましたさすがに。

例えば、第2章で池岡さんが演じる役だけでこう。

2.オタクっぽい男
3.夢見るバーテンダー
4.IT社長
5.クールな社員
6.舌っ足らずな社員
7.アプリの声
8.武田(大学の友達)
9.みう
10.正隆(父)
11.謎の爺さん


………多い。

つまり、場面が大きく3つに分かれていて、1つの場面では主人公を。
ほか2つの場面では、主人公以外の役割を20種類ずつ演じると。
で、その組み合わせは、公演ごとにシャッフルになると。

実際に見てみると、出番がほんの5秒くらいのキャラもいて、でも(濃淡はあるにせよ)キャラづくりをしなければただのセリフとして埋もれてしまうわけで、これはすごく大変な作業。
セリフを覚える必要はない「朗読劇スタイル」を逆手に取った、むしろ朗読劇スタイルでなくてはできない、なんともチャレンジングな手法。
会話のテンポがジェットコースターのように速く、くるくると変わる場面展開。演じる3人には、餅つき職人みたいな間合いの合わせ方が求められる。

例えば、5人の人物が侃々諤々の丁丁発止で会議してる様を3人だけで表現する、なんてシーンが存在する。
(主人公/熱血社員のMさん/感情を全く表に出さないクールなDくん/パンツスーツの似合う姉御肌のAさん/舌っ足らずで子供っぽいSちゃん)

いやこれ完全に高速餅つきじゃん…誰かが手を止めたら大事故じゃん…すご…
と思ったら、配信版の一つではなんと池岡さんが思いっきりやらかしてた!
な、なんと1役ずれてセリフを読んでしまった!
杉江君の手の甲に振り下ろされる光速の杵!!!
さてどうする!!!

でも、どんなときでもショウはマストゴーオン。
とっさに1つ前の役に戻って軌道修正してました。杉江君が。
ハプニングもドライヴ感でねじ伏せてしまう、これこそライブ、これこそ芸。すごいぞ杉江君。
こういったことも舞台の魅力でもあると思うのです。
なお、この件についてアフタートークで謝り倒している池岡さんがとても可愛かったです。最高にオイシイけど、ミスはミスだからね(笑

主人公のお母さんが包み込むようなやさしさで一貫しているのだけど、この表現の仕方もそれぞれの個性が出ていてよかった。
おずおずと遠慮がちだけどまなざしは揺らがない納谷さん、肝っ玉かあさん風の杉江さん、ただただ優しく癒してくれる池岡さん、という感じ。

あと、人気のコーナー(コーナー?)らしい、25歳の啓人が並行して交際する(要は二股)2人の女性が出てくるシーン。
年上でクール系の「真希」と、年下でかわいい系の「みう」。
池岡さんは真希さんが大好きで、真希さんを演じる回はひそかにテンションが上がるとインスタライブでも言っていたとおり、あーーーーーこういう女性好きですよね!!!って全開で言いたくなる感じでした。「だって私、あなたの藪から棒が好きなんだもの」「あなたとせっかちしたいの!」次々飛び出すギリギリのワードセンス。
もう一人のみうちゃんはね、いくら年下の可愛い系でもね、「ねー啓人ー!みうのことちゅきー?わーいわーい!」はやりすぎじゃないか?どう役作りしろと…(でもみんなしている、えらい)(杉江君のみうはもはや宇宙人かと思ったよ)


▼主人公:水川啓人という男

主人公は、実に平平凡凡な男。
人より優れた才能があるわけでもなく、とびぬけて優しいわけでも、正義感が強いわけでも、夢に対するこだわりもない。
ただ、ただ、大学の学食でみんなが安くて豪華なAランチを食べているときに、自分が食べたいラーメンを食べるタイプの男だったというだけ。
それだけで運命を引き寄せて、そして手放した男。

何なら身の丈に合わない生活をして調子に乗るし、他人のことを見下すし、調子づいて田舎の両親に暴言吐いたりもする。そこに直れ、と言いたくなるシーンもあるけれど、でも自分に思い当たるところもある。
毒にも薬にもならない、共感できるところばかりではない、それが至って普通の人間ということなんですかね。

若くまぶしい夢を見て挫折した20歳。
成功しつかの間の享楽に溺れた25歳。
全てを失って故郷の愛に気づく30歳。

人生にはいい時も悪い時もあって、でもトータルだと結構満足かもね、と。
運命に翻弄されてどうにもならないことも、自業自得のこともあるけれど、心持次第で全部引き受けて楽しむことはできるんじゃないか。

そうしてふっと気が付けば、故郷は変わらずに見守ってくれている。
この情勢下、等身大でなんだかホッとするところのある筋書でした。


▼アフタートークも本編。

本編1時間が終わったらアフタートーク30分。二つ合わせて一つの作品。
製作の難波さんが進行役で、俳優3人が自然体で稽古のエピソードや役作りについて語ってくれる。

言葉の引き出しが多くて的確に笑いの定石を踏んでくる納谷さん、
リアクションの駆け引きが絶妙で場の空気を支配する杉江さん、
静かと見せかけて変態的なこだわりを隠し持ち、必殺の一撃を放つ池岡さん。

三者三様の俳優陣の丸裸トーク
これは永遠に見てられますね。
大阪出身の納谷さん、滋賀出身の杉江さんに挟まれて、池岡さんがところどころ関西弁移ってるのがほほえましすぎる。あなた生粋の愛知県人でしょうが。


▼ちょっとだけ引っかかったところ。

私自身が年々そういうものに抵抗感が強くなってきたせいか、必要以上に容姿を強調して揶揄する(顔面神経痛の方の仕草を基に爆笑アプリ作っちゃうとことか、「ドデブでドブス」とか)場面は全く笑えなかったな…。
読み解けなかった意味があるのかもしれないけど、ただの「笑えるシーン」として作っていたとしたら少し嫌だな、合わないなと思ったことは書いておくよ…。

 

<それぞれの役者さんについて>

【納谷健さん​】
舞台「刀剣乱舞」の小夜左文字役として界隈ではお名前をよく聞いていて、演技力のすごい人だ!程度の認識はもともとあったのだけど、演技そのものに触れるのは今回が初。「もっと早く知っておけばよかった」と思うほど、他の役の演技にも興味をそそられる役者さん。
関西版D-BOYSと呼ばれる劇団Patchのメンバーでもある。

とにかく声が深くていい。腹の底から声が出る、舞台のお芝居の人、という印象を初見から持つ。
といっても、がなり立てるとかではなく、空気の振動を心地よいい波形にするツボを心得ているという感じ。画面越しでも伝わる太い音の形。
全身を使って豪胆なお芝居をしたかと思えば、包み込むような繊細な空気に一瞬で切り替えたりもしていて、コントロールの緻密さにとにかく唸る。

そういえば、コロナのせいでほとんどの公演が中止になった「十二夜」ではオリヴィアを演じてらしたんだよね…女性の演技の柔らかさを見るにそちらも是非見てみたかった。池岡さんと新旧オリヴィアで共演と思うとまたエモーショナル。

演技もいいけど、何せフリートークがうますぎる。トークも本編との触れ込みは伊達じゃない。何を言ってもすべらない、ここぞというときにきちんとオチをつけてくる。何なんだ関西出身。


【​杉江大志さん】
テニミュ四天宝寺戦はずいぶん通ったものだなあ…杉江君の一氏ユウジ可愛くて天使だったわあ…あれももう7年も前か……なんて感慨に浸ったのもつかの間、演技の瞬発力と疾走感に度肝を抜かれる。
ラフで自然体なんだけど、ふいに刺してくるような殺気もあり、そうかと思うと貫禄もあり。

おでん屋さんと串カツ屋さんドスの聞いた声のターンは必聴。(ここだけ聞くとわけわかんないと思いますが)
観てもいないのに、杉江君が王(ワン)社長を演じるパターン、なんか一番エセ中国人の演技うまそうだな!?と思ったんだけど、それも当然、だって中国そのものの役やってたもんね…(※ヘタリア)。あっちの名前もワンだし。観てみたかった、間接クロスオーバー。
あととにかくお顔が小さい。声大きいのに顔は小さい。

そしてこちらもトークうますぎか。何なの関西出身(2回目)。


池岡亮介さん】
我らが池岡亮介さん。何度も言うけど、ただでさえ独特な世界観の「黑世界」でも屈指のぶっ飛びキャラを直前まで演じていたのに、この作品では平凡な感覚の一般人を演じている、その切り替えの速さに驚嘆する。稽古らしい稽古は何回もなかったらしいけど。

池岡さんの好みど真ん中らしい年上のエロクール女性「真希」の演技の時はノリノリでほっこりするし、どうしてもケツの穴から手を突っ込んでガタガタ言わせたい下品なヤクザ役もコミカルで可愛かった。
それから30歳の啓人がお母さんと泣きながら話すところ、押さえきれない慕わしさと幼い甘えが出ていてよかったなあ。ゆったりマグマがたまっていくような、ふつふつとした感情を表現させるとうまいんですよね…。「父さん、母さん、元気でいてね。俺は大丈夫だから」。やさしさと切なさと力強さと。対面では厳しく当たっている息子を地元では自慢の息子って言ってるオヤジ、昭和のオヤジとして100点なので泣いてしまう。

逆に、啓人と最後に電話するお母さん役のターンも、癒すような優しさがにじんでいて良い。本当に杉江君のお母さんなのでは?産んだのでは?さっきまでケツの穴から手を突っ込んでガタガタ言わせたがってた人とは思えない。
毎晩あの声で「おやすみ」って言われてお布団かけてほしい。(そういえばいけおかあさんってありましたね。)

アフタートークでは、インスタライブで鍛えたギリギリのワードセンスが光る発言も楽しかった。どうやらここでも性へk……、フェt……、ええと、スク水ネタぶっこんでたらしいですね?(噂)
関西出身2人の怒涛の笑いの勢いにやや押され気味ながら、同じステージでは勝負せず、淡々と独自目線で笑いを取りに来ていたのがよかった。
同じステージで勝負したらそこはかとなくエガちゃんになっちゃうんだもの。

そして画面越しでも顔がよかった。
推しの顔を高画質で見られて本当によかった。
池岡さん、年齢を重ねて(と言ってもまだ27歳だけど)、ますます美しくなっているの気のせいじゃないと思う。10代の頃の尖ったセクシーさも素敵だったけれど、今の包容力と少しの憂いから匂い立つ色気も素晴らしい。
「黑世界」の雷山役はその色気が花火になってド派手に打ちあがったけど、この朗読劇では小さな花のようにひっそりと咲いていて、目が離せませんでした。


<まとめ>

冒頭でプロデューサーの難波氏が前説をやってくれるんだけど、この状況下でも来ていただいて…って何度も言っていて演劇業界のご労苦が忍ばれるし、「心の掛け金を外して、マスク越しでも大きな声で笑っていただいて」っていう投げかけすごくいいよね。
板の上に役者が乗り、始まりを告げるBGM、あっという間の本編、暗転して拍手。
以前は当たり前だったその光景が、画面の向こうにはちゃんとある。
エンタメは大丈夫。ずっとここにいるよ。いつでも待ってるよ。
そんなメッセージも感じて胸が温かくなりました。

実は池岡さんは今回前半だけの出演で、後半は長江崚行さんにバトンタッチ。
その後、キャスト入れ替えで別バージョンの公演が決定したりして、このやり方なら無限に続けることができる作品ですね。
(それぞれのキャストの頭文字を取って、「~N-S-I~」「~J-T-N~」とかって名前が後からついたらしい)
いろんな形でロングラン公演してほしいし、いろんなキャストの組み合わせで見てみたいな。
そしてまた池岡さんにも含めて再演してほしい。
それまでに東京に行けるようになって、いればいいな。

