キャラメルボックス30th vol.3「時をかける少女」感想レポ

昨年に引き続き、池岡さんがキャラメルボックスで客演されるということで観劇してきました。
もはやお馴染みとなったサンシャイン劇場。さらにお馴染みの加藤総指揮の前説。
昨夏の思い出もよみがえりつつ、暑くて熱いお芝居に浸ってきましたよ。
しかし、レポをハードディスクの中で温めすぎて、いつのまにか半年たって新年まで明けていました。
下手したらそろそろDVDでも出ようかという時期です。
ハッ……もしかして私も、時をかける少女……?(違います)

  • 公演概要

脚本:成井豊
演出:成井豊真柴あずき
原作:筒井康隆時をかける少女』(角川文庫)
出演:木村玲衣、西川浩幸、坂口理恵、岡田さつき、前田綾、大内厚雄、三浦剛、左東広之、鍛治本大樹、金城あさみ、毛塚陽介、関根翔太、近江谷太朗池岡亮介
※毛塚陽介と関根翔太はダブルキャスト

  • 公演日程

≪東京公演≫平成27年7月28日〜8月9日 池袋サンシャイン劇場
≪大阪公演≫平成27年8月20日〜8月24日 サンケイホールブリーゼ

  • 参考サイト

公式HP
http://www.caramelbox.com/stage/30th-3/
ぴあ記事
http://www.cinra.net/news/20150402-tokiwokakerushoujo

  • あらすじ(公式サイトより)

尾道マナツは高校2年の女の子。札幌で両親と暮らしている。8月、東京に住む伯母が病気で倒れたと聞き、看病のために東京へ行く。
伯母の芳山和子は、大学で薬学の研究をしていた。マナツは伯母に付き添って大学へ行き、そこで幼馴染の竹原輝彦と再会する。
その時、研究室で爆発事故が発生。目が覚めると、マナツと輝彦は一日前にいた。2人は事故のせいで、タイムリープしたのだ。
マナツの話を聞いた和子は、自分の高校時代を思い出す。32年前、和子は何度もタイムリープした。彼女にその能力をもたらしたのは、ケンという名の少年だった。

  • 観覧した公演

 8月8日 12:00〜  11列目下手側
 8月8日 19:00〜  11列目下手側
 8月9日 14:00〜  14列目上手側 東京千秋楽

  • ≪全体の感想≫

世代によって、原田知世さんのドラマだったり、細田守監督のアニメだったりを想起させる不朽の名作。
同じ筒井康隆さん原作の小説を基にしながらも、実写映画ともアニメとも違う、新しい「時をかける少女」でした。
新しいのに「正統な続編」という感じもするのが絶妙なところ。
原作小説の「タイムリープする少女」「未来から来た少年」の世界観をベースに新しい物語を作っているのはアニメと同じ。
この舞台はそこから踏み込んで、原作小説の切ないストーリーも回収しているのが素晴らしかったです。
舞台の主人公・マナツが「時をかける」物語であるとともに、かつて「時をかける少女」だった原作小説の主人公・和子の物語を美しく紡いでいます。

あらすじは上にもありますが、ざっくり以下のとおり。(※ネタバレです)

 ・タイムリープの記憶をなくし、大学の研究者になった和子(坂口理恵)と、その姪・マナツ(木村玲衣)、そしてマナツの幼馴染・輝彦(池岡亮介)が共に過ごす夏休み。
 ・ふとしたことで、マナツにタイムリープの能力が目覚める。能力の覚醒に関わった人物を調べていくうちに、和子も過去の記憶を取り戻し、当時、未来から来た少年・深町に恋しながらも、悲しい別れをしたことを思い出す。
 ・深町は実は、姿を変えてずっと和子の傍にいた。すべてを思い出した和子と深町が過ごす束の間の穏やかな時間。しかし、不治の病に侵されている和子を助けるため、記憶と引き換えに再度、深町は別れを告げる。
 ・そして、マナツの幼馴染・輝彦もまた、本物の輝彦の姿を借りた未来人だった。夏休みの間に2人は絆を強めていたものの、タイムトラベルを管理する法律に従って別れを選択する。輝彦はマナツの記憶を消し去るが、マナツは「すぐに見つけるよ」と誓う。


和子と深町の別れ、マナツと輝彦の別れ。さびしくて切ないけれど、希望もある。とても爽やかな気持ちになれました。
キャラメルボックスの脚本は、いつも温かくて、愛に溢れていて、心が溶けていくような感じがします。
マナツの一生懸命な姿、輝彦の優しさ、和子の健気さ、神石(=深町)の誠実さ。
家族の愛情や、仲間との友情。そういう血の通った感情が、すんなりと沁みてきます。
とてもすがすがしい気分で、希望に満ちたエンディングを楽しむことができました。

