文化庁委託事業 舞台「まじめが肝心」感想レポ

みなさんこんにちは。

いかがお過ごしですか。大丈夫ですか。この日々。
コで始まってナで終わるポッと出の若造のせいで、エンタメ界隈も大変な騒ぎと聞きます。

かくいう私も2007年のゲキレンジャーから12年間通い続けたスーパー戦隊素顔の戦士公演観劇記録がついに途切れたり、池岡さんゲスト出演予定だった「十二夜」アフタートークが当日中止になったりと、人並みに憂き目(※)に合っています。

※とはいえ騒ぎが大きくなってからは、中止にならなくてもあきらめるつもりでいました。
 仮に万が一自分が例のウイルスに関わるようなことがあれば、今の世論から言ってまず社会的な死は避けられないし、巻き添えで職場が機能停止するし、場合により公式に迷惑がかかるし、社会的に死んでしまっては界隈を応援(主に諭吉的な意味で)することができなくなるので。
 諭吉は大事だ。

十二夜」に関しては個人的に思い入れもあり(当ブログ2013年10月12日の記事参照)、公式もギリギリまで調整してくれていたようなので、残念な思いもひとしおですが、仕方ない、仕方ないんや……。
池岡さんのオリヴィア時代のお話し聞きたかったけど、碓井君のヴァイオラ裏話も聞きたかったけど、仕方ない。
こんなに中止続出では、大丈夫なんだろうか、あの人もこの人も。
オタクはよく「推しのATMになりたい」「推しの口座番号を知りたい」と言いますが、今ほど切実に願ったことはありません。
頼むから推しの生活費を定期的に振り込ませてくれ。私は三食塩むすびでもいいから。

げににっくきはコロナウイルス
サンドバックに浮かんで消える憎いあんちくしょう。
たたけ!たたけ!たたけ~!!
俺らにゃオタクの血が騒ぐ~~!!
あしたはどっちだ(マジでどっちだ)

というわけで、1月中に行けた池岡さん舞台のレポを書いて寂しさを紛らわせています。
かなり久しぶりの舞台でもあったので、どうしても初日から参加したくて、直前まで連日残業して何とか仕事を終わらせ、時間給をもぎとり、ウッキウキで向かった金曜日でした。
今改めて思う。なんて幸せな3日間だったんだろう。

今回の件で再確認させられましたが、私にとって、日々責任を持って仕事を頑張ったり、嫌なこと、つらいことがあっても時間をかけて乗り越えたり、そんな力を与えてくれるのは、間違いなく娯楽であり、文化であり、推し俳優であり、心揺さぶられる作劇であったりするのです。
演劇業界の皆さま、今はお辛いでしょうが…、微力ながら、近いうちに必ずや恩返しに行きます。

 

▼公演概要
作:オスカー・ワイルド
翻案演出:大澤遊
出  演:釆澤靖起(文学座)、池岡亮介那須凜(青年座)、大川永(イッツフォーリーズ)、
     井上薫、館野元彦(銅鑼)、森下まひろ、荒谷清水(南河内万歳一座
公演期間:令和2年1月24日(金)~30日(木)
会  場:恵比寿・エコー劇場

 

▼公式サイト
http://www.gekidankyo.or.jp/performance/2019/2019_06.html

 

▼あらすじ(公式HPより)
嘘から始まるまじめな恋のドタバタコメディ!
田舎に住むジャックは架空の弟「アーネスト」を訪ねる名目で、たびたびロンドンへ遊びにでかけていた。ロンドンでは「アーネスト」と名乗り、友人アルジャノンのいとこであるグウェンドレンに恋い焦がれるジャック。
あることからアルジャノンはジャックの嘘を見抜き問いつめると、田舎ではジャックと名乗り若い娘セシリーの後見人であることを打ち明ける。
これを知ったアルジャノンはセシリーに興味を持ち、ジャックの弟「アーネスト」になりすましてセシリーを訪ねるのだが・・・。

 

▼観劇日程
1月24日(金)夜公演
1月25日(土)昼公演
1月26日(日)昼公演

 

文化庁委託事業 2019年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
日本の演劇人を育てるプロジェクト、文化庁海外研修の成果公演。
文化庁新進芸術家海外研修制度により研修を行った若手芸術家に研修成果を発表する機会を提供するという事業です。


<全体の感想>
 「チャイメリカ」以来およそ1年ぶりの池岡さん舞台出演作!!!!
 2019年は実はドラマにはちょくちょく出演されていたんだけど、相対的に現場で応援できる機会が少なくて、だから発表があったときは本当に嬉しかったです。
 しかも文化庁から正式に採択された事業の成果公演にゲストなんて、手堅いところから呼んでもらえたというのが、ファンとして誇らしいし嬉しい。実績と素行の良さを評価されたと捉えて良いのかな!