改めて、いろいろと大変な中、映像配信を決めてくださった運営さん、心からありがとうございました。
このご時世、無事に幕が上がって無事に下りるというただそれだけのことが、どれだけの砕心の上に成り立っていることなのか、察するに余りあります。
払えるお金はすべて払います(それでしか感謝が示せない)(納めてください小銭ですが)
あ、あと、キャストブロマイド20種類は最高でした。
惜しむらくはあと80枚あってもよかった。


いい年になるといいね、2021。
池岡さん、今年もよろしくお願いします。
昨年始めたインスタライブで見せてくれるいろんな顔が大好きです。
そして今月14日から開幕の舞台「熱海殺人事件」のご成功、心よりお祈りします。

残酷歌劇「ライチ☆光クラブ」 感想レポ

こんにちは!
このコロナ禍中真っ只中に池岡さんが始めてくれたインスタライブに、毎回酒を飲みながら1人しみじみ泣いているオタクです。
もうね。
このインスタライブなるものが本当に、すごくて。

100年恋した推しの顔と声を堪能しながら、
推しのことが大好きなファンの方々と一緒に、
快適な自宅で酒と少々のつまみを嗜み、
近況・昔話・裏話に花が咲き、歌や絵も飛び出す空間。

ぴえん🥺
こんなにたくさんもらってよいのでしょうか。
今、応援するために具体的に何もできていないのに。
元気に過ごしていることがわかるだけでも嬉しいのに。十分なのに。
あー顔がいいな。声がいいな。美味しそうにお酒を飲む笑顔がいいな。
言葉の端々から、この人の誠実さが伝わるな。
つーか酒めっちゃ強いな。
と、感情全振りで泣いたり笑ったりしながら配信を楽しみに日々生きています。

昨日はなんと、伝説の朝まで6次会をさらに上回る7次会(7時間配信)。
いま試されるオタクの体力。
財布を試されるよりある意味きついけど、一分たりとも見逃したくないから何とか食らいついていきます。
この人を推していてよかったと今、多幸感でいっぱいです。
決して寝不足でハイなわけではないですハイ。

そんな感じの昨今。
前回ブログでも書いたように、一時期停滞していた観劇レポを最近また書き始めています。
どんなに拙くとも、自分の言葉でアウトプットしておくことはすごく大事だなと思ったので。
考察などという高次元のものはとてもできませんが、初見で見た時のワクワク感とか、
俳優さんたちへの憧れとか、池岡さんを食い入るように目で追った熱量とか、そういうものを残しておきたいです。
推しは推せるときに推す。今の自分のために。
推した記録は鮮明に残す。未来の自分のために。

前置きが長くなりました。

今回はあれです。ライチです。泣く子も黙るライチ☆光クラブ」です。
2015年に書きかけていたメモが半分くらい、加筆半分くらいで作ってみました。
レポを書くために久しぶりにDVDを見返して、映像美の凄さに改めて感動するなどしました。

では、時をかけたレポ、いってみよう!


▼公演概要
原作:古屋兎丸
演出:河原雅彦
パフォーマンス演出:牧宗孝(東京ゲゲゲイ)
脚本:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し
出演:中村倫也、玉置玲央、吉川純広、尾上寛之、池岡亮介、赤澤燈、味方良介、加藤諒
   BOW、MARIE、MIKU、YUYU(以上、東京ゲゲゲイ)/KUMI(KUCHIBILL)
   皇希、七木奏音
公演期間:平成27年12月18日(金)~12月27日(日)
会場:AiiA 2.5 Theater Tokyo


▼あらすじ(公式パンフレットより)
工場からの黒い煙に覆われた光のない町、螢光町。その廃墟に深夜、けたたましい笛の音と狂気をはらんだドイツ語の怒声が響き渡る。
そこは学生服に身を包んだ少年たちが集う秘密基地「光クラブ」。
彼らは夜な夜な「ある崇高な目的」のために「甘美なる機械(マシン)・ライチ」を創っていた。
1年半の歳月をかけ、いよいよ機械(マシン)の軌道を目前に控えたある日、光クラブに帝王として君臨するゼラは、
祝杯を上げる彼らにこう言った――。
「この中に、僕を裏切る者がいる・・・」
迎えたライチの完成、そのライチに捕らわれてきた美しい少女カノンと光クラブメンバーそれぞれの思惑。
幼さ故の狂気と愚かしさが絡み合い、少しずつ彼らの歯車が狂い始めていく!
彼らの「崇高なる目的」とは?そして、光クラブの少年たちの運命は・・!?
彼らが待ち望んだ機械(マシン)・ライチの目覚めとともに、耽美かつ醜悪な、そして純粋な残酷劇(グランギニョル)が幕を開ける――。

 

▼全体の感想

クリスマスに血まみれの舞台を見てきました\(^o^)/
ライチラライチララライチ!!


ライチ☆光クラブ」。
前身の「ライチ光クラブ」が演劇史に登場するのは実に昭和60年のこと。
「東京グランギニョル」というサブカルチャー劇団が上演したのが始まりとのことです。
その舞台に感銘を受けた漫画家の古屋兎丸氏がコミックス化、その後2回の舞台化と、実写映画化がなされています。
既存のジャンルに当てはめることが失礼な気がするくらい、「ジャンル=ライチ」と表現したくなるくらい、強烈な個性があり、役者さんの間でも人気の高い舞台です。
(なお、初演当時の劇団メンバーは、古屋版以降のライチを「全くの別物」と評価するなど、経緯はさまざまあるようですが)

今回の舞台は、古屋版「ライチ☆光クラブ」と、その前日譚である「ぼくらの☆ひかりクラブ」をミックスさせた構成でした。

ストーリー展開についてはあまたの感想ブログがあると思うので割愛しますが、
<ずっと純情な少年でいたい主人公ゼラが>
<仲間と共に何年もかけて夢のロボット・ライチを作り上げ>
<運命の少女カノンの手を取り、世界を夢見るお話し>
です。

……え。あながち間違ってないな。

ちなみに、スパイスとして、血と臓物と猜疑と嫉妬と裏切りと美しいエロがほんのりまぶされています。
小道具として白くてやわらかな曲線の便器がいい味を出しています。嘘じゃないです。

少年たちの愚かで残酷で純粋で美しいグランギニョル。リアリティとは対照的で、でもファンタジーでもなくて。
見てはいけない世界を覗いてしまったような高揚と憧憬と畏れにどっぷり浸れます。
ねえなんでこれクリスマスにやったの。

とにかく世界観が素晴らしい。
衣装、メイク、照明、演出、随所に挟まれるダンス、どれをとっても「ライチ☆」でしかなく、他の何物でもない。
すでに圧倒的な世界観が完成しているところに、演技演出の華やかさが加わって、隙がなかった。

私自身は他媒体については古屋版漫画のみ履修なので比較はできないのですが、他の舞台や実写映画との大きな差は、
「残酷“歌劇”」というだけあって「歌」要素でしょうか。
でも無理やりなミュージカル感はなく、ストーリーを邪魔しない程度のバランスでちょうどよかった。

キャストの皆さんはみんな、再現度と完成度が高いたかーい!
キャスティングした人は職人かな?誰ひとりが抜けても成立しないと思えるほどに「光クラブ」としてまとまっていました。
冒頭、「ライチ・光クラブ」と機械音声が流れ、一糸乱れぬダンスとともに光クラブメンバーの姿が暗闇から浮かび上がってきます。
1分に満たないダンスなのに、その様は一度見たら絶対に忘れない印象的なもの。
指先一本、髪の毛一本まで神経が行き届いているかのような。
あたかも「光クラブ」が1つの意思のある生命体であるような。
そして玉座からゼラが音もなく立ち上がり、まばたきする仕草だけで鳥肌が立ちます。
正真正銘、そこにゼラがいる。目をそらしたら喉元を掻き切られる。そんなイメージが湧くほどです。

本当に暗い廃工場基地の中にいるような、古い機械油の臭いが漂ってきそうなセットも大迫力。
外の世界の、大人たちの干渉をなぜか一切受けない閉鎖的な空間。飲み込まれたら戻れない危うい世界。
縦にも長くて、役者さんの動きが立体的です。
神出鬼没に舞台上を蠢く「東京ゲゲゲイ」のダンサーさんたちも不可欠なスパイスで。
セットについて言えば、クライマックスシーンがとにかくすごかったです。

あふれかえる水、水、水。

埋立地にある基地が崩れかけて浸水が始まる中、ゼラとタミヤが対決するシーン。
最前列の観客には水除けのビニールが配布される(!)くらい、大量の水が洪水のように押し寄せ、客席にもしぶきが跳ぶようなダイナミックスプラッシュ。
途中で血糊が混じるのでさらに危険。よくこの演出GOが出たな…。
ゼラとタミヤの対決は、何かを必死に歌っているんだけど横溢する水流にかき消されて、歌詞はほとんどわからないほどです。
カーテンコールであんなびっしょんびっしょんたぷんたぷんになってる板ある?
今は亡きAiiAシアター…お前やればできる奴だったんだな…と思わず涙腺が緩みます。
(※会場であるAiiA 2.5Theaterは「2.5次元ミュージカル専用劇場」として運用され、数々の人気作品が上演されましたが、設備面で評判があまり良くなかった。
  東京オリンピック開催に絡み、2018年に閉館となりました。)

 

▼個々の役者さんについて

★廃墟の帝王 ゼラ ≪演:中村倫也
・ただの本物。ゼラ様・マジ・ゼラ様。
・鴉の濡羽色の髪も、白い肌も、涼やかな目元も、真っ赤な唇も、天鵞絨のような声も、すべてが超越していて美しい。
・この人のためにチケット代払ったと思っても後悔しないくらい、絶対的ゼラ様。ゼラ様に見惚れて2時間過ごすこともできますきっと。
・目線が右から左に流れるだけで釘付け。許されるなら私も玉座を囲んで「ゼラ!ゼラ!ゼラ!ゼラ!」ってやりたい。
・漫画に魔法がかけられて具現化したかのようなビジュアルの再現度もさることながら、冒頭の完璧な独裁者の姿と、徐々に狂人になっていく落差の表現がすごかった。
・尖りすぎた選民意識と歪んだ妄執と被害妄想。「ぼくの考えたさいきょうのロボット」と「美しい女の子」があれば、やがて「世界を征服」することもできると信じているあたり、たぶん最初から狂っているのですが、本当に万能の帝王のようだった前半から、どんどん思考のまとまりがなくなり幼くなっていく後半の変貌はショッキングで、それでも蠱惑的に狂おしく美しいのです。
・ジャイボとのBLシーンもひたすら美しかった。いやらしくなかった。いや、いやらしくはあったな。でも下品な感じじゃなくてお耽美。JUNE的薔薇的お耽美。
・出演者全員に言えることだけど、半袖シャツ・サスペンダー半ズボン・白ハイソ・ランドセル姿で歌う中村倫也なんて誰が許可したんだ。勲章を授けたい。
・半ズボンの小学生から中学生になったところで彼はまだ13歳なのであった。これには手塚国光もびっくり。
・腕がもげても大量の返り血を浴びてもヒャヒャヒャと笑いながら元気にズンチャッチャ。それが2015年12月に最も美しく絵になったのが中村倫也さんだったんだろう。
・2020年現在、テレビでも超売れっ子、ディズニー主人公の吹き替えまでこなす中村さん。でもそれも当然、とっくに彼は満を持して世界に降臨していたのだった…なんて思うくらい、この時のゼラ様は圧倒的でした。


★1番(アインツ) ニコ ≪演:尾上寛之≫
・ゼラに心酔し、ゼラのためなら何だってする忠誠の騎士。
・貧しく凡庸で何も持っていないけれど、誰かに必要とされたかったニコ。貫いたのはひたすらの忠義で、それすらもゼラにとっては「フーン」程度だったのが悲しすぎる。忠義のために目玉を麻酔なしでくりぬくシーンは本当に!!痛そう!!あまりの迫真の演技に、思わず客席からもうめき声が。
・あのままタミヤと友だちでいて、みんなで草野球でもしてればよかったのに……としんみりしていたら、最後の最後で彼自身がゼラを最も醜悪な方法で葬ってしまう。かわいさ余って憎さ百万倍。このシーンは最初素でびっくりしたし、2回目以降は楽しみになった。あんな痛快な因果応報があるか(麻痺)