各所で評判になっているとおり、「タイムリープ」の表現がすごい。
要は「時間逆戻し」ということで、ビデオの巻き戻しみたいに、今までの流れと反対のことを高速でやるわけです。
これがとっても、とーっても緻密。本当にキュルキュル巻き戻っているみたい。しかもコミカル。
マナツ役の木村さんが顔芸よろしく表情豊かに演じているので、タイムリープのシーンは何度見ても笑えます。

そしてさすがキャラメル、照明の使い方や舞台セットの魅せ方、BGMの選択が秀逸でした。
開幕は、マナツがパソコンを打ち込んでいるところにサーッとスポット照明が落ちるところから。これが幻想的で綺麗。
そこからオープニングダンスに入り、登場人物全員をお目見え。上手・下手双方からキャストが歩いてきて、舞台上で思い思いにステップを踏んだり、ポーズを取ったり。BGMは原田真二さんの「タイム・トラベル」。「♪時間旅行のツアーはいかが?」という歌詞が本編にマッチしているのが憎い演出。甘くて切ないフォークの調べは一度聴いたら頭から離れませんでした。
メインのセットは3つのゾーンに分かれた回転式になっていて、シーンが変わるごとに、くるっと回して(しかも人力)場面転回する仕掛け。
それぞれのゾーンは至ってシンプルなセットなのに場面がわかりやすくて、複雑な時系列の説明をうまく補っていました。

あ、あと忘れちゃいけないのが、第二幕冒頭、和子の回想シーンに交じるキャラメル勢のダンス!
学生服を着てモブ的に動いていたと思ったら、急に軽やかなステップを踏み出すから爆笑してしまいました。
大内さんのキレのいい動きとか、西川さんの学生服姿とか、もうどこから突っ込んでいいかわからないです。


マナツの幼馴染で、和子の勤務する大学に通う大学生・輝彦。
と思わせておいて、実は現代版「未来から来た少年」。マナツの能力覚醒の真犯人です。
子どもの頃に亡くなった本物の「輝彦」の代わりに、家族や友人の記憶を改ざんして生活に溶け込んでいる。
マナツに対しては皮肉屋だけど、根本は真面目で面倒見の良い好青年。
重要なところでストーリーに関わっていて、温かみのあるキャラクターでした。
池岡さん、ここ1〜2年は一癖ある役(例:ヤク中、お侍、伯爵令嬢、ゲイ、超能力高校生)が多かったので、等身大の役って実は珍しい。ご自身も大学生ですしね。爽やかな笑顔を堪能させてもらいました。

昨年の「涙を数える」ではギャグ要素もかなり担っていたので、今回はどうかな?と思っていましたが、健在でした。
「無念…!」と古風な言い回ししつつ真顔で倒れていったり。
「君は、超能力者なのか〜い!?」とマスオさんばりに驚いてみたり。
「昭和生まれは話がくどい!」と昭和生まれの我々に喧嘩を売ってみたり。
「ここには誰もいませんよ…生きてる人はね?わー!わー!」と稲川潤二やってみたり。
池岡さんの言動で会場が笑いに包まれることが、もはや当たり前のようになっているのに未だに嬉しい。
客席やキャストからも温かい目で見てもらえているように感じて嬉しくなりました。

それもそのはず、キャラメルボックス加藤総指揮のツイッター(@KatohMasafumi)の御言葉を引用すれば、

「今回のこの役は、脚本の成井豊が去年の『涙を数える』で活躍してくれた池岡君に当てて、彼ならきっと凄くなる、という想定で書き下ろしたものです。原作にはない、いけぴーあってのキャラクターなのです」