 作品は、愛に溢れたにぎやかなコメディで、ドタバタ騒動からの文句なしのハッピーエンド。
 嘘と誤解と偶然から生まれた騒動がはじけた時、舞台も客席もみんな笑顔になれる。
 イギリスらしいウィットと風刺に富んだ展開、長く独特でそれでいて癖になる台詞回し。
 散りばめられた伏線がラストで一気呵成に繋がる心地よさが、喜劇の醍醐味という感じ。

 オスカー・ワイルドと言えば、悲劇の戯曲「サロメ」(吹奏楽経験者なら9割が「ヨカナーンの首を!」って叫ぶやつ/余談)の印象しかなくて、だから喜劇と言われても最初はあんまりピンと来なかったんですよね。でも、調べてみたらこの作品、オスカー喜劇の最高峰として語り継がれているとか。
 当時のイギリス階級社会への風刺(そしてそれは今でも多くの部分で通用する)、人間の欲や保身に対する鋭い切りこみ、ご都合主義に思えるほど気持ちよくキレイに回収される伏線など、本当に作りこまれているし、時代を超えて受け継がれる作品なんだなあと思います。

 

役者さんたちの個性が炸裂!
 もちろん観劇のきっかけは池岡さん目当てだったわけだけど、それぞれキャリアのある役者さんたちの実力に圧倒され通し。個性的な登場人物たちが本当にそこで生きているみたい。独特な長台詞を圧倒的テンポ感で言い切ってしまう、8人の噛まない日本人。
 みなさん実力派で、堂々と安定した、力のあるお芝居でした。特に、出演時間は短いながら、圧倒的な存在感を見せつける「ブラックネル卿夫人」役の井上薫さんの演技が絶妙。詳しくは後述。
 本格的で贅沢な演劇を見せていただいたわあ…と、しばらく余韻が後を引きました。

 

○ラストまで客席だけが真実を知っている、まさに喜劇
 あらすじにもあるとおり、物語の縦軸は、親友同士のジョンとアルジャノンが、2人とも「アーネスト」という偽名を名乗ることで起こる誤解と勘違い。さらに、2人がお互いにゆかりのある女性に恋をすることで巻き起こる横軸のドタバタ騒動。
 富豪の娘であるグウェンドレンに恋い焦がれるジョン。グウェンドレンの従兄弟でもあるアルジャノンは、ジョンが後見している少女・セシリーに一目ぼれ。グウェンドレンとセシリーはそれぞれからの求愛を受け入れるも、それは2人が名乗る「アーネスト」という偽名ありき。2人とも「アーネスト」という名前の男性から求婚されることを夢見ていたのだった…。
 2組の男女の恋の行方と、ジョンの出生の秘密が絶妙に絡み合って起こるちぐはぐな事件に、真実を知っている観客だけがニヤニヤできるという仕掛け。すべてが明らかになって、畳み掛けるようにハッピーなクライマックスに向かっていく様は気持ちがいいほどの怒涛。

 

○イギリス古典演劇の魅力満載!
 イギリス古典演劇らしい、直訳したような持って回った言い回しが魅力的。新潮文庫版(西村孝次/訳)と照らし合わせると、驚くほど原典通り。現代ではわかりづらい言葉が修正されていたり(修身→道徳、とか)、衣装や小物が現代風(電報→スマホ、とか)だったりするほかは、一言一句そのとおり。舌を噛みそうな長台詞も、そのまんま。
 池岡さんが出演された「十二夜」の時も思ったけれど、ほとんど作り変えることなく現代に通用する人間像を描き出すシェークスピアもオスカーも何者…。「僕の名前はいかにもジョンです。もう、長年、ジョンです。」「少し人手を借りはするけど。」「バンベリーは今日の午後、殺しちゃいました!木端微塵になっちゃいました!」「わたくしの知る限り、あのかたは四十の年におなりになってからずっと三十五でしてね。」などなど、現代アレンジの中で面白おかしく改変されたんだろうなと思ってた台詞が、実は原典そのままだったのは意外でした。