★2番(ツヴァイ) 雷蔵 ≪演:池岡亮介
池岡亮介定点カメラでお送りします※
・かわいいかわいい我らが暗闇の乙女・雷蔵ちゃんです。
・外ハネの髪、真っ赤な唇とネイル(自分で塗っているらしい)、内股スタイル。「どきんこ☆」。
・ジャイボとシンメのシーンが目の保養です。ジャイボはホラーに出てくる美少年みたいな底の知れないゾクゾクする美しさなんだけど、雷蔵ちゃんは根がおばかな年相応の子なので見ていて癒しでした。ちゃんと人間の父親と人間の母親から生まれてきた感ある(私はジャイボをなんだと)。むしろ雷蔵が何かしゃべるたびに客席がホッとなごむ。この舞台の癒し要素は雷蔵ヤコブしかいないから…まじで…。
・池岡雷蔵ちゃん、ものすごくキュートで、所作もどこを切っても女子なんだけど、オトコノコが無理してやっているオンナノコ感も絶妙に醸していて安心感がありました。ここも、ジャイボと好対照。家族の目を盗んで一生懸命お化粧を覚えて、可愛く見えるしぐさも雑誌とか見て研究したんだろうな。
・「ちょっと男子どいて!」「はあー、綺麗な髪ねー」の声が野太い。一瞬海堂が顔を出す。なぜ。
・祝え!池岡さんの演技遍歴にまた一つあらたな性別のグラデが加わった瞬間である!と思わずウォズ顔待ったなし。振り返れば年上の男性に恋心を抱く少年イケオカ(ポールダンシングボーイ☆ず)、正真正銘の女子・オリヴィア(十二夜)、濃厚なゲイを経てトランスジェンダー(たぶん)な花村牛松(ロマンス2015)、そして「女の子として生きている男の子」雷蔵。鮮やかに演じ分けるのも、演劇ならでは。
・半袖シャツ・サスペンダー半ズボン・白ハイソ・ランドセル姿で歌う池岡亮介なんて誰が許可したんだ(二度目)。半ズボンの丈が完璧。美脚の線が最高に映える。演出のひとに有り金全部振り込みたいので口座番号教えてください。今なら特別定額給付金もつけられる。
・「いやよ!せめて顔だけは!!」と言いながら自慢の顔を潰されて殺されるの本当に可哀想というかこれぞライチの世界というか。1回だけ上手側の席になった際、ライチにお顔ぐりぐり(婉曲表現)されてビクンビクン(婉曲表現)するのが目の前で繰り広げられたんだけど、あれマジでちょっと顔減ってない?ってくらい動いてて心配になった。いや割とね。マジでね。目の前で推しの顔が潰される観劇体験、たぶんもう二度とないでしょ…。
・しかしこの子、(おそらく洗脳されてるとはいえ)どうして光クラブにいるんだろう…ヤコブも…。そもそも、ただ秘密基地に通りすがってどきんこ☆しただけなのに…。巻き込まれた被害者ポジションなのに割と終盤まで五体満足でいたせいで、友達の無残な姿を見せられ続けたの不憫。生き延びて令和の世を軽やかにキラキラ生きる雷蔵ちゃんが見たかった。彼らが憎み続けた成長は雷蔵ちゃんにはきっと必要で、大人になることで螢光町、時代、家族、将来とかいろんなものから解き放たれたと思うのよ彼は…。謹んでお悔やみ……。


★3番(ドライ) カネダ ≪演:赤澤燈≫
・こんな色っぽいカネダがあってたまるか!!な鬱屈の瞳。
・この頃、本格派・コメディ・オタ向けとジャンル問わず様々な舞台に出てめきめき実力をつけていた赤澤氏。「ともるん」カラーは極力消しつつも、にじみ出る演技の幅が隠しきれてなかった。爪かみの仕草、ダンスの腰つき、一瞬見せる挑発的な笑顔など色気がすごい。
・逆パカ処刑シーン、エクソシストばりに反り返っていくカネダ怖かった。柔軟性すごい。のに、いざ上半身がもげてみると、絶妙に微妙なクオリティで笑いました。あとから考えたら、あんまりリアルに作りすぎるとクレームとかトラウマに発展するんだろうなあれ。
・一度だけ、歌のシーンでテニミュ組(雷蔵、カネダ、ダフ)が3人集まるシーンがあってニヤニヤしちゃったよね。


★4番(フュンフ) ダフ ≪演:味方良介≫
・味方くん、「テニミュ」から「魔王」ときて3回目の池岡さんとの共演。彼は本当に大物だよね…。
・ダフといったらアレですよ、アレ。伝説的超リアル自慰。初見のとき仰天した。すごい生々しくて真に迫ってて、だからこそ刹那的で即物的で美しい自慰。と喘ぎ声。
・これに挑戦できるみかてぃはすごいと思ったし、みかてぃのファンの皆様はどう捉えているのかとっても気になるし、リアル17歳の女の子のスカートの中に顔突っ込んではーはーはーはーするのは色々とその……大丈夫なのか……。
・予備知識なしで観劇した人間違いなく「こんな時どうしていいかわからないの」顔をしていたでしょう…なぜなら私がそうだったので。DVDの座談会でも取り上げられていて、舞台からはなぜか爆笑している観客がちらほら見えたとか。「本当にどうしていいかわからないとき人は笑うんだなって」そうかもしれませんね。
・ダフの処刑シーンに至るまでの流れが悲しくて秀逸で。タミヤ・カネダ・ダフの初代ひかりクラブのメンバーとタマコで海岸に出かけるシーンから始まる。ずっと友達だ、ゼラなんかこわくないぞ、とみんなで明るく笑うシーンの背後で、処刑の引き金になる行為を行っているダフ。ああもうだめだ、元には戻れない、と観客だけが悟る、舞台ならではの演出で切なくなる。舞台暗転、本当に瞬きの間に、タミヤがダフを処刑するシーンになるこの絶望的な落差。芸術的だよね…。「また明日、僕たちのひかりクラブで!」って最期まで明るく言い切るダフが切ない。


★5番(フィーア) デンタク ≪演:BOW≫
光クラブメンバーの中で唯一女性が演じていた少年。3公演見ても女性だということに気付かず、終演後のツイートを見て仰天しました。声の高い男性だと思ってた…鈍かった…。
・でも、良く通る高い声が、むしろ「科学少年」デンタクらしかった。女性でも男性でもない、少年の面影と変態性を感じさせてくれました。
・演出を手掛け、ダンサーとしても登場しているダンスグループ「東京ゲゲゲイ」の一員だそうです。したがってダンスのキレがピカイチ!デンタク中心のダンスシーンもあって、まさに変態的天才理工系なデンタクらしい、機械的・技巧的な動きを見せてくれました。その延長線上で、頸椎とか背骨が折れる演技が上手(えええ)。
・デンタクさん、ゼラの次に、いやもしかしたらそれ以上に狂気の人だと思う。登場人物の中で、笑いながら死んでいったのこの人だけ。夢が叶ってよかったね☆え、ジャイボ?ジャイボはほら、ただゼラのことが大好きなピュアな子じゃないですか。ねえ?…ねえ……?
・公式パンフレット(すごく出来がいい)、出演者の1人1人に輝かしいプロフィールが並ぶ中、この方は「19歳の時にダンスを始め、23歳で72kgになる。」なにそれ大好き。


★6番(ゼックス) タミヤ ≪演:玉置玲央≫
・超かっこよかった!!!!!!!以上、解散!!!!!
・いや本当にかっこよかったんですよ。原作でもかなりの美丈夫として描かれているタミヤに、漢気と迫力とちゃめっ気成分を足したようなイケメンでした。イケメンなどと軽いカタカナで呼んだら失礼かも。昭和初期の青年将校さんみたいな、清潔で凛とした空気を纏っています。
・劇団「柿食う客」中心メンバーで出演舞台多数。さすが舞台を生業にしているだけあって、声の張りすごい。まさに真実の弾丸。
・私が観劇した回で起こったハプニングは多分当時も話題になったんだけど、クライマックスのタミヤvsゼラの死闘、激しすぎてタミヤのイヤーマイクがもげちゃったんだよね。当然音声が途切れる。でも気迫と地声だけで乗り切ってらした。何が起こっても芝居を停滞させない役者魂もさることながら、表情と体の演技だけで成立しちゃうことに感銘を受けたものです。
・「なーんか間違ってねえか?」「ここは、俺の『ひかりクラブ』だ!!!!!!!」と高い所から現れる時のカタルシスすっっっっごい。タミヤ君!ああタミヤ君!!いよっ待ってましたリーダー!!と心の中で大喝采する。スーパー戦隊なら間違いなく、絶体絶命の時に現れる無双レッド。疾走感のある主題歌をバックに敵をちぎっては投げちぎっては投げするレッド。しかし悲しいかなここはアイアシアター。キラッと参上カラッと解決な戦隊の世界ではなく、グランギニョル真っただ中なライチの世界なのであった。命からがら玉座にゼラを追い詰めて説得、もう少しで誤解が解けるのでは?というところで派手に散る。物理的に。それはもう派手に散る。


★7番(ジーベン) ヤコブ ≪演:加藤 諒≫
・原作だと影の薄い(然るがゆえに一番まともっぽい)ヤコブですが、今回、加藤諒さんの好演で印象深いキャラクターになってます。眉毛。何よりも眉毛すごい。
・「俺、近所の女子中学生に石ぶつけられたぜ。スイカ大の。」はオリジナルのセリフかと思うけど、間の取り方絶妙で何回聞いても笑った。
・その分、死に様が幾分地味かつ現実路線に。ライチに頭を(餅つきの杵みたいに)つぶされるんだけど、その時に「おかーさーん!」と叫ぶのが若干トラウマに…。おかーさーん、はダメだ、おかーさーん、は。
光クラブのメンバーの中ではヤコブ雷蔵は「巻き込まれた側」だし、その中でもヤコブは普通の感性を持っているから、本来なら血なまぐさい事とは無縁だったはず。家に帰れば普通の家族がいて、学校に行って、光クラブに飲み込まれなければすんなり大人になっていったんだろうな、という未来が容易に想像できるヤコブだから、死の臭いなんてしなかったヤコブだから、おかーさーん、は心に来るものがあります。
・何だかんだ、「本名:山田こぶ平」がすべてを持っていくキャラ。
・ごくごく最近、ツイッターにライチ時代のダンス(冒頭の全員ダンス)を再び踊る動画を上げてらして、思った以上に再現度高くてすごいなと思いました(作文)。


★8番(アハト) ジャイボ ≪演:吉川純広
・えっっっっっっっっっっっっっっろ。エロスが学ランを着て歩いている。普段もゼラ以外とはほとんど絡まない不思議ちゃんだし、ゼラと濃厚に絡む()BLシーンで見せる恍惚とした表情は妖艶の極み。「ゼラぁ?」と呼ぶ蕩けるような声、「しな」の作り方、どれを取っても芝居がかっていて、ジャイボという危険分子を印象付けている。
・元凶にして黒幕にして破壊神な漆黒の薔薇。虚構の匂いが強い光クラブの中でもさらに異質で遊離した存在。あのゼラですら最後まで欺かれる。ジャイボが来なければひかりクラブはきっと光の場所でいられた。
・ジャイボとは結局何者だったのか?はほとんど明かされず、悪行の限りを尽くした一連の行動の動機はゼラのことをただ愛してるから、というトゥーピュアピュアボーイ。そうか…愛してるなら仕方ないよな……ウン…………………。
・最期にはそんなに!?そんなに血糊かける!?ってくらいえげつない量の血糊をジェット噴射で食らう。この血糊をセッティングした演出家は当時何かやばい食べ物でも胃に入れちゃったんじゃないか?役者の人は溺死しないか?と思うくらいかぶる。まあ、原作の死に方がアレ(※ググッてください)だったことを考えると、いくらかけても足りない!!と思ったのは理解できる。舞台だから、ヒャー!と目をつぶりながらでも見続けることができたけど、原作に忠実に再現されたらちょっと気が触れるかもしれない(なお実写映画)