何それすごい。脚本家さんに当て書きしていただけるなんて役者さん的にはどれほど嬉しいなんでしょうか。

輝彦が、この時代で関わった人々の記憶を消していくシーンがわたくし的には最大の山場。
それまでの人間関係の温かさが集約されていて、自然に泣けてきました。周りの席の人はみんな泣いてました。たぶん。
特に家族と相対するシーン!
この「輝彦」の記憶は、夭逝してしまった本物の「輝彦」をベースに作ったもの。その記憶を消すことは、家族から再び「輝彦」を奪ってしまうことになる。悲しみに沈んでいた以前の家族に戻ってしまう。何よりも輝彦自身が、この温かい家族に馴染みすぎて、離れがたい。
それまでのシーンで、この家族が明るくにぎやかに描かれていたから余計に。
でも輝彦は決行します。家族が再び前向きな気持ちを取り戻すことを願いながら。
「皆と一緒に暮らすことができて、僕は本当に幸せだった。いつまでもみんなと一緒にいたかった。もっと幸せになってください!親子『3人』で…!」と涙声で頭を下げて、キョトンとしている家族に魔法をかけます。(この辺で涙腺ゆるゆる)
この時の指先の動きが大変しなやかで綺麗。(なぜかここで涙腺決壊)
ちょうど池岡さん自身の家族構成とも重なり、かなり感情移入していたそうで。
想いの強さが伝わって、ストレートな感動が押し寄せます。
ちなみに大学の研究室仲間には「来年、浮気がバレて、うわーとか、えへへ、みたいな感じ(どんな感じだ)になりますよ」とありがたくない予言をしてから記憶を消します。お代官様もお人が悪い。

ひととおり関係者の記憶を消したら、ラストはマナツと輝彦の2人芝居。
マナツとの別れのシーンは、マナツの絞り出すような声と、輝彦の穏やかな眼差しの交錯に泣けます。
真実に気づいたマナツが「思い出した…輝くんは…輝くんは、5年前に死んだんだ…!」と振り絞るように吐露するところが切ない。
目の前にいる「輝彦」は、かつて幼い恋心を抱いていた輝彦ではない。
でも、この数日間一緒に過ごしたのは、間違いなく今のマナツにとっての「輝彦」。
「輝君は、輝君だよ…!」と迷いながらも口にするマナツ。
記憶を封じられることを受け入れてからも、和子と深町のように、いつか必ず再会したいと願います。
池岡さんが「君って子は、本当に強情だな」とあきれたように笑ってから、意思に満ちた「必ず、会いにくるよ」の言い方、とてもよかったです。
それを受けたマナツの「待ってる。(姿かたちが変わっていても)あたしはゼロ秒で当てて見せる!」の底抜けに明るい返事が爽やかに響きました。

そしてラストシーン、輝彦によって消されたはずの記憶をあっさり取り戻した(!)マナツが放つ「ざまみろ輝彦!」の一言がしんみりムードを一掃。
本当に、颯爽と吹き抜ける真夏の風のような、透明感のあるラストでした。
大千秋楽の挨拶では池岡さん感極まって落涙されたとか。もう、相変わらず泣き虫さん!可愛い!

  • ≪個別のキャストさんとそれぞれの役どころ≫

尾道家】
主人公・マナツとその家族。とにかく明るいマナツと、安心してくださいギャグ要員ですよ、な両親のバランスが良いです。我が強く冒険心溢れるマナツを心配して遠くからあれこれ干渉するけど、温かく見守ってくれている父母。しっかり「家族」しています。

♪木村玲衣さん(尾道マナツ)
本作のヒロイン。天衣無縫でがむしゃらで、めまぐるしく表情が変わって、でも頭は良さそうで、元気いっぱいの女の子。表情筋どうなってるんだろ。変顔ギャグ顔どんとこい。
キャラメルボックスに入団してまだ3年目とは思えない、貫録のある演技。セリフ量が膨大で知られるキャラメル芝居ですが、例に漏れず、マナツはずっと板の上にいて、ずっとしゃべっているような状態。がんばりすぎたのか上演期間後半では声が枯れ気味でしたが「酒やけじゃありません!」と言い切って吹き飛ばす元気さ、応援したくなりました。
ふくふくしていて可愛らしいので「マナツデラックス」とかいじられる。けどめげない。

♪三浦剛さん(尾道洋一)
「お父さんは心配性」を地で行くパパ。お舅さん役の左東さんとのやり取りが軽妙でした。
顔文字(これ→m(_ _)m)の真似して謝ってみたり、ことわざ博士になってみたり、物語の中で安心できる時間を作ってました。
「TRUTH」の時も思ったけど、「劇団員」さんのイメージ通りの素晴らしい声の張り。ガンガン迫ってくる感じ。
そして大きい。終演挨拶にて「この夫婦から生まれた木村玲衣が身長153cmというのはどういうことでしょう」とツッコミが。

♪前田綾さん(尾道直美)
お母さん役は異例のキャスティングだそうで。でもしっかりお母さんしてました。
出番としては、三浦さんと一緒にテレビ電話でマナツと話すシーンのみだけど、その中でコミカルな動きをたくさん入れていた。
劇団の女優さんらしく姿勢もいいし発声がきれい。そして三浦さんと並んでも遜色ないほど大きい!笑 