 台詞の長さの一例として、母親に結婚を反対された時のグウェンドレンのセリフがこちら。

「アーネスト、あたしたちね、結婚できないかもしれなくってよ。ママのあの顔色じゃあ、とてもできそうもないわ。ちかごろの親なんて、子どものいうことをてんで聞こうとしないのね。若者を尊敬するあの古風な習慣は、どんどんすたれつつあるわ。ママに向かっていくつか言い分を通したことあるけれど、それも三つになるまでだったのよ。でもねえ、ママの反対でふたりが夫婦になれず、あたしがだれかほかの人と結婚する、しかも、なんべんも結婚するにしても、たとえママがどんなことをしようと、あなたにたいする永遠の愛情を変えることはできないわよ。」

 …………。

「ママに結婚を反対されたけど、ぜーんぜん関係ない!あなただけ愛してる!」をこんなに言葉を尽くして表現するんですよ。登場人物みんなこんな感じ。婉曲・皮肉・嫌味・反語のすべてを網羅したセリフ回し。癖になるんだこれが。

○舞台演出について
 特徴的だったのは舞台のつくり。通常は袖として隠れている上手側・下手側の裏側が、仕切りが何もないから全部見えてる。小劇場と言って良い、客席数も少なく、舞台と客席がそもそも近いので、役者がハケた先とか、小道具を整理しているところとかが丸見えで、最初はちょっと戸惑いが…。
 進むにつれて目が慣れてきたのと、だんだんそれも込みでの演出のように思えてきたので、後半は出待ちしている池岡さんがあまりにナチュラルなとことかを目で追いながら見てました。
 確か大きく分けて3幕くらいあるんだけど、舞台転換も楽しくて、完全には暗転せず、小人さんイメージ?の黒子さんたちが全部見せでテキパキと転換していく。場合によっては役者さんも転換に加わる。手作りのあったかいイメージ。

 

○とにかく可愛いヒロイン2人
 ヒロイン2人はベクトル真逆の可愛さと、共通する芯の強さが魅力的!!
 洗練された都会の女性なグウェンドレンと、田舎でのびのびと育ちながらもしっかりとした教育を受けているセシリー。この2人が出会ってからのやりとりがジェットコースターみたいに楽しい!
 2人とも出会ってすぐに社交的・友好的な態度で接し始めるんだけど、どうもお互いに「アーネスト」という名前の男性から求婚されているらしい(真実は、それぞれ「アーネスト」と名乗っているジョンとアルジャノン)ことがわかってくると途端に雲行きが怪しくなり、明らかに猜疑心と嫉妬が態度に現れてしまう。セシリーがグウェンドレンの紅茶に大量の砂糖を入れて嫌がらせしたり、しまいには大声での言い合いに。
 でも絶対に言葉遣いは乱れない。こんなに上品なハブとマングース対決は後にも先にもない。面白すぎるので思わず一部載せちゃう。

セシリー「なにか勘違いしてらっしゃるに違いないと思いますわ。アーネストは、かっきり10分前に、あたしに結婚を申し込んだのですよ。」
グウェンドレン「ほんとうにとてもおかしな話だこと。だってあの人、きのうの午後5時30分に、自分の妻になってくれって言ったんだもん。この件を確かめたいとお思いでしたら、どうぞそうしてちょうだい。あなたを少しでもがっかりさせるようだったら、ねえセシリー、ほんとにお気の毒ですけれど、どうやらあたしのほうに優先権がありそうね。」
「あなたに少しでも精神的もしくは肉体的な苦悶を与えるようだったら、ねえグウェンドレン、いうにいえないほど心苦しいんですけれど、これだけははっきり申し上げておかなくてはと思いますわ。あなたに結婚の申し込みをした後で、アーネストは明らかに心変わりしたんだと。」
「かわいそうに、あの人が罠にかかってなにかばかばかしい約束でもしたんなら、ただちに、断固として助け出すのが、あたしの義務だと思うわ。」
「あの人がたとえどんな不運にかかっていらしたにせよ、結婚してからそのことであの人を責めるようなことはけっしてないわ。」
「罠って、カーデューさん、あたしのことをおっしゃってるの?失礼よ。もうこうなったら、思ってることを洗いざらいぶちまけるのが、道徳的義務以上のものになるわ。ひとつの快楽になるわ。」
「あなたはね、フェアファックスさん、あたしがアーネストを罠にかけて婚約させたなんておっしゃるの?あなたこそどうなのよ?もうこうなったら、礼儀のなんのってうわっつらの仮面などつけてる場合じゃないわ。」