★少女1号 カノン ≪演:七木奏音≫
・超かわいかった!!!!!以上、解散!!!!!
・透き通った美しさと俗世を超越した純粋さを持つカノンのキャラクターにぴったりの、ザ・美少女。濡れたような黒髪に鈴を振るような澄んだ声。ゼラ様同様、原作から抜け出してきたみたいな、まさに本人。まっすぐに見つめてくるお目めが真珠みたい。
セーラームーンミュージカルにご出演されたキャリアがあり、しかもマーズ役だったとのこと超納得しました。
・制服のスカートが妙にテラテラした質感で違和感あったけど、後から水まみれになるから防水素材を使っているのだと途中で気づき衝撃を受ける。
・オルガンで賛美歌や鎮魂歌を弾き語りするシーンは一幅の絵画のようにきれい。
・天然なのか世間知らずなのか、何が起こっても全然動じないし光クラブのことも完全に他人事。さらわれて拘束されてるのに、目の前で人が殺されているのに眠ったふりを続けて、鉄に作り替えられようとしてもなんだか受け入れているみたいで。興味があるのはライチのことだけのよう。不思議な子。美貌も相まって、ライチよりも作りものみたいな印象を受ける。
・どう考えても精神のメーターが振り切れて大暴れしてるゼラを見ても逃げ出さないとか、メンタルつよつよでしょ………。惨劇からの唯一の生還者(ダフもいるけど)、これからも光クラブのことは何も思い出さずに強く生きてほしいです。
・役者さんのお名前が役名と同じ「カノン」であることに運命を感じる。昔から憧れていてずっとやりたかった役だそうです。よかったねえ…(何目線)


★ライチ ≪演:皇希≫
・ゼラとデンタクによって作り出されたロボット・ライチ。設計者であるデンタクから「私は人間だ」という概念を与えられ、今となっては流行りの(?)シンギュラリティに達する。人間をためらいなく殺戮できる冷酷無比なマシーンでもあり、人間の女の子に恋する心が芽生えた哀しきヒューマノイドでもある。
・演じられている皇希さんは当時18歳。ダンスの世界的な大会にも出られていたりな実力者。身長は180cmでもちろん大きいんだけど、役柄にはまっているためかその何倍も巨体に見える。のっしのっし歩いてる。
・カノンとの恋が育っていくシーンは全部静謐で美しいですね…。共にオルガンを弾き、歌い、恋人たちのようにダンスを踊り。肉体的には濃密に交わるゼラとジャイボの心が決して通じ合わないのとは対照的に、雪が降り積もるように水がたまるように静かに育まれていくカノンとライチの純粋な恋。「魔法で人間の男になっている」というイメージのシーンでのロマンチックでしなやかなペアダンスは必見。
・その描写があってからのライチの暴走シーンの絶望感すごいよな……荒ぶるデスペラード達の身の毛も弥立つ生殺与奪(※別ジャンル)を生卵のように握ってるライチ……そりゃそうさ今日はお前の命日(※別ジャンル)になる予感しかしない……(そして的中する予感)。


★女教師≪KUMI(KUCHIBILL)≫
・初手からガツーーン!!とインパクトを与えてくれる存在。この舞台がいわゆる「エログロ」で、今から容赦なくそういう描写が繰り出されますわよ!お覚悟はよろしくて?な導入になっている。
・冒頭、後々のストーリー展開の伏線になる、ローマ皇帝「エラガバルス」の寓話を上品に説明する女教師。ヒラヒラフリルのブラウスにグレーのスーツ、そして網タイツ。この時点でかなりセクシー。
・その後すぐ、見事に下着姿に剥かれてしまうわけだけど、まあこれがすんごい肉体美。全然いやらしくない。細くてしなやかなのに筋骨隆々、健康的な美に見とれてしまう。これから光クラブによってSA☆TSU☆GA☆Iされる…!というシーンで、悲鳴と共におもむろに始まるポールダンス。…ポールダンス……?(ポールダンサーの方でした)(生ポールダンスすごかったです)(なぜライチでポールダンス?という疑問はもはや意味をなさない圧倒的なパフォーマンス)
・その後はまあ原作通りジャイボにザクッとされるわけですが、その瞬間天井から降ってくる………ウワアアアアアアアア臓物だあアアアアアアアアアア(楳図かずお顔)。初見ではもう驚いたのなんのって。あんな細いお姉さまの体から出てきたとは思えないほど妙にでかい臓物。落ちる音もでかい臓物。夢出るわ。なおここまで開幕から10分。
・ところで途中で出てくるタミヤの妹「タマコ」もこの方が演じられていたそうで…まっさらな状態で観たら全然気づかなかった。妙に色っぽい太ももとパンチラ(白)。挑発的な寝そべりポーズ。しかしロリ語。ごちそうさまでした!!


★三匹の猫(MARIE、MIKU、YUYU/東京ゲゲゲイ))
・至る所で登場し、おどろおどろしいキレキレダンスで世界観を縁取る3人のダンサーたち。皆さん東京ゲゲゲイのメンバー。
・神出鬼没の舞台装置。踊っているというよりは、蠢いている、這い出ているという表現の方がしっくりくる。
・アングラ的雰囲気が漂うどぎついメイクと、常人離れした激しくてセクシーで不気味で叩き付けるようなダンス。見事の一言。
・黒子的立ち位置なので役名はないものの、裏設定ではジャイボが殺した猫の化身なのだとか。


▼まとめ
池岡さん定点カメラブログのはずですが、あまりにもどのキャストもハマっていて、感じたことを全部書いてしまいました。
ライチ☆という作品は、源泉である「東京グランギニョル」という種から派生して、舞台に映画にと何度もリメイクされ、そのたびにアップデートされているようです。
作り手の数だけ、観客の数だけあるライチ。もしかしたら万人向けではないかもしれない、でも確実に観客を魅了し続けているライチ。
この作品に出会えてよかったです。
池岡雷蔵ちゃんに出会えて幸せです。
 

▼さらに一言
観劇したのは2015年。もう5年近く前のこととは思えないほど、初めてライチ☆に触れたときのことはありありと思い出します。
原宿駅からAiiAシアターを目指し、12月の冷たい空気の中てくてくと歩いたあの日。
ライチ☆というジャンルとの邂逅の衝撃、キャストや製作陣の気迫に満ちた2時間。
こりゃあエラいもんを見てしまったぞ、と心地よいザワザワを感じながら帰る新幹線の車内。
あの時はその数年後にAiiAシアターがなくなってしまうことも、世界的パンデミックで演劇業界が窮地に陥ることも、当たり前ですが想像すらしていませんでした。
はやる心を押さえながら、てくてくと劇場に歩いていける穏やかな日が、どうか戻ってきますように。
それでは皆さんご一緒に。

\そしてこいつは奪いました、ゼラ!!/

\私たちの楽しみを奪いました、ゼラ!!/

\エアモルド!!/

\エアモルド・デム・コロナ!!/

 

(台無し!!!!\(^o^)/!!!!)

舞台「火星の二人」感想レポ

みなさんコロナ自粛いかがお過ごしですくわーーーーーーー!!!!

ほんとにいやな外出自粛!
ほんとにいやな公演中止!!
ほんとにほんとに、いーやーなコロナ!!!
(※「まじめが肝心」セシリーのセリフ風に)

いやいいんですよ外出自粛は。オタク別に困らない。オタク家でやることいくらでもある。
だが公演中止テメーはダメだ。
行きたかったよ、十二夜。(池岡さんゲストトーク予定)
行きたかったよ、「4」。(池岡さん出演予定)
行きたかったよ、京都。(池岡さん地方公演予定)

まじコロナ絶対に滅する。
悪即斬。駆逐してやる一匹残らず。
そう思いながらゴールデンウィークは完全に引きこもり、
キリキリとうがい手洗いに励んでいます。
みんな自粛して本当にえらいぞ!!生きてまた会おうな!!

さしあたり今、何に一番困っているかって、推しに課金できないことです。
ダイレクト課金のために口座番号教えてほしい(オタクすぐそういうこと言う)ところだけど、
叶わない以上、グッズを買ったり円盤を買ったりしていくばくかでも支援したいところです。
が、何しろ、池岡さん関連の既存公式商品は大体入手済み。
こうなれば、もう5冊持っている写真集を追加で買おうかな。
ぜんぶ高画質で録画してBDにも焼いてある、出演ドラマのボックスを買おうかな。
例の10万円で。
そんなことを考えながら日々過ごしています。
良い課金先があったらぜひ教えてください。

前置きが長くなりましたが、せっかくのおうち時間、このブログに上げようと思って
書きかけていた(そして何年も放置している)池岡さんの舞台感想レポを
少しずつ仕上げていきたいと思います。
池岡さんが出演された舞台は、ひとつひとつが私にとって大切な記憶であり、
その時に触れられなければもう同じ舞台にまみえることはかなわないものなので、
出会った時の感想は、やはり残しておきたいとこのたび改めて思ったのです。

そんなわけで、今回は平成30年4月に上演された「火星の二人」のレポをタラタラ書いてみたいと思います。
演劇界の大物と言える「二人」と池岡さんが共演させていただいた作品、とても印象に残っています。
書きかけていたものに記憶で足していっているので、細かい所がおかしいかもしれませんがご容赦を。


【公演期間】
 2018年4月10日(火)~6月3日(日)


【公園会場】
 シアタークリエ(東京会場)、サンケイホールブリーゼ(大阪会場)
 その他各地方会場(愛知、富山、石川、長野、宮城、岩手、栃木、新潟、香川、広島、鹿児島、長崎、福岡)
【作・演出】倉持裕
【出演者】竹中直人生瀬勝久上白石萌音池岡亮介前野朋哉高橋ひとみ
【公式HP】https://kaseinofutari.amebaownd.com/
【稽古場レポート】https://spice.eplus.jp/articles/177908
【インタビュー】https://tokyo.whatsin.jp/195149

【観劇日時】
 4月14日(土)13:00
 4月20日(金)19:00
 4月21日(土)13:00/18:00 ※以上東京公演
 5月18日(土)13:00 ※栃木公演

 

【あらすじ(公式HPより)】
大事故から奇跡的に生き延びた男(竹中直人)は、事故の後、廃人の様になっていた。
そして彼の息子も人が変わったようになり、その恋人(上白石萌音)は悩んでいた。
そこに、やはり同じ事故から生還した男(生瀬勝久)が訪ねて来る。
生死の境が曖昧になってしまった男と、同じ経験からむしろ活力をみなぎらせている男の、恐るべき因縁……
そんな二人の果てしなき口論から垣間見える、生き抜くことを巡る物語。


<全体の感想>
ジェットコースター事故で生き残ったものの、魂が未だ空中に放り出されたままのふたりの男と、その周辺の人物たちが繰り広げる悲喜劇。
竹中直人さんと生瀬勝久さんが登場する冒頭シーンから、「本物がそこにいる」感じがすごくてテンションあがりました。

竹内直人さんと生瀬勝久さんによる演劇ユニットを「竹生企画」と呼んでいるそうで、今回の舞台はその第三弾企画なのだとか。
お2人が「ぜひ共演してみたい旬の女優」を迎えるのが定番だそうで、今回招かれたのは女優・歌手として活躍目覚ましい上白石萌音さん。
この舞台の後、現在に至るまで次々にドラマやCМにも出演されてらっしゃいます。