【芳山家】
物語のもう一人の主人公と言える、マナツの伯母=「和子」とその家族。

坂口理恵さん(芳山和子)
「涙を数える」の時から「なんて品と風情のある女優さんだろう」と思っていました。現代劇ではさらに、サバサバと強く、それでいて感受性豊かで優しい女性。懐の深さ、芯の強さが伝わってきます。32年経ってやっと掴んだと思ったら、またすぐおぼろげになってしまう「和子」の恋が本当に切ない。「32年もかかっちゃった…私、どうして今まで気づかなかったんだろう…」と泣きじゃくる姿は無防備な10代の女の子そのものでした。
その悲痛な声に、深町=神石が「できれば、このまま気づかないでいてほしかった。」と穏やかに応えるシーンは間違いなくこの舞台のベストです。記憶と引き換えに、和子の病気を治す薬を差し出す深町。しかしきっぱりと「私、この薬は飲まない。気持ちだけ受け取っておく。だって、これを受け取ったらもうあなたに会えなくなる。そんなの私には耐えられない。」と笑いながら言う和子。うーん、切ない。
余韻醒めやらぬ終演後挨拶では「どうもー、時をかけたことのあるおばさんでーす!」とか言っちゃうギャップ。おちゃめ。

♪左東広之さん(芳山八郎)
癖のあるおじいちゃんのすっとぼけ感大好きです。個人的には「4代目相棒が反町隆史に決まったねえ!」「仲間由紀恵を熱望していたわしとしては非常に残念だ…」のくだりがタイムリーでウケました。
元刑事のため、次々と推理を披露するが全部ずれているというギャグキャラ。一言一言が面白いです。
東京千秋楽の終演後挨拶では、三本締めで丸く収めよう!とみんなで三本締め→最後の一本の瞬間、カツラを取ったら頭頂部に「終」の文字が!お腹抱えるほど笑わされました。


【竹原家】
池岡さんこと輝彦の家族。賑々しくて破天荒だけど、ホッとする空気感。この家族が明るければ明るいほど、ラストシーンが切ないし、輝彦に感情移入して「少しでも幸せになってください」と願わずにいられない。奇しくも池岡さんの実際の家族構成と同じで、終演後挨拶で「東京の家族ができました」と言っていたのが印象的でした。

♪西川浩幸さん(竹原幸夫)
アロハシャツのお父さん役。パエリアを作る人。なんか常にニコニコして楽しそう。岡田さんとのコメディタッチな夫婦役が、ボケとボケの熾烈なぶつかり合いという感じで楽しかったです。キャラメル所属俳優の代表格とも言える方だと思うのですが、役者として板の上に立つことを心から楽しんでいるんだろうな、と言うのがコメントからも、舞台の姿からも感じられます。

♪岡田さつきさん(竹原良子)
エキセントリックな実験ママ。何かにつけて実験をやりたがり、「実験のおばさんまだかな〜♪(学研ですか)」とか歌っちゃう。感情表現が豊かなので、驚くと良く響くソプラノ声で「パねえー!」とか言っちゃう。
ほとんど舞台上に出ずっぱりなマナツに「ま、ググッと一杯」と水分補給させるやり方はうまいですね。
輝彦とかりそめの家族役だったわけですが、終演後挨拶では「確かにおかしいと思ったんです。この両親からあんなクリクリの目の爽やかイケメンが生まれるはずはないなって」とおっしゃってました。クリクリの目(笑

♪金城あさみさん(竹原三奈)
炸裂する元気玉!以上!という感じ。頭のてっぺんで結ったお団子から出ているかのような発声。池岡さんの妹役という設定でしたが、年齢のことはさておき、エネルギーと勢いと頼りがいありそうな感じはどう見てもお姉ちゃんでした。マナツと展開する回想シーン、観劇終了後に思い返すとえらい泣き所です。


【大学関係者】
和子が勤める大学のシーンは、研究者である大内さん、鍛冶本さん、それから放浪の研究者・近江谷さんを中心に展開します。息もつかせぬドタバタコメディは爆笑もの。タイムリープの関係で計3回ほど繰り返されるのが大学のシーンなのですが、ただの繰り返しにはならず、絶妙なジャブをいくつもいれてきます。ひっくり返ったお酒を浴びてしまう(実際になんか液体浴びてる)人が毎回違ったり。もちろん、その中には重要な伏線もあったりします。