 怖い。笑

 そして誤解が解け、男性2人が偽名を使っていたことが明るみに出ると、5分前までの言い合いが嘘のように連帯し、「あたしたち2人とも酷い詐欺にかかったのよ!」「かわいそうに傷つけられたセシリー!」「辱められた優しいグウェンドレン!」って仲良し姉妹みたいにハグしあうの現金すぎて何回見ても爆笑しちゃう。
 そんなことを言いながらも恋人のことは結局大好きで、必死に弁解されると食い気味に赦しちゃうのもいとかわゆき。


○Siriとセシリーの意外な関係が話題に
 今回おもしろいなと思ったのは、受付でいただくパンフレットやチラシに混ざって、公演の注意書きが書かれた1枚の紙。
 ふつう、「飲食や私語はおやめください」「携帯電話は電源をお切りください」っていうまあ一般的な注意が書いてあると思うじゃないですか。この公演は少し違っていて、

「『セシリー』という登場人物がいるので、Siriが反応するかもしれないから、スマホを切っておいてね」

というもの。
 ええーーー今どきはそんなところにまで注意しなきゃいけないんだ、Siri高精度すぎでしょうよ、とびっくりしていたら、数日後にその注意書きを乗せたあるツイートがバズっていた…やっぱり印象に残るよね、これ。
 稽古場でめちゃくちゃ反応してたらしいです。


<以下、役者さんについて個別にあれこれ>

【ジョン・ワージング役/采澤靖起さん】
・さわやか主人公。スタイルがよくておみ足が長い。
・落ち着いてるし、常識は気にするし、出自や人間関係にそれなりに懊悩するし、一番人間らしい人。でも、やっていることはアルジャノン以上の大胆なバンベリー主義(でっち上げをして二重生活を楽しむ)者。
・アルジャノンとの丁々発止は芸術的だし、グウェンドレンへのデレデレは観客が恥ずかしくなるほどだし、そうかと思うとセシリーへは保護者然として接するなど、いろんな顔のある方。
・クライマックスでは、様々な偶然が重なり、最後にはまさかのブラックネル卿夫人の口からジョンの出自が明らかになる。すべてがつながり、今まで「嘘」だと思っていたことが実はすべて結果的に「本当」であったことがわかって、コペルニクス的転回であらゆる問題がすべて解決してしまうのだけど、ラストにジョンが「何よりも、『まじめが肝心』ってことがね」とドヤ顔でタイトルを回収して全てをかっさらってしまう。あざやかな幕切れに大拍手。


【グウェンドレン・フェアファックス役/那須凜さん】
・可愛くてお顔が小さく、真っ白で清楚なスーツの立ち姿が綺麗。都会の箱入りソフィスティケーテッドレディ。意志が強くて、自分の可愛さと魅力もわかっていて、理想を追い続けるつよい子。
・なのに、ジョンといちゃつく様はアルジャノンじゃなくても胸焼けするくらい甘くて可愛い。
・支配的で封建的な母親であるブラックネル卿夫人に育てられているにも関わらず、自分で決めたことにはまっすぐで一途。中盤であっさり単身ワージング邸に乗り込んできたけど、家出してきたってことだし、それって実はお嬢様としてはすごい覚悟だったのでは…?
・ギャグ要素もかなり担っていて、コメディエンヌみたいに表情筋が動く。ほかの役の演技も見てみたい女優さん。セシリーとの対決の口論のテンポと滑舌が良すぎるし、上品と滑稽の揺れ動きが絶妙でした。