不幸にも5名が即死したジェットコースター事故で、たった2人、奇跡的に生き残った男という設定の、朝尾(竹中さん)と志波(生瀬さん)。
事故以降、内に内にと閉じこもる朝尾を、反対に生命力にあふれた志波が訪ねて来ることで、朝尾一家を巻き込んだ騒動に発展。
突然現れた志波の目的は何なのか?朝尾はなぜそんなにも拒否的なのか?
教え子は亡くなり、自分は生き残ってしまった朝尾の救済は成るのか?
というなかなかに重いテーマでした。

2人の男が出会い(正確には再会し)、口論し、救われるまでのお話。
お話そのものは、登場人物の掛け合いがメインで、コメディ寄りとも言っていいような笑いどころがたくさんあるのに、
絶えず流れ続ける不穏な空気のせいか、初見の時は、シンプルに笑っていいものなのかどうか、迷ってしまう場面が多々ありました。
「こうきたら、次はこうかな」がなかなか通用しない、手探りで受け止めるような観劇体験。
竹中さんが発し続ける不気味なアパシー感は終盤までずっと舞台を支配していました。ちょっと怖かった。

最後にはストーリーが優しく着地して、やわらかい余韻が残る、たぶん、大団円。たぶん。
実は、事故の前には無実の罪で13年間も服役していた志波。
その志波を本来なら救えたはずの、アリバイ証言者になりえた、でもなれなかった朝尾。
2人の因縁は事故よりもずっと前から絡み合っていたことが明かされます。
真実を明かされ「救えたはずなのにできなかった」と狼狽する朝尾、「本当にもういいんです」と叫ぶ志波。
志波の、そして朝尾の使命は、お互いを苦しみから解放させ、現実世界に「着地」させることだったんじゃないか。
ラストシーンの朝尾の表情は穏やかで、志波を受け入れ、きっとこれからも共に歩んでいくことが示唆されているようで。
じゃあ2人は救済されたのか?というと、そんな単純な話でもないようで。
いわゆる「サバイバーズ・ギルト」の感覚に、朝尾はきっと一生苛まれる。
朝尾と志波は、作中で象徴的に取り上げられる「地球と火星」のように良く似ていて、運命を共にしながらもつかず離れず、そして時々、大きく近づく。
これからの2人の行く末を気にせずにはいられないラストでした。

父・朝尾に対して歩み寄りを始めた正哉(池岡さん)も。
家庭から外の世界へ少し足を延ばして、自分の時間を楽しみ始めた妻(高橋さん)も。
朝尾の無気力エナジーに飲み込まれていた家庭が少しずつ力を取り戻していくような、かすかな希望のある終幕。

なんで朝尾はさやかの恋愛に対してあんなにムキになったのだろう、とか、レイコさんのお店エピソードの掘り下げいるかな?とか、いきなり出てきたモスグリーンのコートの意味は?とか、明確な答えのないシーンもたくさんあって「はてな?」となるんだけど、パンフレットにもあるとおり「わかろうと」してはいけないのかなぁとも思う。
回を追うごとに、何気ない発言の裏にはこんな意味があるんじゃないか、このとき、彼/彼女は何を感じていたのか、という想像の余地があって楽しかったです。


<役者さんについてあれこれ>
まず何をおいても、主演のお2人・竹中さんと生瀬さんの存在感が!圧巻!でした。
生瀬さん、竹中さん共に、憎めない変なおじさんポジションが多い印象(個人の感想)だけど、舞台ではそういう感じでもなくて、竹中さんは抑制的な(でもたまに衝動的に爆発する)演技、生瀬さんははつらつとしながらも随所に不気味さも漂わす演技。役者さんの振れ幅って本当にすごいし、個性と個性がぶつかりあっても「受け」の演技が確立しているからうるさくない。
けっして声を張り上げるシーンばかりではないのに、惹きつける声、目が離せない表情の変化。
最初はうつろで、現実から遊離してしまっているかのような朝尾の表情が、志波との出会いによって少しずつ色を取り戻していくかのようで。
志波もかつてこんな虚無の世界を体験したのだろうな、と想像させられる。
朝尾は志波に救われたし、逆もまたしかり。
火星と地球のように、つかず離れずそばにいて、たまに大接近したりして、続いていくのでしょうね。

竹中直人さん
・知らない人はいないであろうベテラン俳優。特撮クラスタとしては「仮面ライダーゴースト」のお騒がせ仙人役が印象深いです。
・テレビだとどうしても「怪優」ぶりが目立ち、一風変わったお芝居をする人、というイメージ(というか我々がそれを求めてしまうのか)なんだけど、今回の役は非常に抑制的。内に内にと閉じこもっていた主人公が、生瀬さん演じる男に何とか心をこじ開けられそうになり、必死に抵抗している感じ。生瀬さんとの口論で大声を出すことはあるけれども、エネルギーが切れるとまたふっつりと虚ろに戻る。
・そうかと思うと、ちょっとしたところで見せるコミカルな動きもたまらない魅力。動揺して階段を小刻みに上り下りしたり、志波の過去が一部明かされた時に接し方に迷う様とか可愛かった。
・とある真実が明らかになった後の狼狽と、「じゃあ私は……誰なら救えるんですか!?」と、絶望感と無力感に満ちた叫びには胸を突かれました。
・だからこそ、ラストシーン直前での落ち着いた様子、志波さんを完全に受け入れて共にあろうとする態度、「火星と地球の大接近と言っても、大きなことが起こるわけじゃない。いつもより少しだけお互いの顔が良く見えて…そうしてまた離れていくんです」という悟ったような台詞の言い方には安堵したし、最後のシーンで咽び泣くところでは、過去を背負っていくこと、ほんの少し前を向くこと、そんな未来が見えて「ああよかったな」という感情で締めを迎えることができました。たぶんハッピーエンドなんだ。たぶん。
・印象的だったのは、それまで不穏なBGMしか流れていなかった舞台に、遊園地の楽しくも切なげなメロディーが流れた時。どうして遊園地ってあんなにノスタルジーと哀愁を喚起するのかな、と思っていたら、ドライヤーのシーンでさやかが口ずさんでいた曲と同じ曲であることに何回目かでやっと気づいてい驚いた。朝尾はあの曲とさやかによって、事故で亡くなった「彼女=教え子:登羽」を忘れられずにいたのかな。


生瀬勝久さん
・こちらも日本では知らない人はいないであろう名バイプレイヤー。まさかこの後「仮面ライダージオウ」でおやっさん的ポジによりその界隈で大人気になるとは思っても見なかった。ていうか竹生の2人とも、仮面ライダーがお世話になってる!その節はどうもありがとうございました!!
・朝尾とは対照的に、爛々と生命力をみなぎらせる、全く逆ベクトルの不気味さを持った謎の男として登場。「我々2人だけが生き残ったことには何か意味があるはず」と主張し、拒む朝尾の家の敷地内に勝手にテントを張って住み始める。いや怖いな!しかも重い前科があることが序盤で匂わされる。朝尾じゃなくても警戒するよねそりゃ!!でも、持ち前の気さくさや若者の言葉に耳を傾ける真摯さもあり、正哉やさやか、朝尾の妻には割と早い段階で受け入れられる。行動の動機も徐々に明かされていく。
・ふとしたシーンでつい、と出てくる「火星じゃないですか?」のセリフ。タイトルにもなっている「火星」という単語が初めて出てくる場面なのに、あまりにも流れるように夢見るように言うものだから、うっかりしていたら聞き逃してしまいそう。
・この舞台の一番笑えるシーンをかっさらうのもこの人。ジェットコースター事故で亡くなった女子大生の遺族(楠見)に脅迫され、煮え切らない態度をとる朝尾のシーン。勝手なことばかり言って朝尾を追い詰める楠見に、志波が「ちーがーうーだろーーがよーーー!」と一喝し、豹変した態度でコテンパンにお仕置きをするくだり。観客が楠見のせいで抱えたフラストレーションを一気に解放するシーンでもある。妙にいい声の生瀬さんの「はっはっはっは」に毎回めっちゃ笑った。


上白石萌音さん
・ご存じ「君の名は」で主演声優を務めた実力派若手女優さん。恋人の正哉が父親の事故をきっかけに人が変わったようになり、別れを切り出されたことに納得せず、朝尾家に家族同然に出入りする女子大生・さやか役。当時、弱冠二十歳。この舞台の時点で一定のキャリアがある方だったけれど、その後一層メディアへの露出が増え、現在は妹の萌歌さんとともに、テレビで見ない日はないような売れっ子に。これからも活躍してほしいです。
・演じたさやかは、正直、今どきの若者にしてはどうしてそこまで?と思えるほど正哉との関係にこだわる割には、正哉への恋愛感情がそんなに強いようにも見えず、不思議。初めて交際した相手だから、別れるにしても「ちゃんとしたい」と言うけれど、実際あまり共感できないまま話が進んでいく。
・個人的には、言い訳ばっかりのずるい男(外見は池岡さんだけど)にいつまでも引きずられるのは勿体なく思えてしまうぞ☆でもしたたかな面もあり、恋人の父親に食って掛かったり、母親にハッキリめに苦言を呈されても、やり方を崩そうとしない。意地なのか。
・ラストでは正哉と正式に別れたのかどうかのはっきりした描写はされず、なのに朝尾家のホームパーティーには当たり前のように出席。正哉へのこだわりはなくなったように見える。どういう立ち位置なのか気になるところ。
・主人公の朝尾から、明言はされないながら、死んだ教え子に重ねられているような描写がたびたびある。ラストシーンの「我々できちんと着陸させてあげないと!」のくだりはそれがきちんと回収されて、朝尾と志波の救いになっている。朝尾と志波がさやかを抱え、空中浮遊のように歩かせたあと、ふんわりと優しく着地させてあげるところが、このドラマのカタルシスなんだろう。着地できなかった登羽を思いながら。


前野朋哉さん
・事故の犠牲者の遺族(といってもハトコなので微妙に遠い)であることを笠に着て、主人公の朝尾を脅迫して金をせびっていたチンピラ・楠見。憎まれ役なんだけど、憎み切れない、根はお人よしっぽい。寅さんが悪いことしようとするとこんな感じかもしれない。
au三太郎シリーズのCMで一寸法師役を演じられていてお茶の間でもすっかりおなじみですが、この時は直前まで朝ドラ「わろてんか」に吉本お笑い芸人役でレギュラー出演されていたので、そちらのイメージが強かったかも。
・志波にお仕置きされてからは心を入れ替え、今までせびっていたお金を返し、朝尾家とも交流を深めていく。朝尾の寛容さに感激すらする。ある意味、志波と出会って一番運命が好転した人かもしれない。なんか最後の方でさやかちゃんといい雰囲気になっているし。えっ??
・本筋とは関係ないけれど、実は楠見の生育歴にすごく興味が湧いてしまう。だって言葉の端々に認知の歪みや異質な育ちの影響があるんだもの。朝尾に対する脅迫が家族親族にバレて、一族郎党から叱責されてボコボコにされて青タンを作ってくる…って、ちょっと異常じゃないか?仮にそれがギャグシーン的扱いだとしても。
・「俺の親父なんかな、全然何言ってるかわかんねえんだぞ。それでも俺いつも謝ってたんだぞ」「何で!?何でお前まで俺を殴るんだよ!」という台詞から察するに、被虐環境で過ごした幼少期だったんじゃないだろうか。
・そうすると、事故で亡くなったハトコの「登羽」、朝尾の罪の意識の源泉である登羽が、直前に「死にたい」と言っていた理由につながるような気がして、元から一族で何らかの病理を抱えていたんじゃないだろうか。考えすぎかな。でももしそうだとすると、この人が登羽の分まで朝尾家で「家族」を学びなおすのは、とても意味のあることなのかもしれない。