♪大内厚雄さん(世羅研二)
今回生粋のギャグ要員!昨夏に見た「TRUTH」の印象しかなかったからびっくりした。役者さんって本当すごいな。
ヒルで見るからに悪役っぽいけど、ツンデレなだけで実はいい人な世羅さん。
顔もよければスタイルもいいです。声の重厚感すごいです。3回繰り返す「マぁテぇ茶で」の顔芸がツボ。
場面転換明けの池岡さんいじりが毎回ひどい。寝ている池岡さんの腕をつかんで踊らせ「脈を図っているんだ」とか。もっとやってください。池岡さん素で笑ってるし。

♪鍛治本大樹さん(江田島明)
すでにキャラメル内でも公認の池岡さんファン・鍛冶本さん。上演期間中、ツイッター上で展開された「池コレ(池岡さんの画像集)」はファン垂涎の企画でした。
さて、実は鍛冶本さんが現代人の役をしているのを初めて観たわけですが。チャラついて軽薄だけど実はエリートな研究者・江田島君。大内さんとの絡みがテンポよく軽妙で飽きさせません。計算された安定の笑いの取り方はお見事です。

♪毛塚陽介さん(廿日市弘/深町清)
関根さんとダブルキャストで、「病院の医者」役と「深町医院の血縁者」役。この人の医者役で一番キレのいい台詞が「お熱な人がいるからじゃないですかァ?」なのですが、終演後挨拶で「この中にお熱がある方はいませんか?恋の病とは限りませんから、専門の人に見てもらった方がいいですね。お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?あ、私だ!」とセルフボケ突っ込みをかましてくれました。切れ長の瞳のシュッとした立ち姿が印象的。

♪関根翔太さん(深町清/廿日市弘)
ダブルキャストのもう御一方。深町医院の縁者・深町清役は出番がたぶん3分くらい?なのですが、短い中でも印象的なのが「僕は一夫君の大叔父の妹の孫です」。個性的なセリフだなあと思っていたら終演後挨拶で説明が入りました。「わかりづらいので解説します。『タラちゃんから見たイクラちゃん』です。」なるほどお!

近江谷太朗さん(神石雄三)
物語のカギを握る最重要人物。最初からそれっぽい雰囲気を漂わせながら登場しますが、なかなか正体をつかませない。
タイムリープ」関連の発言が多く「デロリアンだって30年しか移動できないのに」「タイムリープ?そりゃいい、新国立劇場がどうなってるか見に行ってきてくれ」等、タイムリープならぬタイムリーなネタで笑わせてくれました。
大人の色気ムンムン。悪い男のニオイがぷんぷん。表向きは、クレバーでおちゃめな放浪の研究者。
しかしてその実体は、未来から来た「深町一夫」=「ケン・ソゴル」。原作からのキャラクターですね。
脚本家さんいわく、アニメ版「時をかける少女」の唯一の不足は、「ケン・ソゴル」の存在についてほとんど触れていなかったことだとか。
こちらのストーリーでは、和子と別れた後のケンが、姿を変えてずっと和子を見守っていたことが明らかになります。見事な回収。
しかも本来いるべき未来の世界でも、結婚はしてないとか。きゃー。純愛。
和子役の坂口さんとの二人芝居は、静謐な中にも愛しさと切なさと心強さ()が溢れていて、時空を超えた恋にキュンキュンしました。
ちなみに役者さんの名前は「おうみや・たろう」さん。キャラメル出身の俳優さんだとか。終演挨拶にて「最近やっと、おうみ・やたろうに間違われなくなってきました」とおっしゃってました。「これからも近江谷太郎をよろしくお願いします。ついでに池岡亮介もよろしくお願いします」とか言ってくださる優しいおじさま。


  • ≪まとめ≫

池岡亮介、キャラメルで過ごす夏。」と自ら銘打っているように、昨夏に引き続きキャラメルボックスさんとお芝居できたこと、池岡さん自身が一番喜んでいるようです。
素敵な共演者に囲まれて、可愛がっていただけているのも理由の一つでしょうが、キャラメルで本物のお芝居を貪欲に吸収して、確実に自分のものしている感じがあります。
普段はお酒とエガちゃんの話ばかりしているふわふわタヌキですが、ひとたび芝居に取り組んだ時の研ぎ澄まされた空気がとても好きです。しかも年々、切れ味を増している気がします。
次にキャラメルさんと共演した時にはどんな役を演じるのか、今から楽しみです。ぜひ今後ともよろしくお願いします、加藤総指揮!笑