【セシリー・カーデュー役/大川永さん】
・世間の話題をさらったSiriの人。
・この世の「可愛い」を全部集めて、マフィン生地に練り込んで焼いたような天使。ただし、まぶされてるのはお砂糖じゃなくてスパイス。つよいぞ!
・天真爛漫で裏表がなく、誰にでも友好的で親切、お勉強はだいきらい。少女漫画なら間違いなく主人公の圧倒的光属性なんだけど、光が強すぎてちょっぴり思い込みが激しかったり、はかりごとの気配を察せずに正面から正論を言ってしまったり、やっぱり喜劇向きのキャラクター。
・アルジャノンとのシーンが全部、うれしい!たのしい!大好き!を地で行きすぎて思い出しニヤニヤしちゃう。アルジャノンがセシリーの額に口づけするシーンが美しすぎるし、形のよいおでこが映える。
・お目目くりくり、花が咲くように笑い、鈴を振るように話す、素敵な方でした。赤いブラウスとスカートがこれ以上なく似合ってた。


【ブラックネル卿夫人役/井上薫さん】
・あたくし今回この女優さんの演技を拝見できたことが本当に僥倖と思ってますのよ…。
・特権意識とゴリゴリ保守の権化みたいな存在を、台詞だけでなく目線と所作で、口元で指先で、あれほど表現できる方が他にいるだろうか(反語)。そこには本当にイギリス上流階級の自意識が形をなして立っていたように思う。この方が舞台上にいるのと、いないのとでは、全然印象が違う。
・お若いのに初老のご夫人役、目力マックス。威圧する時は秋霜烈日!みたいなバリッと通る声なのに、体裁を繕う時の全てわかっている猫なで声はいかにもイギリスの貴婦人という感じ。
・理不尽な厳格さに慄きつつ、セシリーが資産家とわかった途端、アルジャノンとの結婚をあっさり(しかもなんかお茶目な感じで)許したり、ジョンをめぐる経緯がすべて明らかになったあとはグウェンドレンとの抱擁を温かく見守ったり、華麗なる掌返しがすごい。だけど多幸感の中で何だか許せちゃう。これぞ演劇の妙。


【チャジブル師役/館野元彦さん】
【プリズム役/森下まひろさん】
【レイン役/メリマン役/荒谷清水さん】
若者たちの芝居をガッチリ脇で固める3人…と思いきや、こちらも個性爆発の3人。

・学者肌で慈悲の心があるけど思い込みも強いチャジブル牧師。登場した時のワイルドな髪型はいったい何だったんだろう。
・ラストで若い2組のカップルに交じって、ちゃっかりしっかりプリズム先生とくっついてたの笑った。

・セシリーの教育係で厳しい才女、いとけなさの残るセシリーを諌める堅い役回りかと思いきや、ラストに最大の爆弾を落とすプリズム先生。ある意味すべてのことの始まり。おっちょこちょいさんなんだから!
・教養があるようでちょっぴりズレていて、口うるさいし、鬱陶しくなりがちなキャラクターだけど、チャジブル先生に対してだけは乙女なのがちょうどいいバランス。どうしてそうなった。でもそれでいい。

・アルジャノン家とジョン家にそれぞれ仕える執事を1人で演じ、どちらも主人に振り回されまくる役回りのレイン/メリマン。
・せっかく用意したきゅうりサンドをアルジャノンに食べられたり、もしくは口に突っ込まれたり、主人に内緒でこっそり口に含んだ酒を思いっきり噴出してしまったり(会場じゅう酒の香りになった)、何だか不憫だけど、労働者階級ならではのしたたかさもある。
・ちょこちょこ細かい仕草で笑わせに来てた、かわいいおじちゃま。