高橋ひとみさん
・華やかで柔らかなたをやめぶり、でも言うべきときは遠慮なく言う嘘のないお母さん。
・息子の彼女(元彼女?)のさやかに対しては女子同士キャッキャと息子以上に仲がいいように見えて、思っていることは結構辛辣。でも真っ当だし、それを丁寧に本人に伝えるところはちゃんとした大人。というか、この演劇の中で一番、外からの悪い影響を受けない安定した人。
・「TRICK」直撃世代なので、高橋ひとみさんと生瀬勝久さんが一緒の空間にいるだけでまるっとごりっとスリッと楽しい!でも今回はスリットとか言いそうにない。役者さんってすごい。
・長身でめちゃくちゃスタイル良い。とても素敵な方でした。


池岡亮介さん(例によって定点カメラからの感想)
・2018年も順調にタレていて安心する。
・このような大舞台、そして豪華な出演陣という環境を、オーディションで勝ち取った池岡さんがファンとして誇らしい。
・池岡さんがこの作品で演じた「正哉」は、優等生で誠実なように見えて、実は不誠実と紙一重だったり、爽やかな好青年とずるい若者が共存していて、絶妙なバランスを持っている役柄。傷つきたくないし、失敗したくない。でも自分の責任として引き受けたくない。なのに、周りを騙しきるほど強くもない。そんな繊細な人物像だと受け止めました。
・さやかとの関係も、俳優を目指したいという気持ちも、すべて父親の事故をきっかけに手放そうとする。でも、実はどれも元から綻びをきたしていたことであって、事故はきっかけにすぎず、原因ではない。挫折の原因を自分ではなく外側に求めようとする。
・でも、そういう部分って誰にでもあるから、何となく見ているこちらも共犯みたいな、後ろめたい気持ちにさせられる。
・なんとなく、池岡さんがこれまで演じてきた役柄は、内面と表出のズレが大きなキャラクターは少なかったように思うけど、正哉に関しては、独白シーンもなく、本当は何を考えているのか、何を観客に隠しているのか、察するのが容易じゃない。誰もが持っているずるさと、捨てきれない真面目さなど、自分の感情に当てはめて、正哉というキャラクターを解釈して受け止めるしかない。ある意味、登場人物の中でもっとも人間らしくて、等身大なのが正哉なのかもしれない。
・前野さん・上白石さんとの掛け合いもテンポがよくて、重苦しくなりがちな空間の中でホッとできる時間だった。
・父親である朝尾とは基本的に良好な関係ながら、志波が現れてからの父親の変化に戸惑ってもいる。進路選択に寛容な態度を示されると「そんな。急に主権を認められても」と忌避的。やっぱりずるいよなあ。
・手負いの獣には強気(母談)。…が、クライマックス手前、激高した楠見に詰め寄られる(元)彼女・さやかのピンチを目撃して、に、に、逃げたーーー!ダッシュで逃げた!お前!最低やな!見た目が池岡さんなだけでお前最低やな!それを後から「逃げたんじゃなくて戻ったんだ。あそこで俺まで加勢したら収集がつかなくなるだろ。合理的な判断だよ」みたいなことをドヤ顔で言ってしまう。そりゃ愛想もつかされるよねえ。
・池岡さん、最近はストーリーが重厚な舞台への出演が続いているので、堀内夜明けの会の時みたいな思いっきりハジけたギャグとかも見たくなってきたけど、この人がお笑い方面ではじけるとうっかりエガちゃんになってしまうので、まあ、今のままでいいかもしれない。


<まとめ>
2年前のちょうど今頃に観劇した舞台を懐かしく思いながら書きました。
作りこまれた上質な演劇は、役者さんの演技や役作りはもちろん、演出・道具・技術にも何重にも手が込められていて、本当に贅沢なものですね。
コロナを一匹残らずKU☆CHI☆KUした後は必ず、必ず応援しに行きます。
池岡さんの次の仕事のはずだった「4」、来年8月のリベンジ心から待っていますよ!!!!!

文化庁委託事業 舞台「まじめが肝心」感想レポ

みなさんこんにちは。

いかがお過ごしですか。大丈夫ですか。この日々。
コで始まってナで終わるポッと出の若造のせいで、エンタメ界隈も大変な騒ぎと聞きます。

かくいう私も2007年のゲキレンジャーから12年間通い続けたスーパー戦隊素顔の戦士公演観劇記録がついに途切れたり、池岡さんゲスト出演予定だった「十二夜」アフタートークが当日中止になったりと、人並みに憂き目(※)に合っています。

※とはいえ騒ぎが大きくなってからは、中止にならなくてもあきらめるつもりでいました。
 仮に万が一自分が例のウイルスに関わるようなことがあれば、今の世論から言ってまず社会的な死は避けられないし、巻き添えで職場が機能停止するし、場合により公式に迷惑がかかるし、社会的に死んでしまっては界隈を応援(主に諭吉的な意味で)することができなくなるので。
 諭吉は大事だ。

十二夜」に関しては個人的に思い入れもあり(当ブログ2013年10月12日の記事参照)、公式もギリギリまで調整してくれていたようなので、残念な思いもひとしおですが、仕方ない、仕方ないんや……。
池岡さんのオリヴィア時代のお話し聞きたかったけど、碓井君のヴァイオラ裏話も聞きたかったけど、仕方ない。
こんなに中止続出では、大丈夫なんだろうか、あの人もこの人も。
オタクはよく「推しのATMになりたい」「推しの口座番号を知りたい」と言いますが、今ほど切実に願ったことはありません。
頼むから推しの生活費を定期的に振り込ませてくれ。私は三食塩むすびでもいいから。

げににっくきはコロナウイルス
サンドバックに浮かんで消える憎いあんちくしょう。
たたけ!たたけ!たたけ~!!
俺らにゃオタクの血が騒ぐ~~!!
あしたはどっちだ(マジでどっちだ)

というわけで、1月中に行けた池岡さん舞台のレポを書いて寂しさを紛らわせています。
かなり久しぶりの舞台でもあったので、どうしても初日から参加したくて、直前まで連日残業して何とか仕事を終わらせ、時間給をもぎとり、ウッキウキで向かった金曜日でした。
今改めて思う。なんて幸せな3日間だったんだろう。

今回の件で再確認させられましたが、私にとって、日々責任を持って仕事を頑張ったり、嫌なこと、つらいことがあっても時間をかけて乗り越えたり、そんな力を与えてくれるのは、間違いなく娯楽であり、文化であり、推し俳優であり、心揺さぶられる作劇であったりするのです。
演劇業界の皆さま、今はお辛いでしょうが…、微力ながら、近いうちに必ずや恩返しに行きます。

 

▼公演概要
作:オスカー・ワイルド
翻案演出:大澤遊
出  演:釆澤靖起(文学座)、池岡亮介那須凜(青年座)、大川永(イッツフォーリーズ)、
     井上薫、館野元彦(銅鑼)、森下まひろ、荒谷清水(南河内万歳一座
公演期間:令和2年1月24日(金)~30日(木)
会  場:恵比寿・エコー劇場

 

▼公式サイト
http://www.gekidankyo.or.jp/performance/2019/2019_06.html

 

▼あらすじ(公式HPより)
嘘から始まるまじめな恋のドタバタコメディ!
田舎に住むジャックは架空の弟「アーネスト」を訪ねる名目で、たびたびロンドンへ遊びにでかけていた。ロンドンでは「アーネスト」と名乗り、友人アルジャノンのいとこであるグウェンドレンに恋い焦がれるジャック。
あることからアルジャノンはジャックの嘘を見抜き問いつめると、田舎ではジャックと名乗り若い娘セシリーの後見人であることを打ち明ける。
これを知ったアルジャノンはセシリーに興味を持ち、ジャックの弟「アーネスト」になりすましてセシリーを訪ねるのだが・・・。

 

▼観劇日程
1月24日(金)夜公演
1月25日(土)昼公演
1月26日(日)昼公演

 

文化庁委託事業 2019年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
日本の演劇人を育てるプロジェクト、文化庁海外研修の成果公演。
文化庁新進芸術家海外研修制度により研修を行った若手芸術家に研修成果を発表する機会を提供するという事業です。


<全体の感想>
 「チャイメリカ」以来およそ1年ぶりの池岡さん舞台出演作!!!!
 2019年は実はドラマにはちょくちょく出演されていたんだけど、相対的に現場で応援できる機会が少なくて、だから発表があったときは本当に嬉しかったです。
 しかも文化庁から正式に採択された事業の成果公演にゲストなんて、手堅いところから呼んでもらえたというのが、ファンとして誇らしいし嬉しい。実績と素行の良さを評価されたと捉えて良いのかな!

 作品は、愛に溢れたにぎやかなコメディで、ドタバタ騒動からの文句なしのハッピーエンド。
 嘘と誤解と偶然から生まれた騒動がはじけた時、舞台も客席もみんな笑顔になれる。
 イギリスらしいウィットと風刺に富んだ展開、長く独特でそれでいて癖になる台詞回し。
 散りばめられた伏線がラストで一気呵成に繋がる心地よさが、喜劇の醍醐味という感じ。

 オスカー・ワイルドと言えば、悲劇の戯曲「サロメ」(吹奏楽経験者なら9割が「ヨカナーンの首を!」って叫ぶやつ/余談)の印象しかなくて、だから喜劇と言われても最初はあんまりピンと来なかったんですよね。でも、調べてみたらこの作品、オスカー喜劇の最高峰として語り継がれているとか。
 当時のイギリス階級社会への風刺(そしてそれは今でも多くの部分で通用する)、人間の欲や保身に対する鋭い切りこみ、ご都合主義に思えるほど気持ちよくキレイに回収される伏線など、本当に作りこまれているし、時代を超えて受け継がれる作品なんだなあと思います。

 

役者さんたちの個性が炸裂!
 もちろん観劇のきっかけは池岡さん目当てだったわけだけど、それぞれキャリアのある役者さんたちの実力に圧倒され通し。個性的な登場人物たちが本当にそこで生きているみたい。独特な長台詞を圧倒的テンポ感で言い切ってしまう、8人の噛まない日本人。
 みなさん実力派で、堂々と安定した、力のあるお芝居でした。特に、出演時間は短いながら、圧倒的な存在感を見せつける「ブラックネル卿夫人」役の井上薫さんの演技が絶妙。詳しくは後述。
 本格的で贅沢な演劇を見せていただいたわあ…と、しばらく余韻が後を引きました。

 

○ラストまで客席だけが真実を知っている、まさに喜劇
 あらすじにもあるとおり、物語の縦軸は、親友同士のジョンとアルジャノンが、2人とも「アーネスト」という偽名を名乗ることで起こる誤解と勘違い。さらに、2人がお互いにゆかりのある女性に恋をすることで巻き起こる横軸のドタバタ騒動。
 富豪の娘であるグウェンドレンに恋い焦がれるジョン。グウェンドレンの従兄弟でもあるアルジャノンは、ジョンが後見している少女・セシリーに一目ぼれ。グウェンドレンとセシリーはそれぞれからの求愛を受け入れるも、それは2人が名乗る「アーネスト」という偽名ありき。2人とも「アーネスト」という名前の男性から求婚されることを夢見ていたのだった…。
 2組の男女の恋の行方と、ジョンの出生の秘密が絶妙に絡み合って起こるちぐはぐな事件に、真実を知っている観客だけがニヤニヤできるという仕掛け。すべてが明らかになって、畳み掛けるようにハッピーなクライマックスに向かっていく様は気持ちがいいほどの怒涛。

 

○イギリス古典演劇の魅力満載!
 イギリス古典演劇らしい、直訳したような持って回った言い回しが魅力的。新潮文庫版(西村孝次/訳)と照らし合わせると、驚くほど原典通り。現代ではわかりづらい言葉が修正されていたり(修身→道徳、とか)、衣装や小物が現代風(電報→スマホ、とか)だったりするほかは、一言一句そのとおり。舌を噛みそうな長台詞も、そのまんま。
 池岡さんが出演された「十二夜」の時も思ったけれど、ほとんど作り変えることなく現代に通用する人間像を描き出すシェークスピアもオスカーも何者…。「僕の名前はいかにもジョンです。もう、長年、ジョンです。」「少し人手を借りはするけど。」「バンベリーは今日の午後、殺しちゃいました!木端微塵になっちゃいました!」「わたくしの知る限り、あのかたは四十の年におなりになってからずっと三十五でしてね。」などなど、現代アレンジの中で面白おかしく改変されたんだろうなと思ってた台詞が、実は原典そのままだったのは意外でした。

 台詞の長さの一例として、母親に結婚を反対された時のグウェンドレンのセリフがこちら。

「アーネスト、あたしたちね、結婚できないかもしれなくってよ。ママのあの顔色じゃあ、とてもできそうもないわ。ちかごろの親なんて、子どものいうことをてんで聞こうとしないのね。若者を尊敬するあの古風な習慣は、どんどんすたれつつあるわ。ママに向かっていくつか言い分を通したことあるけれど、それも三つになるまでだったのよ。でもねえ、ママの反対でふたりが夫婦になれず、あたしがだれかほかの人と結婚する、しかも、なんべんも結婚するにしても、たとえママがどんなことをしようと、あなたにたいする永遠の愛情を変えることはできないわよ。」

 …………。

「ママに結婚を反対されたけど、ぜーんぜん関係ない!あなただけ愛してる!」をこんなに言葉を尽くして表現するんですよ。登場人物みんなこんな感じ。婉曲・皮肉・嫌味・反語のすべてを網羅したセリフ回し。癖になるんだこれが。

○舞台演出について
 特徴的だったのは舞台のつくり。通常は袖として隠れている上手側・下手側の裏側が、仕切りが何もないから全部見えてる。小劇場と言って良い、客席数も少なく、舞台と客席がそもそも近いので、役者がハケた先とか、小道具を整理しているところとかが丸見えで、最初はちょっと戸惑いが…。
 進むにつれて目が慣れてきたのと、だんだんそれも込みでの演出のように思えてきたので、後半は出待ちしている池岡さんがあまりにナチュラルなとことかを目で追いながら見てました。
 確か大きく分けて3幕くらいあるんだけど、舞台転換も楽しくて、完全には暗転せず、小人さんイメージ?の黒子さんたちが全部見せでテキパキと転換していく。場合によっては役者さんも転換に加わる。手作りのあったかいイメージ。

 

○とにかく可愛いヒロイン2人
 ヒロイン2人はベクトル真逆の可愛さと、共通する芯の強さが魅力的!!
 洗練された都会の女性なグウェンドレンと、田舎でのびのびと育ちながらもしっかりとした教育を受けているセシリー。この2人が出会ってからのやりとりがジェットコースターみたいに楽しい!
 2人とも出会ってすぐに社交的・友好的な態度で接し始めるんだけど、どうもお互いに「アーネスト」という名前の男性から求婚されているらしい(真実は、それぞれ「アーネスト」と名乗っているジョンとアルジャノン)ことがわかってくると途端に雲行きが怪しくなり、明らかに猜疑心と嫉妬が態度に現れてしまう。セシリーがグウェンドレンの紅茶に大量の砂糖を入れて嫌がらせしたり、しまいには大声での言い合いに。
 でも絶対に言葉遣いは乱れない。こんなに上品なハブとマングース対決は後にも先にもない。面白すぎるので思わず一部載せちゃう。

セシリー「なにか勘違いしてらっしゃるに違いないと思いますわ。アーネストは、かっきり10分前に、あたしに結婚を申し込んだのですよ。」
グウェンドレン「ほんとうにとてもおかしな話だこと。だってあの人、きのうの午後5時30分に、自分の妻になってくれって言ったんだもん。この件を確かめたいとお思いでしたら、どうぞそうしてちょうだい。あなたを少しでもがっかりさせるようだったら、ねえセシリー、ほんとにお気の毒ですけれど、どうやらあたしのほうに優先権がありそうね。」
「あなたに少しでも精神的もしくは肉体的な苦悶を与えるようだったら、ねえグウェンドレン、いうにいえないほど心苦しいんですけれど、これだけははっきり申し上げておかなくてはと思いますわ。あなたに結婚の申し込みをした後で、アーネストは明らかに心変わりしたんだと。」
「かわいそうに、あの人が罠にかかってなにかばかばかしい約束でもしたんなら、ただちに、断固として助け出すのが、あたしの義務だと思うわ。」
「あの人がたとえどんな不運にかかっていらしたにせよ、結婚してからそのことであの人を責めるようなことはけっしてないわ。」
「罠って、カーデューさん、あたしのことをおっしゃってるの?失礼よ。もうこうなったら、思ってることを洗いざらいぶちまけるのが、道徳的義務以上のものになるわ。ひとつの快楽になるわ。」
「あなたはね、フェアファックスさん、あたしがアーネストを罠にかけて婚約させたなんておっしゃるの?あなたこそどうなのよ?もうこうなったら、礼儀のなんのってうわっつらの仮面などつけてる場合じゃないわ。」

 怖い。笑

 そして誤解が解け、男性2人が偽名を使っていたことが明るみに出ると、5分前までの言い合いが嘘のように連帯し、「あたしたち2人とも酷い詐欺にかかったのよ!」「かわいそうに傷つけられたセシリー!」「辱められた優しいグウェンドレン!」って仲良し姉妹みたいにハグしあうの現金すぎて何回見ても爆笑しちゃう。
 そんなことを言いながらも恋人のことは結局大好きで、必死に弁解されると食い気味に赦しちゃうのもいとかわゆき。


○Siriとセシリーの意外な関係が話題に
 今回おもしろいなと思ったのは、受付でいただくパンフレットやチラシに混ざって、公演の注意書きが書かれた1枚の紙。
 ふつう、「飲食や私語はおやめください」「携帯電話は電源をお切りください」っていうまあ一般的な注意が書いてあると思うじゃないですか。この公演は少し違っていて、

「『セシリー』という登場人物がいるので、Siriが反応するかもしれないから、スマホを切っておいてね」

というもの。
 ええーーー今どきはそんなところにまで注意しなきゃいけないんだ、Siri高精度すぎでしょうよ、とびっくりしていたら、数日後にその注意書きを乗せたあるツイートがバズっていた…やっぱり印象に残るよね、これ。
 稽古場でめちゃくちゃ反応してたらしいです。


<以下、役者さんについて個別にあれこれ>

【ジョン・ワージング役/采澤靖起さん】
・さわやか主人公。スタイルがよくておみ足が長い。
・落ち着いてるし、常識は気にするし、出自や人間関係にそれなりに懊悩するし、一番人間らしい人。でも、やっていることはアルジャノン以上の大胆なバンベリー主義(でっち上げをして二重生活を楽しむ)者。
・アルジャノンとの丁々発止は芸術的だし、グウェンドレンへのデレデレは観客が恥ずかしくなるほどだし、そうかと思うとセシリーへは保護者然として接するなど、いろんな顔のある方。
・クライマックスでは、様々な偶然が重なり、最後にはまさかのブラックネル卿夫人の口からジョンの出自が明らかになる。すべてがつながり、今まで「嘘」だと思っていたことが実はすべて結果的に「本当」であったことがわかって、コペルニクス的転回であらゆる問題がすべて解決してしまうのだけど、ラストにジョンが「何よりも、『まじめが肝心』ってことがね」とドヤ顔でタイトルを回収して全てをかっさらってしまう。あざやかな幕切れに大拍手。


【グウェンドレン・フェアファックス役/那須凜さん】
・可愛くてお顔が小さく、真っ白で清楚なスーツの立ち姿が綺麗。都会の箱入りソフィスティケーテッドレディ。意志が強くて、自分の可愛さと魅力もわかっていて、理想を追い続けるつよい子。
・なのに、ジョンといちゃつく様はアルジャノンじゃなくても胸焼けするくらい甘くて可愛い。
・支配的で封建的な母親であるブラックネル卿夫人に育てられているにも関わらず、自分で決めたことにはまっすぐで一途。中盤であっさり単身ワージング邸に乗り込んできたけど、家出してきたってことだし、それって実はお嬢様としてはすごい覚悟だったのでは…?
・ギャグ要素もかなり担っていて、コメディエンヌみたいに表情筋が動く。ほかの役の演技も見てみたい女優さん。セシリーとの対決の口論のテンポと滑舌が良すぎるし、上品と滑稽の揺れ動きが絶妙でした。


【セシリー・カーデュー役/大川永さん】
・世間の話題をさらったSiriの人。
・この世の「可愛い」を全部集めて、マフィン生地に練り込んで焼いたような天使。ただし、まぶされてるのはお砂糖じゃなくてスパイス。つよいぞ!
・天真爛漫で裏表がなく、誰にでも友好的で親切、お勉強はだいきらい。少女漫画なら間違いなく主人公の圧倒的光属性なんだけど、光が強すぎてちょっぴり思い込みが激しかったり、はかりごとの気配を察せずに正面から正論を言ってしまったり、やっぱり喜劇向きのキャラクター。
・アルジャノンとのシーンが全部、うれしい!たのしい!大好き!を地で行きすぎて思い出しニヤニヤしちゃう。アルジャノンがセシリーの額に口づけするシーンが美しすぎるし、形のよいおでこが映える。
・お目目くりくり、花が咲くように笑い、鈴を振るように話す、素敵な方でした。赤いブラウスとスカートがこれ以上なく似合ってた。


【ブラックネル卿夫人役/井上薫さん】
・あたくし今回この女優さんの演技を拝見できたことが本当に僥倖と思ってますのよ…。
・特権意識とゴリゴリ保守の権化みたいな存在を、台詞だけでなく目線と所作で、口元で指先で、あれほど表現できる方が他にいるだろうか(反語)。そこには本当にイギリス上流階級の自意識が形をなして立っていたように思う。この方が舞台上にいるのと、いないのとでは、全然印象が違う。
・お若いのに初老のご夫人役、目力マックス。威圧する時は秋霜烈日!みたいなバリッと通る声なのに、体裁を繕う時の全てわかっている猫なで声はいかにもイギリスの貴婦人という感じ。
・理不尽な厳格さに慄きつつ、セシリーが資産家とわかった途端、アルジャノンとの結婚をあっさり(しかもなんかお茶目な感じで)許したり、ジョンをめぐる経緯がすべて明らかになったあとはグウェンドレンとの抱擁を温かく見守ったり、華麗なる掌返しがすごい。だけど多幸感の中で何だか許せちゃう。これぞ演劇の妙。


【チャジブル師役/館野元彦さん】
【プリズム役/森下まひろさん】
【レイン役/メリマン役/荒谷清水さん】
若者たちの芝居をガッチリ脇で固める3人…と思いきや、こちらも個性爆発の3人。

・学者肌で慈悲の心があるけど思い込みも強いチャジブル牧師。登場した時のワイルドな髪型はいったい何だったんだろう。
・ラストで若い2組のカップルに交じって、ちゃっかりしっかりプリズム先生とくっついてたの笑った。

・セシリーの教育係で厳しい才女、いとけなさの残るセシリーを諌める堅い役回りかと思いきや、ラストに最大の爆弾を落とすプリズム先生。ある意味すべてのことの始まり。おっちょこちょいさんなんだから!
・教養があるようでちょっぴりズレていて、口うるさいし、鬱陶しくなりがちなキャラクターだけど、チャジブル先生に対してだけは乙女なのがちょうどいいバランス。どうしてそうなった。でもそれでいい。

・アルジャノン家とジョン家にそれぞれ仕える執事を1人で演じ、どちらも主人に振り回されまくる役回りのレイン/メリマン。
・せっかく用意したきゅうりサンドをアルジャノンに食べられたり、もしくは口に突っ込まれたり、主人に内緒でこっそり口に含んだ酒を思いっきり噴出してしまったり(会場じゅう酒の香りになった)、何だか不憫だけど、労働者階級ならではのしたたかさもある。
・ちょこちょこ細かい仕草で笑わせに来てた、かわいいおじちゃま。