【アルジャノン・モンクリーフ役/池岡亮介さん】
・26歳になった池岡さんもやっぱり可愛い。
・約1年ぶりの舞台、池岡さんが活き活きと舞台上で演じてらっしゃるだけで感涙してしまう限界オタクの私。しかも「チャイメリカ」「火星の二人」とシリアスめな舞台が続いたものだから、好きと公言している喜劇はさらに「柔道少年」までさかのぼって3年ぶりくらいでは?
・皮肉屋で軽薄でびっくりするほど恋愛脳、だけど周囲から愛されるアルジャノン。よく笑いよくしゃべりよく食べる。なんかずっと笑ってる。企み顔、愛想笑い、ごまかし、愛情表現、どれも全部楽しそうで素敵。
・バンベリーに象徴される2重生活を心から楽しみ、借金を重ねても折り重なるように届いた請求書を景気よく投げ飛ばす、刹那主義とも快楽主義とも取れる軽さ。けど(だからこそ?)、作中の登場人物の中で最もイキイキしてる。
・ところで結婚相手としてはかなり不安のある男だと思うんだけど、この人に決めちゃって大丈夫?セシリー?
・この人もかなりぶっ飛んでると思うんだけど、セシリーの少女らしい妄想癖にたじたじしていたのが可愛い。
・とはいえ、結婚を「セシリーが35歳になるまで待てる」と即答したのは何気に偉かった。セシリーのことは本当に大好き!が伝わってくるんだよなあ。出会って半日だけどな!将来尻に敷かれる気満々なのかもしれない。
・登場した時のピンクのVネック似合うし、ジャケットを着れば袖から除く手首が美しい。何度でも繰り返し言うけど池岡さんの手は、ラケットを操っていた頃から変わらず、この世で一番繊細で高貴で美しい(限界オタク)。
・2回言うけど、とにかくよく食べる。アルジャノンのもぐもぐタイム。こんなに舞台上でものを食べる作品初めて見たかもしれない。冒頭から伯母さんのために執事が用意したきゅうりサンドをぱくつき、ワージング家に行った後はマフィンをいくつも平らげてジョンをイラつかせる。よりによってマフィン…口ぱっさぱさにならない?台詞大丈夫?(大丈夫でした)思わず原作を確認したら、ト書きに「アルジャノン、依然として食い続ける」と記載があって笑いました。
・客席から「I was born to love you」をスマホで流しつつジョンと共に歌いながら登場するシーンが謎。無駄に楽しそう。とても美声。そしてサビに入った瞬間ぶった切られる。そのスマホ私物ですか??
・跪いた足にセシリーが乗ってプルプルするところとか、大げさに泣き真似をするとことか、結婚が絶望的になって落ち込むジョンの前で結婚行進曲を熱演しちゃうとか、会場の笑いを計画通りにきちっとさらっていく。えらい。
・「腹ぺこだよぉ~」(可愛い)「なんて可愛いんだ!」(あなたが可愛い)「マフィンはいつだって落ち着き払って食うべきだ」(全くそのとおりですよね!)
・ラストですべてが明かされたあと、ジョンが「本当に弟がいたんだ!みなさん!こいつが僕の弟です!僕の不運な弟です!弟がいると思っていたんだ!」ってはしゃいでみんなに紹介しまくるときの笑い方が完全にただの池岡さんだった。あれは素で笑ってた。そこも込みで計算した演技だった。とにかく可愛い。
・ジョンが采澤さんでよかったし、アルジャノンが池岡さんでよかった。この2人を中心に作り上げる狂騒曲が楽しくないはずはなかった。このような舞台にキャスティングしていただいて、関係者の方に心から感謝したい。何目線かな。でも見出していただいてありがたい。


<まとめ>
文化庁委託事業でオスカー・ワイルド、一見カッチリと敷居の高そうな舞台だったけど、幕が上がったらノンストップ、グイグイ惹きつけてきて目が離せない素敵な時間でした。たった8人の出演者さんたちにギュッと凝縮された世界観。
・事務局さんに問い合わせたら円盤化の予定はないとのことで、こんな演劇体験を記憶の中でしか繰り返せないのは残念だけど、ある意味とっても贅沢なことなのかも。何度も思い出して、ずっと忘れない思い出にしたい。
・こんな素敵な舞台とご縁を結んでくれた池岡さん、本当にすごいし心からありがとう。お疲れ様でした。私たちにとっても最高のバンベリーでした。

 


このコロナ騒ぎが終わったら…、俺、有り金を握りしめて演劇を見に行くんだ……。

#池岡さんの次の舞台は行ける日程全てチケを押さえた
#京都公演も当たり前のように行く所存