【アルジャノン・モンクリーフ役/池岡亮介さん】
・26歳になった池岡さんもやっぱり可愛い。
・約1年ぶりの舞台、池岡さんが活き活きと舞台上で演じてらっしゃるだけで感涙してしまう限界オタクの私。しかも「チャイメリカ」「火星の二人」とシリアスめな舞台が続いたものだから、好きと公言している喜劇はさらに「柔道少年」までさかのぼって3年ぶりくらいでは?
・皮肉屋で軽薄でびっくりするほど恋愛脳、だけど周囲から愛されるアルジャノン。よく笑いよくしゃべりよく食べる。なんかずっと笑ってる。企み顔、愛想笑い、ごまかし、愛情表現、どれも全部楽しそうで素敵。
・バンベリーに象徴される2重生活を心から楽しみ、借金を重ねても折り重なるように届いた請求書を景気よく投げ飛ばす、刹那主義とも快楽主義とも取れる軽さ。けど(だからこそ?)、作中の登場人物の中で最もイキイキしてる。
・ところで結婚相手としてはかなり不安のある男だと思うんだけど、この人に決めちゃって大丈夫?セシリー?
・この人もかなりぶっ飛んでると思うんだけど、セシリーの少女らしい妄想癖にたじたじしていたのが可愛い。
・とはいえ、結婚を「セシリーが35歳になるまで待てる」と即答したのは何気に偉かった。セシリーのことは本当に大好き!が伝わってくるんだよなあ。出会って半日だけどな!将来尻に敷かれる気満々なのかもしれない。
・登場した時のピンクのVネック似合うし、ジャケットを着れば袖から除く手首が美しい。何度でも繰り返し言うけど池岡さんの手は、ラケットを操っていた頃から変わらず、この世で一番繊細で高貴で美しい(限界オタク)。
・2回言うけど、とにかくよく食べる。アルジャノンのもぐもぐタイム。こんなに舞台上でものを食べる作品初めて見たかもしれない。冒頭から伯母さんのために執事が用意したきゅうりサンドをぱくつき、ワージング家に行った後はマフィンをいくつも平らげてジョンをイラつかせる。よりによってマフィン…口ぱっさぱさにならない?台詞大丈夫?(大丈夫でした)思わず原作を確認したら、ト書きに「アルジャノン、依然として食い続ける」と記載があって笑いました。
・客席から「I was born to love you」をスマホで流しつつジョンと共に歌いながら登場するシーンが謎。無駄に楽しそう。とても美声。そしてサビに入った瞬間ぶった切られる。そのスマホ私物ですか??
・跪いた足にセシリーが乗ってプルプルするところとか、大げさに泣き真似をするとことか、結婚が絶望的になって落ち込むジョンの前で結婚行進曲を熱演しちゃうとか、会場の笑いを計画通りにきちっとさらっていく。えらい。
・「腹ぺこだよぉ~」(可愛い)「なんて可愛いんだ!」(あなたが可愛い)「マフィンはいつだって落ち着き払って食うべきだ」(全くそのとおりですよね!)
・ラストですべてが明かされたあと、ジョンが「本当に弟がいたんだ!みなさん!こいつが僕の弟です!僕の不運な弟です!弟がいると思っていたんだ!」ってはしゃいでみんなに紹介しまくるときの笑い方が完全にただの池岡さんだった。あれは素で笑ってた。そこも込みで計算した演技だった。とにかく可愛い。
・ジョンが采澤さんでよかったし、アルジャノンが池岡さんでよかった。この2人を中心に作り上げる狂騒曲が楽しくないはずはなかった。このような舞台にキャスティングしていただいて、関係者の方に心から感謝したい。何目線かな。でも見出していただいてありがたい。


<まとめ>
文化庁委託事業でオスカー・ワイルド、一見カッチリと敷居の高そうな舞台だったけど、幕が上がったらノンストップ、グイグイ惹きつけてきて目が離せない素敵な時間でした。たった8人の出演者さんたちにギュッと凝縮された世界観。
・事務局さんに問い合わせたら円盤化の予定はないとのことで、こんな演劇体験を記憶の中でしか繰り返せないのは残念だけど、ある意味とっても贅沢なことなのかも。何度も思い出して、ずっと忘れない思い出にしたい。
・こんな素敵な舞台とご縁を結んでくれた池岡さん、本当にすごいし心からありがとう。お疲れ様でした。私たちにとっても最高のバンベリーでした。

 


このコロナ騒ぎが終わったら…、俺、有り金を握りしめて演劇を見に行くんだ……。

#池岡さんの次の舞台は行ける日程全てチケを押さえた
#京都公演も当たり前のように行く所存

池岡亮介さんご出演履歴ふりかえり(2020年2月現在)

みなさんお久しぶりです。

 

 

いや本当にお久しぶりです。
約3年半ぶりの更新になります。
月日は流れましたが相変わらず池岡さんを推しております。

 

ふと気づけば、世間は令和も2年目。
実は書きかけで放置している舞台レポがたくさんあります。
気が付けばすでに夕陽伝以降ほぼアップしてないし。2015年やぞ!!

 

なぜできなかったかって?
………社畜だからさ………(シャア顔)

 

自分の中ですがすがしいほど平成が終わってない。
なのでここらでぽちぽち再開しようかと。
諦めかけちゃった夢にリベンジパパパパーリィイ(※別ジャンル)

 

とりあえず手近にできそうで備忘録になりそうなものとして、
池岡さんのこれまでのご出演歴や作品をまとめてみました。
書いた動機→ウィキペディア先生があんまりアテにならないから(結構レギュラー作品が抜けてたりする)。

 

ソースはご本人公式ページ、ウィキ、私の手元にある各種公演パンフ、私のHDDにある録画履歴等。
細かい抜けとかあるかもしれませんし、事実と違ったら素直にごめんなさいで。
(D2・D-BOYS全体としてのライブやイベントは除いてます)

個別にコメントしたいところですが、作品名だけバシバシ列挙していきます。

 

【凡例】
●/○=円盤化しているもの/していないものor未確認
☆=主演
♪=当ブログ内に感想記事があるもの

 

【舞台(役名/公演期間/メイン会場)】

D-BOYS STAGE2010 trial-2「ラストゲーム
 アンサンブル/2010年8-9月/青山劇場
●ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン
 海堂薫/2011-2012年/TOKYO DOME CITY HALL
●♪Dステ12th「TRUMP」
 ピエトロ・ロンド&ガ・バンリ/2013年1-2月/サンシャイン劇場
●♪タンブリング vol.4
 金沢勉/2013年8-9月/赤坂ACTシアター
●♪Dステ 14th「十二夜
 オリヴィア/2013年10月/本多劇場
●☆♪堀内夜あけの会「恐怖 タコ公園のタコ女」(※主演)
 シゲル/2014年5月/本多劇場
●♪涙を数える
 大佛聞多/2014年8月/サンシャイン劇場
〇☆♪つかこうへいTRIPLE IMPACT「ロマンス2015」(※ダブル主演)
 花村牛松/2015年2月/本多劇場
●☆♪*pnish* vol.14 舞台版『魔王JUVENILE REMIX』(※主演)
 安藤潤也/2015年4-5月/AiiA 2.5 Theater Tokyo
●♪時をかける少女
 竹村輝彦/2015年7-8月/サンシャイン劇場
●Dステ 17th「夕陽伝」
 毘流古/2015年10-11月/サンシャイン劇場
●残酷歌劇「ライチ☆光クラブ
 雷蔵/2015年12月/AiiA 2.5 Theater Tokyo
〇♪堀内夜あけの会「なりたい自分にな~れ!」
 早乙女愛之助/2016年5月/本多劇場
〇リーディングシアター「シスター」
 2017年
●Dステ20th「柔道少年」
 池岡亮介/2017年2月/ザ・スズナリ
●男水!
 神宮一虎/2017年5月/シアター1010
●関数ドミノ
 田宮尚偉/2017年10月/本多劇場
●火星の二人
 朝尾正哉/2018年4-6月/日比谷シャンテ
○CHIMERICA-チャイメリカ
 若き日のヂァン・リン/2019年2月-4月/世田谷パブリックシアター
○まじめが肝心
 アルジャノン/2020年1月/恵比寿エコー劇場
○「4」(予定)
 2020年5月~6月/シアタートラム他 

【映画(役名/公開年/監督)】
●ポールダンシングボーイ☆ず
 イケオカ/2011年/金子修介
●俺たちの明日
 斉藤健二/2014年/中島良
●☆♪1/11 じゅういちぶんのいち
 安藤ソラ/2014年/片岡翔
●♪コープスパーティー
 持田哲志/2015年/山田雅史
●♪ガールズ・ステップ
 バスケ部員/2015年/川村泰祐
●♪コープスパーティー Book of Shadows
 持田哲志/2016年/山田雅史

【テレビドラマ(役名/放送日・期間/放送局)】
〇♪ライドライドライド
 永浜昴/2014年9月24日/NHK-BSプレミアム
赤と黒のゲキジョー 三面記事の女たち -愛の巣-
 放火した少年/2015年2月20日/フジテレビ
〇だから荒野
 2015年1月11日/NHKプレミアム
〇沈黙法廷(1・2話)
 漫画喫茶店員/2017年9月24日・10月1日/WOWOW
●メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断(※レギュラー)
 藤本修二/2016年10-12月/関西テレビ・フジテレビ
●男水!(※レギュラー)
 神宮一虎/2017年1-3月/日本テレビ
〇空腹アンソロジー
 主人公の恋人/2016年3月13日/テレビ東京
〇本日は、お日柄もよく
 2017年1月14日-2月4日/WOWOW
我が家の問題(2話)
 鈴木宏/2018年2月11日/NHK
●グッド・ドクター(※レギュラー)
 野々村勇/2018年7-9月/フジテレビ
〇捜査会議はリビングで!(4話)
 ひったくり犯/2018年8月5日/NHK-BSプレミアム
●獣になれない私たち(3・5・8・9話)
 野沢/2018年10月-12月/日本テレビ
●トレース~科捜研の男~(1話)
 越智俊介/2019年1月7日/フジテレビ
パーフェクトワールド(※レギュラー)
 沢田一馬/2019年4月-6月/関西テレビ
○あなたの番です-番外編・過去の扉
 松井英士/2019年9月8日・15日配信/Huluオリジナル
●FLY!BOYS!FLY!僕たち、CAはじめました
 早乙女のモデル時代の同僚/2019年9月24日/関西テレビ 
○グランメゾン東京(※6話からレギュラー)
 岩城淳/2019年10月-12月/TBS
○ケイジとケンジ(5話)
 伊勢谷徹/2020年2月13日/テレビ朝日

 

【バラエティ】
●D2のメシとも!
 2011年8月-9月/朝日放送
●TV・局中法度!
 永倉新八ほか/2012年10月-2013年3月/テレビ神奈川
○芸能人アカペラ選手権 ハモネプ☆スターリーグ
 2012年11月20日/フジテレビ
○芸能界特技王決定戦TEPPEN2013 Summer炎
 2013年6月1日/フジテレビ

 

【映像作品】
●D2 first message #4 池岡亮介×志尊淳"Endless Summer"

 

【その他】
ネスカフェ「ご当地フローズンカップ(中部代表)」レシピ動画
 2014年7月/YouTube公開(現在は終了)
早見沙織「新しい朝」Music Video
 2018年8月26日/YouTube公開

 

【書籍】
・D2 first~Always~
 2012年9月18日/学研パブリッシング 
・プリンスシリーズD-BOYSコレクション 池岡亮介ファースト写真集
 2014年5月13日/学研パブリッシング

 

以上、細かいものもそれなりに拾ったつもりですが、
抜けに気づいたらそっと付け足していこうと思います。
思い返せばそれぞれの作品に思い入れもあり、コメントも残したいところですが、
とりあえず一覧化することが目的だったので満足です!